「技術」と「おもしろ」のバランスは7対3--月間140万PVの企業サイトを運営するLIG

岩本有平 (編集部)2013年04月10日 08時00分

 社長が砂浜に埋められた写真が掲載された人材採用ページ「伝説のウェブデザイナー」がソーシャルメディアで話題となり、Twitter上で1万件以上の言及、Facebookで6800件以上のいいね!を獲得したウェブ制作会社LIGのコーポレートサイト。このページ以外にも、業界用語の並ぶ代表あいさつ、ところどころ信じてはいけなさそうな内容が入った沿革、自社ブログの「おもしろ」カテゴリのエントリーなど、社長や社員が体を張って作ったおもしろコンテンツが並ぶ。

 だがよく見ると、同社のブログで掲載されているのは、「ネタ」ばかりではない。ウェブ制作のテクニックやマーケティングなど多岐に渡っている。さらに先日公開されたエントリーでは、ブログを中心としたコーポレートサイトの運用実績を公開。2012年からの1年で月間ページビュー(PV)は140万、ユニークユーザー(UU)は60万、Facebookのいいね!は1万件以上に成長したと紹介している。

  • Twitterで1万件以上言及された「伝説のウェブデザイナー」

 コーポレートサイトのコンテンツで注目を集めるLIGだが、どうも「おもしろいこと」をやっているだけの会社ではないようだ。オウンドメディア(自社メディア)についてどう考え、運用してきたのか。代表取締役社長の岩上貴洋氏に聞いた。

きっかけは「技術のアウトプット」

 LIGの設立は2007年。2011年10月には、オフィスをシェアしていた別の制作会社であるアストロデオと合併。その後、2012年1月にサイトをリニューアルし、現在のサイトとなった。


LIG代表取締役社長の岩上貴洋氏

 「もともと、業務として社員にブログを書いてもらっていました。私はまじめ系、副社長(取締役副社長の吉原ゴウ氏)はおもしろ系といった具合。そもそもは学んだ技術のアウトプットをするということを目的に、週1、2回更新するという感じでした。その後、合併のタイミングでメンバーも増えたため、メディアとしてやれるかな、と考えて今に至っています」(岩上氏)

 技術をブログで解説することで社員自身のスキルの向上にもなり、制作会社としてのブランディングや採用にもつながると考えたという。しかし、ただ技術の話だけしても面白くない。そこで同社の所在地である台東区の情報や、「ネタ」としてソーシャルメディアに拡散されそうなおもしろコンテンツなど、これまでメンバーが執筆していたブログを整理し、LIGのブログとして公開するようになった。「技術のアウトプットで月間1~2万PVはありました。そこに個性を上乗せして、技術とおもしろ系を7対3の割合で出していこう、と」(岩上氏)

 そもそも、なぜLIGがコーポレートサイトでコンテンツを作っていくことになったのだろうか。これについては当初から明確な答えがあったのだという。「副社長と2人で、『コンペにならないような仕事をしたい』とずっと話してきました。僕らは制作会社ですから、営業をかけるとどうしてもコンペになってしまいます。クライアントに『LIGと仕事をしたい』と思ってもらえるように発信していかないと。ブランディングして、問い合わせてもらえるように。そうすれば単価だって高めていけると考えました。正直、利益を出すことだけ考えれば制作に注力するのが一番いいんです。人の量に比例して利益は上がりますから。でもそれだけやっていれば、いつかは息切れすると思いました」(岩上氏)

 そこからは、「ファン作り」をキーワードに掲げ、コーポレートサイトやブログを更新していった。「たまたま社内でも、実名や顔出しどころか、『脱ぐことにも抵抗がない』というメンバーがいました。カメラ好きなメンバーもいたことから、コンテンツ制作のチームを作ることができました。きれいな写真とシュールなコンテンツを作る——笑いの部分でエッジを効かせると、結果的に技術の内容もPVが伸びてくるということになりました。ですが先ほど言った7対3の絶妙なバランスだけは忘れないように心がけています」(岩上氏)

採用や事業での好影響を実感

 ファン作りに向けて発信したコンテンツは、まず採用に影響を及ぼした。それまで採用には数十万円の出稿費用をかけて人材系のサービスを使っていた。しかし前述の「伝説のプログラマー」を公開したところ、口コミだけで優秀なデザイナーを採用することができた。この頃には月間90万PV程度にまで成長していた。

 3月には社長と社員が雪の中を走り回る「ライター募集!一緒にLIGブログを盛り上げませんか?」を公開したが、これには、60人以上の応募があったという。「採用担当者が対応に追われて大変ですが、応募者はみんなモチベーションが高い。やはり基本はLIGのファンになってくれているからでしょう」(岩上氏)。今のところ採用の内定を出してから辞退されたことがないのも同社の自慢なのだという。

 もちろん本業での成果も生まれている。自社で営業をかけることが徐々に減り、問い合わせを受けてから始まる案件が増えた。メディア制作の案件を受注した際も、ただサイトを制作するだけでなく、コンテンツを含めて運営の部分までもを担うよう打診されるケースが出てきた。「ただの制作会社でなく、(事業の)パートナーとしてやっていけるようになってきた」(岩上氏)

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