ユーザーの成長にアプリが寄り添う--アドビが考えるクリエイティブツールの未来とは

 クリエイティブのワークフローはここ数年でPCからモバイルに拡張してきている。スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスでも本格的な作業ができるようになり、直感的な操作を生かしたアプリも登場。両者をスムーズに連携させるクラウド技術も含め、クリエイティブツールは新しいステップに進もうとしている。

米アドビシステムズCreative Cloudモバイル&サービス担当バイスプレジデントのゴビンド・バラクリシュナン氏
米アドビシステムズCreative Cloudモバイル&サービス担当バイスプレジデントのゴビンド・バラクリシュナン氏

 また、クリエイティブを取り巻く環境も変化している。ウェブサービスやアプリなどにおけるUI/UXの設計、プロダクトのインターフェイスなど、我々が生活で触れるデザインの重要度は年々増しているほか、写真や動画が簡単に扱え、性能も向上したモバイルデバイスの登場で誰でもクリエイターになれる下地が揃ってきている。

 こうしたツールの筆頭と言えば、「Photoshop CC」「Illustrator CC」といったデザインツールなどを幅広く手がけるアドビシステムズを思い浮かぶ人も多いだろう。同社は、クラウドベースのクリエイティブパッケージ「Adobe Creative Cloud」を提供しており、今はモバイルアプリの開発に精力的だ。

 アドビは、クリエイティブツールの今後をどのように見据えているのか。同社でサービス全般とモバイルアプリを統括している、米アドビシステムズCreative Cloudモバイル&サービス担当バイスプレジデントのゴビンド・バラクリシュナン氏に話を聞いた。同氏は、15年以上アドビに在籍し、前職は米AutodeskでMaya3Dの開発に携わるなど、クリエイティブの最前線を走ってきた人物でもある。

――現在、アドビではモバイルアプリを拡充していますが、無料のものも多く、こうしたプロダクトが“初めてのアドビ”になるユーザーも多いと思います。モバイルアプリはエントリー層がターゲットでしょうか。

 モバイルアプリを最初に作り始めたとき、まずはPhotoshop CCやIllustrator CCなどのコンパニオンアプリとしてフォーカスしていました。ですので、プロフェッショナルでも十分に使えるようなパワフルなアプリであり、同時にさまざまなユーザーが使えるようにも設計しています。

 初めの頃は、大変興味深いチャレンジだったのですが、モバイルデバイスでクリエイティブな作業がしたいというプロが大勢いることを知り、また、モバイルアプリで初めてアドビに出会うユーザーもたくさんいることに気づきましたので、2つのプライオリティのバランスを取ろうとしたのです。

――プロフェッショナルも考慮されているとのことですが、「Photoshop Fix」「Photoshop Mix」「Photoshop Sketch」など、同じPhotoshopでもそれぞれのアプリが目的に特化しています。これは機能を分かりやすくするためのものでしょうか。

 モバイル戦略を始めた2014年ごろ、当時のモバイルプラットフォームは、デバイス・OSともに制約が多くありました。そのため、プラットフォームに合うように分子化されたアプリを作ることにしたのです。しかし、分子化されたアプリはプロフェッショナルにとって一貫したワークフローを実現しづらいため、1年半ほど前からワークフローに対しても投資をはじめました。

 今では、ユーザーがとあるアプリで作業を開始し、別のアプリに作業を移してまた元のアプリに戻ってきたりと、それぞれのアプリをつなげるようなワークフローを提供しています。

 また、モバイルアプリで制作したプロジェクトを、デスクトップアプリに作業を引き継ぐことも可能です。

Apple Pencilを使った「Photoshop Sketch」のデモの様子(<a href="http://japan.cnet.com/news/service/35086945/" target="_blank" >該当記事</a>)
Apple Pencilを使った「Photoshop Sketch」のデモの様子(該当記事

――モバイルアプリの今後についてですが、コンシューマとプロフェッショナル、どちらをターゲットにしていくのでしょうか。

 いま、この問題を解決するためにかなりの労力をかけています。プロフェッショナルに提供したいと思いつつ、ビギナーにとっても分かりやすいものでありたいと考えており、「プログレッシブディスカバリー」の導入を検討しています。これは、ユーザーのレベルにアプリが合わせてくれるもので、作業を進めていきながら次に何をすれば良いのかを発見できる仕組みです。

 ゲームで例えると分かりやすいでしょう。レベル1では、ユーザーに与えられる課題というのはシンプルなチャレンジですが、1つずつ課題を解決していくとユーザーのレベルは上がり、ゲームの難易度も上がってきます。これと同じで、シンプルなワークフローから始め、ユーザーが高度になってくれば新しい機能が使えるようになるという流れです。より直感的に使うことができるでしょう。

――それは今後、アプリに搭載していくのでしょうか。

 そうですね。将来的にモバイルアプリにどのように実装するか検討している段階です。

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