A・ハーツフェルドが語る「Macの誕生と、その他の物語」(前編) - (page 2)

Scott Ard(CNET News.com)2005年04月06日 10時00分

 MacはAppleの未来を担うものではありませんでした。会社が未来を託していたのはLisaやApple IIIで、Macはどちらかというと、地味な研究プロジェクトでした。少なくとも、Jef (Raskin)がリーダーを務めていた頃は、取るに足らない存在でした。注目されるようになったのは、リーダーがSteve(Jobs)に代わってからです。しかし、当時からSteveは有能な司令官というより、ほら吹きのように思われていましたからね。SteveがAppleのCEOに就任するのは1990年末のことです。当時はまだVPで、1981年に会長になったものの、社内における権威はほとんどありませんでした。

 Macプロジェクトは野心的すぎると思われていました。他の大きなチームと比べると、規模もはるかに小さかった。大型のプロジェクトを進めようと思ったら最低でも50人は必要ですが、Macチームはたったの5人。それでも、プロジェクトが進むにつれて、会社もその重要性に気づくようになり、Macが発売される頃には、会社全体が沸き立っていました。

--衝突も多かったのですか。

 それはもう。本にも当時の緊張関係に関するエピソードがたくさん登場しますが、なかでもLisaチームとの確執は深刻でした。「And Another Thing」というエピソードは、Burrellと私がLisaアプリケーションチームのマネージャーだったLarry Teslerの依頼を受けて、LisaチームにMacをデモした時のてんまつを描いたものです。われわれがデモをしていると、Lisaの主要開発者で、デモには招かれていなかったRich Pageが飛び込んできました。そしてデモの最中だったわれわれに向かい、MacintoshはLisaを、そしてAppleを破滅させるものだと叫び始めたのです。

 彼は気が違ってしまったようでした・・・ものすごく気持ちが高ぶっていて、ほとんど泣いているようでした。全員が衝撃を受け、あっけにとられていました。いいたいことを一通りいってしまうと、彼は乱暴にドアを閉め、部屋から出て行きました。今でも覚えていますよ、水を打ったような静けさのなかに、ドアの振動だけが、残響となって響いていたことを。Larry Teslerは(Richの暴挙に)すっかり当惑し、二の句が継げない様子でした。彼がいうべき言葉を探していると、またRichが部屋に乱入してきて、われわれはふたたび、罵声を浴びせられることになりました。

--しかし、彼の主張、つまりMacがLisaを脅かすという指摘にも、多少の理はあるのではありませんか。MacはLisaと同等の機能を、はるかに安い価格で提供しようとするものでした。しかも、発売は2年ほど先に予定されていたわけですから、Lisaの売り行きを落ち込ませるおそれがあった。

 それはそうです。確かにLisaとMacの間には複雑な問題がありました。でも今になって思えば、Macの開発は正しい選択だった。Macを開発していなければ、今のAppleはなかったと思います。

--AppleとMacの開発に関する本を書こうと思ったのはなぜですか。

 Appleに関する本はたくさん出ています。しかし、そのほとんどは非常に利己的で、結局はそれを書いた人間を持ち上げるものでしかない。そのよい例が(Appleの元CEO、John)Scullyの本です。しかし、利己的という意味では、Gil Amelioの本の右に出るものはないかもしれません。あの本はほとんど言い訳といっていい代物でした。

--他に、Macの誕生について書かれたものはないのですか。

 ありません。当時のメンバーで、本を書いた人間はいませんから。

--開発の様子をこまめに記録していたのですか。

 ええ、ノートに書き留めていました。1983年秋にMacの宣伝が始まったとき、それまでの歴史を短い文章にまとめました。3ページくらいだったでしょうか。そこにどんどん新しい文章を追加していったのです。

 Folkloreプロジェクトを思いついたのは1996年です。General Magicを辞めた直後でした。原型となるウェブサイトを作り、100本のエピソードの題名を羅列しました。今よりは記憶も鮮明でした。8年前ですからね。でも、形になったのは2003年のことです。

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