なぜネットの「プッシュ広告」は嫌われるのか--テレビCMとの違いは

 PCやスマートフォンでインターネットを利用していて、強制表示型の広告に出くわすことが増えてきた。

 動画投稿サイトでお目当ての動画の再生前に差し込まれるビデオ広告にはようやく慣れてきたが、ポータルサイトでマウスポインタを動かした際や、スマホやタブレットでスクロールするために指を画面に置いた際などに「たまたま」選択したことになってしまう広告にはうんざりする。こちらの操作ミスと言えないこともないが、わざわざ操作ミスの起こりやすい位置に広告の入り口を配置するという「計算」に対し、どこにもぶつけようのないイラだちを覚えるのだ。

 「放送・通信の融合」が叫ばれだした10年ほど前、広告メディアとして両者の特性を分ける際に「プッシュ(PUSH)型」「プル(PULL)型」という表現があった。受け手の意思に関係なく広告を届ける“放送”の手法はプッシュ型、受け手が能動的に情報を取りに行く“通信”はプル型、というわけだ。ところが、冒頭であげた今日のネット広告は明らかなプッシュ型である。「偶発的にせよ、自ら選択したのであればプル型」などというのは苦しい言い訳で、こちらの意思に関わらず広告を届けてくる手法はプッシュ型以外の何物でもない。

 そこで、こうした近年におけるネット広告のプッシュ化について、広告会社という立場ながら、「一般消費者・ユーザのメディアへの接し方」について多くの調査やグループインタビューを重ねて研究してきた、電通総研メディアイノベーション研究部長の奥律哉氏にこちらの思いをぶつけてみた。

 「まず、テレビ視聴者は番組が見たくてテレビを見るというのが前提。その前後にCMが入るが、接し方は極めて受動的だ。そのままCMを見続ける方もいれば、席を外したりチャンネルを変えたりする方もいる。そうした受動的、偶発的な触れ合いであっても十分なリーチがとれる、それがテレビ広告というもの」(奥氏)。

 テレビにおいてプッシュ型広告が受け入れられる基盤となっているのは「絶妙な距離感」だと奥氏は話す。編成という決められた括りの中で、60年というサービスの歴史で培われた「なんとなく見る」というリラックスした視聴スタイル。そして、映像という表現スタイルだからこそ多く生まれてくる「おもしろい広告」という概念。テレビCMに対するネガティブな意見が全くないわけではないが、いまなお視聴者に受け入れられる土壌は十分に培われてきた。

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