企業担当者の知らないマーケティングオートメーションに潜む“罠”とは何か

 企業が接する顧客ひとりひとりの嗜好性や行動に合わせて適格なマーケティングを行う「マーケティングオートメーション」は、企業と顧客がエンゲージメントを構築する手段として注目が高まっている。しかし、企業はマーケティングオートメーションの本当の姿を理解し、正しくシステムの構築や運用ができているのだろうか。

 8月23日に開催された「CNET Japan Marketers' Conference 2016」のプレゼンテーション「マーケティングオートメーションで実現する『本当』のOne to Oneマーケティングとは?」では、フロムスクラッチの執行役員である三浦將太氏が、マーケティングオートメーションの正しい定義とその運用に潜む“2つの罠”について語った。

フロムスクラッチ執行役員の三浦將太氏
フロムスクラッチ執行役員の三浦將太氏

顧客の都合に合わせた「One to Oneマーケティング」

 三浦氏は、マーケティングオートメーションについて、「One to Oneマーケティングを実現するソリューション」と定義する。

 従来、企業が一方的にセグメンテーションとターゲティングをして、顧客にアプローチしてきた“企業都合のOne to Oneマーケティング”から脱却し、顧客の属性情報、行動データなどをもとに、ユーザーとの双方向性を担保した“顧客都合のOne to Oneマーケティング”こそが、マーケティングオートメーションの本質であるとした。「マーケティングオートメーションによって、これからのOne to Oneマーケティングは、ユーザーの都合に合わせてアプローチを最適化することができる」(三浦氏)。

マーケティングオートメーションの3つの段階
マーケティングオートメーションの3つの段階

  これを運用面からみると、リードジェネレーション(顧客データの収集)、リードナーチャリング/スコアリング/クオリフィケーション(顧客との関係醸成 とターゲットの育成)、リードマネジメント(購買行動の醸成とロイヤルカスタマー化)と、大きく3つの段階に分けることができる。顧客属性と購買、サイト閲覧 などの行動履歴をもとに顧客を体系的に分類して、顧客の状況に応じてどのようなシナリオでアプローチすれば、顧客との関係性を良好に構築できるかを考えていくことが重要だと説く。

ECサイト
ECサイトを例にしたマーケティングオートメーションの運用

マーケティングオートメーションは簡単にはできない

 続いて三浦氏は、マーケティングオートメーションに潜む“2つの罠”について解説。そのひとつめに「データの罠」を挙げた。近年、マーケティングオートメーションが“バズワード化”されていることもあり、さまざまなツールが登場してきており、その中には、「月額3万円で導入可能」や、「タグを埋めるだけで準備完了」「1週間で導入可能」といった、導入の容易さやコストパフォーマンスの良さの側面のみを訴求しているものも少なくない。

 しかし三浦氏は、これらの製品について、「マーケティングオートメーションというよりは、“メールマーケティングの強化版”と表現の方が正しいツールもたくさんある。低価格や導入の容易さの裏には、限定された活用しかできないといった事実が隠されている」と指摘し、注意を促した。その上で、マーケティングオートメーションの運用を成功させる必須要件として、 「データの統合をしない限り、本当のOne to Oneマーケティングは実現できない」を提起した。

データ統合
精度の高いターゲットセグメンテーションのためにはデータ統合が必要

 マーケティングオートメーションにおいて最も重要な作業は、「誰にアプローチするか」というセグメンテーションとターゲティングをユーザーの情報や行動データから読み解くことだ。しかし、データが統合されていない状態である特定のデータだけを拠り所にこれを行うと、顧客をある一側面からしか見ていないことになり、アプローチする必要性を裏付けるだけの十分な精度を担保できない。

 たとえば、「あるページを閲覧した」というデータだけを拠り所にアプローチすれば、それは単なるリターゲティング広告にしかならない。しかし、 「あるページを閲覧し」、「2週間以内に購入経験があり」、「2児の子どもを持つ母親」など、ユーザーに紐づく多種多様なデータを統合的に分析できれば、高精度でのターゲティングが可能になり、そのユーザーにアプローチして相互に メリットがあるかどうかを検証できるのだ。 オーディエンス拡張の域を脱していないターゲティングから、より精緻なターゲティングがデータ統合によって実現する。

DWH
マーケティングオートメーションの導入とDWHの構築はセットで考える

 ただし、この「データ統合」という作業は決して簡単なものではないと三浦氏は語る。理想的なマーケティングオートメーションの運用を実現するためには、 それを叶えるマーケティングツールを用意するだけでは足りず、企業が蓄積している広告データ、顧客のアクセスログデータや行動データ、ビジネスデータなどを取り込み、統合するた めの「データウェアハウス(DWH)」のようなソリューションを通常は用意しなければならない。これはマーケティングツールのベンダーではなくSIerやシステムコンサルタントが担う 領域であり、開発コストも決して安価ではない。

 「マーケティングオートメーションを導入するということは、DWHの構築コストをも加味しなければならない。このデータ統合を前提にマーケティングオートメーションを導入しなければ、成功はありえない」(三浦氏)。

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