USEN田村社長の“ブレない”経営--BtoBで勝機を引き寄せる - (page 3)

復職率は9割超、「古い」という自覚がもたらした働き方の適正化

--新規ビジネスを育てる一方、社内の働き方改革もこの3年でかなり進められたとのことですが。

 USENは、1961年創業ですから、社内制度も古いままで、仕組みづくりが遅れていた感がありました。そこを適正化しようと3年前から「USEN WorkStyle」(WorkStyle)という就業環境の整備に取り組んでいます。

 営業担当が多いせいか、どうしても忙しいというイメージを社内外から持たれてしまいます。そうした社員も事実いますが、そういう働き方はいつか破たんしてしまいます。ただ「残業をしないで帰れ!」といっても、さばかなければならない仕事量がそのままでは早くは帰れないんですね。仕事は残っているのに帰れ、なんてこんな矛盾はないですよね。

 そこで、業務のプロセスを見直すことから始めました。現場が報告しているレポート類は、本当に活用されているのか、という部分から考え直し、必要なものだけを残しました。まずは、業務のムダ、ムリ、ムラをなくすことで、業務量を減らす工夫をしています。

--WorkStyleの改革を進める上で、社員の声をどのように取り込んでいますか。

 私自身、以前は支店を束ねる役職についていたので、どういう社員がどこにいて、どんなお客様に囲まれて、私たちの事業が成り立っているのか当時は全部わかっていました。しかし就任から1年もたつと、だんだんわからなくなってくる。これはまずいなと思い、自ら支店を回ることにしました。

 毎月、全国の支店を1~2カ所ずつ回っています。首都圏や政令都市などの支店は役員が訪れる機会も多いですが、なかには2~3人で運営してくれている支店もありますから、業務のコミュニケーションをとりにくいそうした小規模なところを中心に行くようにしています。

 実際に出向いてみると効果てきめんで、ここから人事制度の改定などの案も生まれてきています。例えば、お子さんを持つ社員の時短勤務は以前は小学校就学までの6年間でしたが、卒業までの12年間まで伸ばしています。保育園の補助金制度も認可、無認可ともに実施することで、出産後の女性社員の復職率は9割を超えました。

 もちろん、お子さんを持つ社員だけではなく、全員が該当するWorkStyleの拡充が目的ですから、評価制度や有休奨励日なども見直しています。

--かなりのスピードで制度改革を進められているようですね。

 スピード感を持ってというよりも粛々とやったという感じなのですが。ただやらなければいけないことはほかにもあって、その1つは採用の強化です。学生の数が今後減っていくなか、今後のUSENを担う素養を持つ人材確保は必至です。

 今の動向をみていると、学生が入社を希望するのは、大企業かベンチャーに二極化していて、社員数約3000人のUSENはちょっと中途半端な立ち位置なのかなと。その中でも「USENに入りたい」と思ってもらえるような企業にしていかなければいけません。

 大事なのは“ワクワク感”じゃないかと思っています。USENに入れば成長できる、挑戦できるという期待を持ってもらえる企業であること。店舗向け音楽配信という盤石な顧客基盤を持ちつつも、常に新たなことに挑戦するチャレンジ精神は持っていただかないといけません。姿勢としては「でっかいベンチャー企業でありたい」と思っています(笑)。

 現在、取締役会長を務める宇野(康秀氏)が社長を務めていた当時は、そういうワクワク感にあふれていて、私や現在の経営陣など、その時代に入社してきた人材も多い。そのときのような常にムーブメントを作れるような企業にしていきたいと考えています。

--今後の3年間はどのように考えていますか。

 メインの部分は変わらず、BtoB領域でどういうことができるのか、何をやるべきかを掘り下げて推進していこうと思っています。店舗ICTはUSENのメイン事業の1つですが、省力化や店舗のコストを下げられるという大きな可能性ももっています。USENだけの利益を追求するのはでなく、お取引先のお客様にも喜んでいただける、そういうサポートができる企業になりたいです。


田村氏は、毎月1回は全国にある支店に直接訪れている

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