企業と生活者が生み出す「共創コミュニケーション」の価値

 博報堂アイ・スタジオは、企業と生活者の共創コミュニケーションによって生まれたコンテンツを電子書籍化し、商品やサービスのプロモーションに活用できるサービスを提供開始した。

 生活者の声や写真などの投稿を、SNSを通じて集めてマーケティングに活用する共創コミュニケーションは、企業と生活者が直接深くコミュニケーションできるソーシャルマーケティングを拡大し、その延長線上にあるものとして、企業がプロダクトマーケティングやプロモーションの施策を考える上で重要なテーマだ。

 しかし一方で、共創コミュニケーションによって生まれた成果物(=集まった生活者の声や投稿)をいかに企業のマーケティング資産として活用していくかについては、未知数な部分が多い。共創コミュニケーションによって企業は何をゴールにすべきなのか、企業は共創コミュニケーションにどのような姿勢で臨まなければならないのかについて、博報堂アイ・スタジオ ストラテジックプラナーの十字賢氏と、このサービスに技術提供した角川アスキー総合研究所 取締役の吉川栄治氏に聞いた。


角川アスキー総合研究所 取締役の吉川栄治氏(左)と、博報堂アイ・スタジオ ストラテジックプラナーの十字賢氏

共創コミュニケーションは、コンテンツマーケティングのソーシャル化

――今回開始した「SNSで集めた生活者の声を電子書籍化するサービス」の狙いは。

十字氏:博報堂アイ・スタジオはこれまで、生活者の反響を視覚化してウェブ上でコンテンツとして活用する「ソーシャルカタログ」や、生活者が投稿した写真や動画をデジタルサイネージ上でコンテンツ化する「HiSESSION」など、企業と生活者の共創マーケティングを創出する取り組みを展開してきました。

 しかし、それらの取り組みは“生活者の声や投稿を集める”という生活者の参加を促す目的にとどまっていたのです。今回始めた電子書籍化サービスは、共創コミュニケーションによって生まれたコンテンツを企業がどう活用していくかという視点に立って企画されました。SNSなどネット上で集めたものをネット上だけのものにしないという狙いがあります。

 私たちは、共創コミュニケーションがただ生活者に参加してもらい声やコンテンツを集合させるだけの“賑やかし”で終わってはいけないと考えています。共創コミュニケーションによって集まった生活者の声やコンテンツをどのように生かすかというのは大きな課題なのです。

 特に、ソーシャルメディアで生まれたシナジーを企業の広い意味でのオウンドメディア資産(ウェブだけでなく店舗などの屋外のタッチポイントを含む)とどのように連携させるのかという点は、企業が十分に出来ていない部分でもありました。共創コミュニケーションのさらに先のアウトプット手段を生み出すことで、今後生活者の声と企業の資産を組み合わせたシームレスなマーケティングの創出が可能になるのではないかと思います。

――共創コミュニケーションのアウトプットに電子書籍を選んだのはなぜか。

十字氏:共創コミュニケーションによって集まったコンテンツを活用していく上で重要なキーワードになるのは、“再価値化する”ということではないかと思います。しかし、本来であれば生活者との共創によって集まったコンテンツを紙の本やカタログにしたり、店頭のプロモーション素材にしたりするのはさまざまなハードルがあります。そこで、まず“再価値化する”という意義や効果を企業が簡単に実感できる手段として、電子書籍を選びました。


サービスの活用イメージ

――具体的には、どのようなアウトプットとその活用があるのか。

十字氏:例えば食品メーカーなどでは、SNSで投稿された商品の活用術やレシピを電子書籍化し、生活者視点のレシピ本にすることで商品の利用促進に活用できます。また、デジタル家電のメーカーであれば、商品の活用テクニックを集約した電子書籍や写真コンテストなどで集まった作品を電子書籍化したりするなどし、商品の認知拡大やキャンペーンの効果を最大化させることが可能です。

 今回リリースしたサービスでは、角川アスキー総合研究所の技術を活用してTwitter上で電子書籍を読める環境を共有できるので、コンテンツの拡散もやりやすいのではないかと考えています。

吉川氏:今回提供した「ePUB Viewer for Twitter」は、Twitterの協力のもと開発した、Twitterのタイムライン上で電子書籍を読める技術です。当初は出版社が発行した電子書籍を拡散させるために開発したのですが、オリジナルコンテンツの流通は想定していなかったですし、しかもオリジナルコンテンツをユーザーと一緒に共創するという発想もなかったので、今回の取り組みによってどのようなコンテンツが生み出されるのか、強い興味がありますね。

――企業がこの仕組みを効果的に活用する上での重要なポイントは。

十字氏:共創コミュニケーションによって生まれた成果物の再価値化にとって重要なのは、企業がキュレーターになることではないかと思います。多くの生活者の参加によって集まったものは、生活者にとってメリットのあるアウトプットを生み出さなければなりません。

 そこで、企業が自分たちの都合のいいようにコンテンツを整えて、アウトプットされるものが広告宣伝に終始してしまうと、共創コミュニケーションの価値を生かせないのです。企業が生活者にとって価値のある情報に編集することで消費者がそのアウトプットにメリットを感じ、企業と生活者とのエンゲージメントが深まるのではないかと思います。

 共創コミュニケーションはソーシャルマーケティングの延長線上で語られることが多いですが、実はこうしたアウトプットを目指すことはコンテンツマーケティングのソーシャル化という見方が近いのかもしれません。コンテンツマーケティングは企業が生活者の共感や話題化を目指して一方通行で行うことが多いですが、共創コミュニケーションは、生み出されるコンテンツを企業と生活者が一緒に作り、生まれた成果を共有するという施策。そこでは、みんなで何を生み出すのかという「ゴール」を設定し、生活者の賛同を得ることが重要だと考えています。

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