別井貴志(編集部)
2008/05/16 07:00
政府が実際に明確なポリシーができる以前、2007年の夏にアナウンスしたのは、実は2つの背景があります。その1つはおそらく外から想像しているのと違う部分だと思いますが、ポリシーの詳細を決める前に関係者を集めてオープンにディベートをするための時間をとるために、おおまかな声明を発表しています。
その中で、56.comをはじめ業界関係者でどうやって実際に規則や規程などを策定していかなければいけないのかというディスカッションが始まったのですが、もう1つ問題が台頭してきました。それがもう1つの背景なのですが、2007年末の段階でおそらく中国全土に小さなサイトも含めてビデオ関連のサイトが1000を超える数で出現し、その多くはまったく野放し状態なうえ、特にそれらのコンテンツは中国政府が非常に監視を強めているポルノや暴力的な内容だったのです。そういったサイトを、早く止めなければいけないという動きが強まりました。そこで、ポリシーの詳細を固めて発表する前に、まず2007年末に声明だけが出されたのだと思います。
そもそも1000を超える無数のサイトは無法地帯で、政府はそのときまったくコントロールしきれないと考えていたので、まずそうしたサイト群を牽制するために、政府としては「政府の資本が入っていない企業のサイトはだめだ」という声明を発表したのです。しかし、政府機関が調べていく中で、56.comのように海外の資本が入っていても、ある程度実績のある大きな企業、きちんと管理体制ができている企業に関しては、政府の資本が入っていなくても、きちんとポリシーに合った形で運営ができるという認識もありました。
その通りですし、まだライセンスも下りていませんが、まずライセンスを申請することが許されました。幸いにも。56.comは管理体制を認められたので、いまのところは政府のホワイトリストに載っています。逆に、ライバルでこれまで最大手の一角だったTudou.comはブラックリストに載ってしまって、サイトの24時間運営停止処分を受けるなどの措置がとられています。
政府がもっとも現在気にしている分野としては、バイオレンスや国のプロモーション、政治的にセンシティブな内容などです。56.comとしても今後この分野で成長していくために、コンテンツの管理体制を強化していこうと思っています。
あと、もう少し長い目で見ると「著作権」は中国でも大きな分野になってくると思います。56.comとしては、大きな問題になる前に湖南テレビとの協業にもありますように、きちんとコンテンツホルダーとの関係を構築していくかまえです。
コンテンツホルダーとの提携の例では、最近NBAとNBA.56.comを展開する発表をしました。実は、NBAのバスケットは中国で一番人気のあるスポーツのカテゴリーです。NBA自体も、今後中国市場を広げていくために現地でのリーグ構想があるなど、積極的な動きがあります。56.comは、中国で唯一のオンラインビデオのパートナーとして、タイアップしていきたいと思います。
これは著作権としてはいい事例だと思いますが、何が起きたかというと、まず56.comとNBAの関係ができるまでは、NBAのコンテンツは野放し状態で、競合サイトでも違法なコンテンツが流れていました。56.comがNBAとタイアップするときに何をやったかというと、まず自分のサイトから違法コンテンツを全部削除しました。そして、メインのコンテンツを全部オフィシャルなコンテンツに切り替えたのです。それと同時に56.comとNBAが組んで、他のサイトにあるNBAの違法コンテンツを削除するように動いた結果、違法コンテンツの流通が減って、56.comを通じたオフィシャルなコンテンツがユーザーの手に渡るようになったのです。こうした例も、YouTubeと非常に違うところだと思います。
実は、こういったコンテンツを扱うにあたって、コンテンツのライセンスホルダーと組みやすい背景が1つあります。56.comは、テレビ番組などを許諾なく違法にアップロードしたコンテンツよりも、ユーザーが自分で作るUGC(User Generated Content)コンテンツが圧倒的に多く、全体のビデオの中で8割も占めています。これはどの国内競合と比べても、またYouTubeと比べても非常に高い数字だと思います。
そうなると、実際に提携する前のNBAや湖南テレビのコンテンツは56.comとしては2割の部分、つまり全体の中ではボリュームの少ないほうのコンテンツなので、この部分に対してコンテンツホルダーと組むことにより、まず違法なものを全部削除してしまったとしても、コアなビジネスにはほとんど影響がありません。ですから、思い切ってこういうコンテンツホルダーと組んで、違法コンテンツを削除しても前に進める力を持っているわけです。
ところが、56.comの競合のほとんどはUGCは少なくてテレビ番組のコピービデオばかりなので、彼らが同じようなことをやってしまうと、コアのトラフィックが著しくなくなってしまいます。そのため、コンテンツホルダーと組むような思い切ったことができないという問題を抱えています。56.comがコンテンツホルダーときちんとした関係を持てるのは、UGCがコアでここに力があるから、こういう余裕を持った新戦略ができるのです。
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