グーグルのオープンソースは綱渡り--クリス・ディボナ氏インタビュー - (page 3)

文:Stephen Shankland 翻訳校正:石橋啓一郎2008年06月18日 08時00分

--Googleでは非常にカスタマイズされたLinuxカーネルを使っているのですか。それとも、あまり修正は加えられていないのですか。

 もはや、カスタマイズされたLinuxカーネルなどというものは存在しないと言っていいでしょう。Linuxカーネルは非常に柔軟です。Linuxはありとあらゆるアーキテクチャに載っています。私は、Linuxカーネルそのものが非常にカスタマイズされたものだと思います。

--しかし、社内でのカスタマイズも多くやっている?

 多くはありません。Googleは他のところでまだ使われていない面白いハードウェアを少々使っています。ですから、われわれは社内でそのハードウェアのためのコードのサンプルを作っています。これはかなりのカスタマイズだと言えます。しかし、これもいずれは社外に出て行きます。われわれは、Xorpと呼ばれるバークレーのグループとの協調活動に資金を投入し、Broadcomの高速ネットワークチップの機能をLinuxに加えました。しかし、これをわれわれだけでコントロールしたいと思っているわけではありません。このように、われわれのLinuxがカスタマイズされているかと言われれば、確かにされています。しかし、カスタマイズの度合いは高いかと言われれば、さほどではないだろうと思います。

--今でも2.4のカーネルを使っているというのは本当ですか。

 一部の場所では使っています。

--中心となる検索サービスでも使っているのですか。

 私はそれがどのように分割されているかわかりません。Googleを考える時、検索処理が静的なカーネルの上にあると思う人もいるようです。しかし、常にそういうわけではありません。それはデータセンターによって異なります。しかし、2.6が主流のはずだと思います。

--互恵的な関係についての議論があります。GPL(General Public License)のバージョン3が登場した時、Free Software FoundationはAffero GPLの条文をGPLv3からは切り離し、個別のライセンスにしました。Eben Moglen氏(Software Freedom Law Centerの共同設立者で、後にFree Software Foundationの顧問となる)は、「もしGoogleがあまりにも寄生的な行動を取り始めれば、われわれはこれを再評価するだろう」と言っています。Googleは貢献よりも利用の方が多いという否定的な見方をされていることについては、心配していますか。

 それについては大いに心配しています。私はそれは間違った見方だと考えています。いくらでも貢献を多くすることはできるのでしょうが、それでも常に満足しない人はいるでしょう。われわれはもっと貢献できたか?もちろんです。その問題は、Summer of Codeなどのプロジェクトで改善できると考えています。GoogleはAndroidや非常に大きなオープンソースプロジェクトであるGWT以外にも、2週間から3週間に1つのペースで新しいプロジェクトをリリースしています。また、毎月何百ものプロジェクトへのパッチを提供しています。私は、控えめに言っても、Googleは毎年100万行以上のコードをリリースしていると見積もっています。

 オープンソース開発者、つまりプロジェクトに関わっている人たちと話をすれば、彼らはこれを理解しているだろうと思います。これは、われわれが誰と協力したいかという問題に戻ってきます。私は常に、熱心な人のコミュニティは、いずれこれを理解してくれると感じていましたし、そうなっていると思います。一部にはわれわれがAfferoスタイルのGPLを採用しなかったので頭に来ている人もいるようです。しかしそうすることはわれわれには現実的ではないのです。Afferoスタイルの条文をGPLv3に入れるという話をしていた時、私はEbenに、「聞いてくれ。君は何でも好きなものを導入していい。それでもGoogleはずっとFSFとSFLCをできる限り支援し続けるだろう。しかし、そうなったらGoogleの中ではそのライセンスは使えない。現実的じゃないんだ」と話しました。これは非常に現実的な反応だと考えています。Affero GPLは存在していますし、これは使っている人にとっては素晴らしいものです。われわれには合わないというだけの話です。

 それがフリーソフトウェアです。フリーソフトウェアを使う義務はありません。われわれはGoogleが使いたくないものを社内で使わないようにするために、きめ細かい管理を行っています。

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