クリプシュがBluetooth採用に踏み切ったシンプルな理由--有線も無線も“高音質”

 米国のオーディオメーカー「Klipsch(クリプシュ)」は、2016年に創業70周年を迎えた老舗ブランドだ。スピーカメーカーとして知られるが、ここ最近はワイヤレススピーカやヘッドホンなど、ポータブルオーディオ製品も積極的に展開している。

 イヤホンの基本スタイルはフルレンジのバランスドアーマチュアドライバを1基搭載するシンプルな設計で、スリムでコンパクトな筐体が特徴。原音再生を追求する高音質設計をコンセプトに据え、長くBluetooth対応機を発売してこなかった。

 しかし、10月にはオーバーイヤータイプの「Reference Over-Ear Bluetooth」と、オンイヤータイプの「Reference On-Ear Bluetooth Black」の2つのBluetoothヘッドホンを発表。追って、イヤホンタイプの「X12 Neckband」「R6 Neckband」も発売予定としており、一挙にBluetooth対応機のラインアップを拡充する。

 老舗オーディオメーカーがワイヤレス対応へと踏み切った理由とは何か。Klipschが作るBluetoothイヤホンとはどんなものかを、ヘッドホン開発のシニアマネージャーであるVlad Grodzinskiy氏と、サウンド・エンジニアのAndrew Doerr氏に聞いた。

Klipschのヘッドホン開発のシニアマネージャーであるVlad Grodzinskiy氏と、サウンド・エンジニアのAndrew Doerr氏
左から、Klipschのヘッドホン開発のシニアマネージャーであるVlad Grodzinskiy氏と、サウンド・エンジニアのAndrew Doerr氏

つけ心地は上質な素材から生み出される

--新たに発売するBluetoothヘッドホン、イヤホンの特徴を教えてください。

Grodzinskiy氏 ヘッドホンは、遮音性の高いオーバーイヤータイプと、周囲の音が聞こえやすいオンイヤータイプをラインアップし、好みに合わせて選べるようになっています。両機種ともに40mmのドライバユニットを搭載し、オーバーイヤータイプは「Klipsch Balanced Dynamic(KBD)」という新ドライバを採用しています。

 一方、発売予定となるX12 Neckband、R6 Neckbandは、レザーやメタルなどの素材を用いていることが特徴です。Bluetoothイヤホンはプラスチック製のモデルが多いのですが、本格素材を使うことで、質感を高めることができました。

 イヤホンは身につける時間が長く、肌に触れる部分も多いため、できるだけ良質の素材を使うことで、快適な使用感を提供したいという思いから、この素材を選びました。重要なのは、これだけの素材を使用しながら軽量を維持している点で、つけているのかいないのかわからないくらいの“軽さ”を実現できたことも、ほかのBluetoothイヤホンとは大きな違いだと思っています。

左から「R6 Neckband」「X12 Neckband」
左から「R6 Neckband」「X12 Neckband」

--このタイミングで、一気にBluetoothモデルを拡充した理由は。

Grodzinskiy氏 Klipschでは2月に発売した「R6 Bluetooth」まで、長くBlueotooth対応のイヤホンをラインアップしてきませんでした。その理由はBluetoothを使うと音質が劣化してしまうからです。私たちとしては、音質を犠牲にすることは絶対に避けたかった。そのため有線のモデルに注力してきました。

 しかしBluetooth 4.0の登場によりクオリティが上がり、ワイヤードとワイヤレスの音質差はなくなりました。同等のクオリティが出せるようになったので、Bluetoothモデルのラインアップを強化しました。

 もちろん「iPhone 7/7 Plus」からイヤホンジャックがなくなったことも大きいです。そういう意味では非常にいいタイミングだったと思います。

ワイヤードでもワイヤレスでも“いい音”を追求する

--サウンドチューニングにおいて、iPhoneは重要なデバイスですか。

Doerr氏 開発段階では、さまざまなデバイスを使って音を決めていきます。スマートフォンはもちろん、iPad、iPod、ハイレゾプレーヤーなどを使用しています。iPhoneを特別視しているわけではなく、いろいろなモデルで聴くことを重要視しています。いいイヤホン、ヘッドホンであるためには、すべての製品と相性が良くなければなりません。

--日本市場はヘッドホンもスピーカも国内外多くのブランドが参入しています。Klipschの強みはどこでしょうか。

Grodzinskiy氏 1つは音質です。Bluetooth 4.0により、ワイヤレス再生における音質はかなり向上しましたが、その中でも私たちが目指したのは、ワイヤードでもワイヤレスでも同じ音質で聞こえることでした。そこが一番大きな差別化だと思っています。

 もう1つは、高音質を追求するための効率性です。これは開発時に特に重視しているポイントで、これにより採用する機能をかなり絞り込んでいます。Klipschのイヤホン、ヘッドホンは、新しい機能をどんどん追加するよりも、小音量時にどれだけ良い音を再生できるか、そういった部分にこだわっています。機能よりも音質を重視する設計を行うための効率性を突き詰めています。この2つがないとKlipschブランドは通用しません。

 今、ポータブルアンプなど、音楽を聴く際に多くの機器を使っている人も多いと思いますが、Klipschのヘッドホン、イヤホンを使う際は、そうした機器を外して、一度プレーヤーのみのシンプルな状態で聴いていただけるとうれしいです。そうしていただければ、シンプルな状態でもすごくいい音で再生できることがわかっていただけると思います。

左から「Reference Over-Ear Bluetooth」、「Reference On-Ear Bluetooth Black」
左から「Reference Over-Ear Bluetooth」、「Reference On-Ear Bluetooth Black」

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