上場したグリー社長に訊く、売上高9倍成長の秘密 - (page 2)

永井美智子(編集部)2008年12月18日 00時00分

 ユーザーに受け入れられているからということに尽きると思います。サービスが面白いし、使いやすいということなんじゃないでしょうか。

 モバイルからのユーザーが増えていますが、単にモバイルユーザーが増えているというよりも、インターネットユーザー全体がモバイルにシフトしつつあって、その人たちがGREEを使っているという印象ですね。

――その波にうまく乗ったと。

 そうですね。2年前のインタビューで「今PCを使っている人もどんどんモバイルサービスを使うようになるから、PC版だけのサービスを作っていても仕方なくて、むしろこれからメインになるモバイル版を作らないといけない」と言っていたんですが(CNET Japan参考記事:「グリーはどこへ行くのか」)、今やモバイルでSNSを使うほうが当たり前になっている。2年前に考えていた利用動向の変化がちょうどその通りになったというのが、今伸びている理由かなと思いますね。

 他社のサービスを調査したり真似したりするのではなく、自分たちとしてこういうサービスが次に求められるというのを考えて、それを形にする。それが他社のサービスに似ているかどうかというのは結果論でしかありません。

――それはどうやって把握するのですか。

田中良和氏 釣りゲームを始めたときに、友人でもあるはてな執行役員最高技術責任者(CTO)の伊藤直也氏などから「なぜ検索エンジンなどではなく、釣りゲームを開発するのか」と不思議がられたと田中氏は笑う。

 大きなトレンドを見ていますね。例えば実名か匿名かではなく、実名でも匿名でも楽しめるサービスが次に求められているのではないか、とか。PCかモバイルかではなく、両方で使えるようにしつつもモバイルが今後メインになっていくのではないか、とか。そういう大きな流れの中で、次はどういうサービスが求められるのかを考えています。

 ただ、思いつきだけでは仕方ないので、本当にそうなのかというのを調査したり実験したりして、軌道修正はしています。そういう意味で、グリーはアイデアの部分と、それを形にしていくロジカルな部分や行動力が両輪で回っているのが良いのかもしれませんね。

――35.8%という経常利益率の高さが注目されています。

 各社、会計処理の仕方が違うんですよ。例えば、ミクシィは広告販売の代理店マージンも含めて売上高に計上しているんですよね。そのため、売上高が多く、利益率が低く見えます。それに対して、グリーとディー・エヌ・エーは代理店マージンを抜いた分しか売上高に計上していないんです。同じ広告ビジネスでも、利益率が違ってきます。

――経営指標のうち、どんな数値を重視していますか。

 当社の場合は、会員数と会員1人あたりの売上ですね。どれくらいユーザーに受け入れられているか、それがどう業績につながっているかがわかりやすいですから。

――グリーはもともと、田中さんが個人で作っていたGREEというサービスをより安定して提供するために設立されたという経緯がありますが、一方で田中さんは学生時代にネットエイジ(現:ngi group)でアルバイトをしていたり、楽天では三木谷社長の下で働いていたりしましたよね。当時から、いつかは起業したいとか、上場したいという思いを持っていたのではないですか。

 まったくないですね、この会社を始めるまでは。

 「ソニーに入ってウォークマンを作りたい」というようなことは思っていましたが、社長になりたいというわけではなかった。僕の中では画廊と画家くらい違いますね。

――どちらかといえば成り行きなんですか。

 成り行きというのと、もう1つ、僕のようにいろいろサービスを作る人を助ける仕事――それは今、経営という形でやっていますが――をできる人というのはかなり少ないと感じていました。米国では自分でサービスもやって、プログラムも書けるという経営者がたくさんいますが、日本ではあまりいないと思うんです。

 そういう中で、自分はそういうふうになれる可能性がある。だから、自分がやるべきではないかという使命感でやっている部分もありますね。もちろんサービスを作るのは僕も好きですが、世の中でできる人が少なくて、僕がより価値を発揮できるのはそういう人たちを応援する仕事かなと思ってやっています。

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