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「ネイティブ広告」で揺れるウェブメディア--協議会と一部媒体に大きな溝

2015/04/28 08:10
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 ネイティブ広告(ネイティブアド)を巡ってウェブメディア業界が揺れている。一般社団法人インターネット広告推進協議会(JIAA)が3月にネイティブアドの定義と推奨規定を発表して以降、さまざまな立場の人々が名前を明かしてブログやSNSなどに思いをつづっている。JIAAの意向に肯定的な声があれば否定的な声もある。

 「デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式や提供するサービスの機能と同様でそれらと一体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告」がJIAAによるネイティブアドの定義。推奨規定では、ネイティブアドを掲載/配信する事業者に対して、広告表記や広告主体者の明示、広告審査などに関する規定を設けた。これはあくまでも自主規制を求めるものであり、順守しなくとも罰は科されない。

 JIAAは、消費者の誤認を防ぎ、ネット広告とネットメディアの信頼性を高めるためにこの規定を設けた。JIAA常務理事の長澤秀行氏は「求めている内容は、すでにマスメディアは当然のこととしてやっている。それが一部のネットメディアはできていない」と現状を語る。ノンクレジットの広告記事(広告記事であることを示していない記事)により消費者が被害を受ける例も報告されており、法規制が今後強化される可能性があるため、JIAAには自主規制によりメディアや広告に法規制が強く入るのを防ぎたい狙いもある。

 こうした中、JIAAとは異なる考えを持って、ネイティブ広告、ウェブメディアと向き合っている人もいる。その1人が、カルチャーニュースサイト「CINRA.NET」の運営などを手掛けるCINRA代表取締役の杉浦太一氏だ。話題となった自身のブログ記事「ネイティブアドよ、死語になれ。」では、メディア運営者、クリエイティブなどの観点からJIAAの規定に異論を唱えた。

どういう経緯でできたのかはわかりませんし、言い過ぎかもしれないけど、このルールは、新しい消費、雇用、文化、文明の障害だと思うんです。

 杉浦氏は文中で、同社が運営しているカルチャーニュースサイト「CINRA.NET」のインタビューの90%以上が広告表記のないタイアップであることを告白した。これに対して、おそらく業界の常識から外れた価値観、倫理観を持っていると判断されたために批判が殺到したが、中には杉浦氏のネイティブアドへの考え方に賛同する人もみられた。

  • ニコニコ超会議2015で開かれたパネルディスカッションの様子。右から2人目が杉浦氏。左端がパネルディスカッションを企画したカイユウの代表取締役である米村智水氏

 こうした中で4月25日、ニコニコ超会議2015で開かれた「最近のウェブメディアについて語り尽くす」とうたったパネルディスカッションに杉浦氏が登壇した。

 ネイティブアドについて聞かれた杉浦氏は、「メディアごとに役割がある。たとえば『VICE News』のような、ジャーナリズムで社会を正そうとしているメディアがPR(広告)記事を掲載するなら、広告表記を付けたほうがよいと思う。CINRA.NETのメディアとしての大義は(発信した情報を、読者に)面白いと思ってもらうこと。広告表記があったら、読者はうがった目で記事を見てしまう。ウェブメディアをひとくくりにしてルールを決めるのは間違っている」と持論を展開。パネルディスカッションを企画した、ニュースサイト「KAI-YOU.net」を運営するカイユウの代表取締役である米村智水氏も「あのブログ(上述の記事)は本当によかった」と同調した。

 CINRA.NETと同じく広告記事に対して広告表記をしていない、あるウェブメディアの運営担当者は「JIAAによる規定は理解できるが、クライアントの意向を考えると、今までのやり方を急には変えられない。もちろん危機感はある」と語る。

 また、別のあるウェブメディア運営企業の代表は、ルールの策定に反対の立場をとり、「この2年間くらいで先行者がガッツリ稼いだ後にこのような規制が入るのは、他のメディアとしてはあまりフェアには感じない」と不満を漏らし、「広告表記をつければ記事のクリック率は激減するため、PV保証や成果につながる確率が著しく低下する。リスティング、リターゲティング、アドテクの進化の中でバナーが売れにくくなるメディア業界において、頼みの綱になりかけていたネイティブアドの表記を義務化することは、収益を間違いなく下げることになる」とした。

 JIAAは現在、「ステマ事業社や意図的にノンクレジットで広告コンテンツに誘導するメディアは、JIAA会員ではなくとも業界全体のモラルに反するということで、なるべく是正されていくような環境を作る」(長澤氏)方針のもと、ネイティブアドと関わりのある協会との連携を進めている。

 4月21日にJIAAは、日本新聞協会の広告掲載基準事例研究会で、インターネット広告の審査に関する課題への取り組みとネイティブ広告に関するガイドラインの策定について説明した。また、日本アドバタイザーズ協会の会員である広告主企業向けに、ネイティブ広告の定義やガイドライン、事例などを説明する場を2015年中に設ける予定という。

 要するに、JIAAは全てのウェブメディアが推奨規定に沿った対応をせざるを得なくなるよう環境を整備している。今後、JIAAが定めたネイティブアドの定義と推奨規定に広告主が理解を示し、たとえば「広告記事をノンクレジットで掲載するようメディア側に頼むこと」などをルール違反だと認識すれば、今の状況は大きく変わりうる。一部のウェブメディアはこの過渡期をどのように過ごすのか。JIAAとの間には、深い溝がある。

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