水口哲也氏が語る、既成概念にとらわれないものづくりの秘けつ - (page 2)

DIGITAL MEDIA 360°2008年01月21日 10時00分

――新しい技術の登場によって、自分のやりたかったことが実現できるようになる、ということですね。でもその時点では、当然うまく行く確証はないですよね。お聞きしたいのですが、そういうときに、やり通す支えとなるモノって、何なのでしょうか。

 何でしょうね……。まず、イメージがなければ迷ってしまうし、自分の直感に自信を持たないと人はついてこないし。そのためには、誰よりも多く、そのことをイメージし続けて、直感を研ぎ澄ます必要がある。自分が「面白い」と思えないことには、自信を持てないからね。だから自分が理解できないことがあったら、人に訊きます。あと、簡単にあきらめないことも大事。「あきらめが悪い」とは、よく言われます。

――今、ニンテンドーDSや携帯電話など、携帯用のゲームがどんどん普及していますが、携帯ゲームのマーケットについては、どのように感じられていますか。

 プラットフォームをシアターに例えるなら、昔は2カ所くらいの大きいシアターしかなかったのが、最近は小さいシアターから特大シアター、また移動式シアターまで登場してきた…… みたいな。しかもそのお客さんの顔も、シアターによって全然、違う。そういう意味では、活躍できるステージが増えたという印象が強いです。だからそのメディアが持っている特徴とか、性質を生かした物を考えるチャンスにも恵まれたし。

 例えば、プレイステーション・ポータブル(PSP)を見て、インタラクティブウォークマン的な発想で携帯ゲームを考えたらどんなモノができるんだろう? というところから生まれたのが「ルミネス」ですし。そういう、プラットフォームのコンセプトが僕らの発想を刺激する、ということも多々ありますね。

――水口さんは、「こんなゲームが作りたい」という発想が先なのか、それとも新しいプラットフォームが出て、これならこんなゲームができるよね、という流れなんでしょうか。

 それは、どちらもあります。こういうことができたらいいな、というアイデアは、仮に今実現できないとしても、引き出しに入れておけば、いつか必ず作るチャンスがやってきます。常に発想を未来に飛ばしておかないと、結局新しいジャンルやスタイルは生み出せない。時にはその発想が新しいプラットフォームを作っていく場合もありますし。だから引き出しには常にアイデアを書き溜めています。

――水口さんが目指している物は、自分が「こういうのあったら面白いね」という物を作り上げて、それを人と共有したいのか、それよりも、まず人を喜ばせたいというサービス精神から来るものなのか、どちらなんでしょう。

 もちろん、人を喜ばせたいという気持ちが基本にあると思うんですけど。ただ最近は、自分も含めてなんだけど、どうやったら国境を越えて、人間の「意識を開く」ことができるのか。「壁をとっ払う」にはどういうことをすればいいのか、そういうことを考えますね。

――確かに、社会や、業界や、過去の歴史や、あらゆるところに習慣や、先入観や、人間が作り上げてきた様々な壁がありますよね。そういう壁を打ち破る方法や、パワーって何なんでしょう。

 とにかくいろいろな人間に尋ねることかなあ(笑)。例えば違う国の人に、「今こういうこと考えてるんだけど、面白くない?」と聞く。それに反応しなければ、「ああ、これが面白いと思うのは俺だけかな」とか、「日本では受けても、海外では受け入れられないかな」とか、そういうことが確認できる。あるいは、もし反応が鈍くても、少しやり方を変えればうまく行くかもしれない、とか。僕はそのために英語を話すようになった。

 例えばあの「スキージャンプ・ペア」(編集部注:2人1組で奇想天外な姿勢のスキージャンプを行うという、架空のスポーツを描いたDVD作品)にしても、ほかの国の人たちが見たら、最初は色々なとらえ方をされると思うんですね。だって男同士2人で堂々と抱き合っているんだから(笑)。じゃあ、そのスキージャンプ・ペアのユーモアを、いい形で“翻訳”する方法はないかと。そういうのをSecond Life内で体験させたら、もしかすると国や人種、文化、宗教とかを超えた部分で、人間はつながれるかもしれないんだよね。ゲラゲラ笑いながら。もしそうだとしたら、また何か発見があると思う。

――それでは水口さんが、今後これは可能性があるな、ムーブメントが来るな、と思う技術やサービスってありますか。

 うーん、全部に可能性があるんですよね。Second Lifeもインターネットのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)も、携帯電話もiPodも、PSPもニンテンドーDSも。全部が同じ方向、メディアの中心に向かってるような気はしますね。そういう意味では面白みはないけど、全部に可能性がある。

 物じゃないんですけど、僕が革命的ですごいなと思う瞬間は、きっと人間が宇宙に出始めるときだと思うんですよね。いや、本当に。そういうことから何かが変わっていくんだと思うんです。服を変えたり髪を変えたり、そういう外側から変わっていくのはもういいや、というか。結局、それくらい強い衝撃とか思いには勝てないと思うんですよね。でも宇宙って、別に遠い未来じゃないですよ。あと10年か20年したら、普通に行けるでしょう。

この記事は「DIGITAL MEDIA 360°」から編集転載したものです。DIGITAL MEDIA 360°では、水口哲也氏の考える新しい視点、「元気ロケッツ」の誕生秘話などを紹介。DIGITAL MEDIA 360°の記事へ

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