インタラクティブもストーリーで動かそう--キリン「のどごし 夢のドリーム」

 企業が生活者とコミュニケーションしていくには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。

 キリンのどごし〈生〉のキャンペーン「のどごし 夢のドリーム」には、人の心を動かすストーリーがありました。

 のどごし〈生〉は、いわゆる新ジャンルと呼ばれるビール風味の発泡アルコール飲料のトップブランド。

 「のどごし 夢のドリーム」は、2013年1月からはじまったキャンペーンです。「多くの人の喉に幸せを届けてきた『のどごし〈生〉』が、今度は『あなたの夢をかなえる』ことにチャンジする」というコンセプトで実施。

 一般の人たちから募集した夢を実際にかなえ、その模様をテレビCMやネット動画で紹介するという内容になっています。

 今年1月に放映された第1弾では、「プロレスラーになってリングに立ちたい」という会社員の夢を長州力さんと共にかなえ、3月に放映した第2弾では「もう一度バンドを組んでステージで演奏したい!」という女性の夢をTHE ALFEEのメンバーらと共に実現し、どちらも話題になりました。

 6月からオンエアがはじまった第4弾も、早くもネット上で大きな反響を呼んでいます。

 なぜこのキャンペーンは、毎回多くの人から支持されるのでしょう? それは人間の感情を揺さぶるストーリーがあるからです。

 まず何よりも主人公が自分たちと同じ一般の応募者というのがポイントです。そして、共感を得やすくなるからです。主人公はただ受け身なだけではありません。夢にむかって必死で努力します。

 それをあこがれの有名人が全力でサポートするという物語は、ついつい主人公を応援したくなる構成になっています。

 さらに制作者側のディテールにこだわる姿勢が、視聴者の感情を強く揺さぶるのです。

 たとえば、今オンエアされている第4弾は、カンフー好きの会社員石田さんが「カンフーアクションスターになりたい」という夢を語る所からスタートします。石田さんの夢は、ただアクションスターになるだけではありません。

 「憧れのジャッキー・チェンさんと共演したい」「ヒロインはしょこたん」「ライバルは後輩のスタント俳優を」というキャスティングから始まって、「3人で食事したい」「椅子とか使って戦いたい」「ナルトを投げたい」、「ワイヤーアクションでヒョイッとしたい」、「敵を屋根から落としたい」、「自分は負けちゃいたい」「最後は師匠に決めてほしい」など細かなシーンにまで、計40以上も夢がありました。

 制作者サイドは、そんな石田さんの夢(妄想?)を実現するために、中国上海でスタジオを借り、ジャッキー・チェンさんや中川翔子さんをキャスティングしました。

 ジャッキー映画のスタッフも参加し、ディテールにいたるまで石田さんの夢をすべて叶えたのです。

 こうして出来上がったショートムービーは、まるで本物のカンフー映画さながらのクオリティになりました。この本気の姿勢が視聴者の心を揺さぶるのです。

 またメイキング映像も、よくあるCMのメイキングとは一線を画すものになっています。企画が決まってから撮影にのぞむまで特訓を続ける主人公石田さんの様子や、後輩のスタント俳優との友情を中心にドキュメンタリータッチで描かれそれだけを観ても感動するストーリーになっています。

 細かなこだわりは、CMやメイキングだけではありません。「のどごし 夢のドリーム」の特設サイトには楽しくインタラクティブな仕掛けがいろいろとあります。

 たとえば、自分の夢を応募したい場合、スペシャルコンテンツ「スナック夢狩人」に入店する必要があります。

 そこには、椿鬼奴さん演じるスナックのママ「棘有夢香(とげありゆめか)」がいて、「あなたの夢を聞かせてよ。」と語りかけてきます。

 それに返答するという形で、自分の夢を応募するというストーリーを感じさせる遊び心あふれるものになっているのです。

 このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?

◇ライタープロフィール
川上徹也(かわかみ てつや)
広告代理店勤務を経て、コピーライターとして独立。最近は広告制作に留まらず、ストーリーブランディングの第一人者として、様々な企業のコミュニケーション戦略をサポートしている。新刊『なぜ、真冬のかき氷屋に行列ができるのか?』(日本実業出版社)。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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