岸田:ラグジュアリーブランドの顧客は一般的にごく少数です。そういったラグジュアリーブランドが掲載されるようなサイトの会員が、ポータルみたいに巨大でなければいけないかというと、そんなことはない。経済力があって、嗜好品に対する購買意欲が非常に旺盛な富裕層を囲い込めればいいんです。
我々が扱っているコンテンツって、世の中にあってもなくてもいいものです。みんなが持っていなくてはいけないものでもない。しかも、ラグジュアリー商品には、正解がないんですよ。最大公約数が正解にはならない。みんなが高級車に乗れば、それは差別化にならないわけです。「持っているのは自分だけ」であることが、差別化につながる。それが、ラグジュアリー商品の最大の機能ですよね。
最初に破れデニムを履いた人はかっこ良くても、破れデニムが流行してしまえば、破れデニムは正解でなくなる。しかし、誰も知らないのに、一人だけ破れデニムを履いていてもなんの意味もない。我々は、例えばブームになっているリゾート地があれば、「実はもっと面白いリゾートがあるよ」と教えてあげる。かっこよさの認知を広めるために、メディアが機能するんです。ラグジュアリー市場は、ウォンツを喚起するビジネスなんです。
岸田:ターゲットとしている富裕層にいかに影響力を及ぼすか。消費を促すための啓蒙というか教唆は、複数のメディアを使うとより効果的です。しかも垂れ流しではなく、読者を囲いこむ。基本的に雑誌で購入のきっかけをつくり、検討材料をウェブで膨大に提示して、購入決定に至ると。そういう流れじゃないですか?
岸田:面白いコンテンツをつくればいいんです。遠慮なく我々が@zinoをスタートしたのは、ワクワクするようなコンテンツをつくっている富裕層向けのサイトが日本になかったからです。商品を羅列するだけでは、ユーザーの囲い込みにならない。我々のセレクトを支持する人が読者ですから、すでにたくさんある高くて質の良いもののなかから、どの商品を選ぶべきか指南しなくてはいけない。
ただし、ことラグジュアリーブランドのクロスメディア戦略に関しては、日本は本当に遅れています。本国からゴーサインが出ているのに、ほとんど始まっていない。これからじゃないですか?
岸田:我々にとっては、読者の琴線に刺さって行動を起こさせるものがいいコンテンツです。そこにクライアントも期待しているわけですから。今はワクワクする話がネットにないんです。それをつくってあげれば別に雑誌を買いに書店にいかなくても、デスクトップ上で構わないはずです。
岸田:フラッシュはふんだんに使っていますが、ネットコンテンツで雑誌的な豪華さを出すのは難しい。しかし、雑誌だと、2ページ使って商品の裏表ぐらいしか紹介できないものも、ウェブなら好きなだけ情報を出せるというメリットはあります。
岸田:2ちゃんねるは見ない。
岸田: あまり見ないね。海外にもzinoやLEONみたいな雑誌ってないですよね。悪いことではないけど、日本はマニュアル文化なんです。権威好きなので、誰かが見立ててくれると安心して購入するんです。
現在のネットにおけるコンテンツビジネス(勝者総取り、スケーラビリティ、最大公約数の確保etc.)とは明らかに違う方程式が、zinoのビジネスモデルには組み込まれている。そして、それは成熟した雑誌市場のなかで、岸田氏が編み出した手法だ。いまだ技術革新が繰り返されるウェブ上で、このモデルがどれだけうまく回転するのかが焦点となろう。
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