理想は“1人で制作できるニュース番組”--ソニー「ニュースマネージャー」の狙い - (page 2)

デジタルサイネージ市場の増加を見据えた新しいメディアの可能性

 こうしたソニューション開発の狙いは、一言で言うなら「新しいメディアの可能性」と語る。ことデジタルサイネージ市場は2020年に向けて大幅な拡大も見込まれており、そこに向けたコンテンツの需要増も想定されている。「デジタルサイネージは今のところCMや止め絵と文字でのインフォメーションがほとんど。それが動いて、なおかつしゃべるなら面白くなり価値も上がる」と語る。

 もちろん音を出せるサイネージばかりではなく、フキダシにして漫画的に読ませる手法も考えられ、サイネージのコンテンツとして、人をあまりかけずニュースを作るところから出先となる部分まで一気通貫で提供できるのであれば、それはビジネスとしての価値として十分なものになるという。

 ニュースマネージャーは「ニュースを聞く」という用途で制作されているが、さまざまな応用も考えられる。そのなかにはガイドやインフォメーション用途も想定されており、そういったガイドに人格を持たせる“アバター化”も進んでいくだろうという読みも倉田氏は持っている。

ソニー「ニュースマネージャー」の実証実験
場所がスクランブル交差点の前ということもあり、赤信号で足を止めた人が、映像を見ている姿も多く見受けられた

 ちなみに実証実験で印象的だったことひとつに、「海外の人ほど珍しそうに写真を撮っていた」ということを挙げた。アニメ調のキャラクターが日本をイメージさせるものの象徴としてあるなかで、デジタルサイネージを通じ、外国語に対応できるガイドキャラクターに案内させるといった展開も、特に2020年を見据えれば需要はあると推察している。

 「今の段階はソニー側として、いかに魅力的にキャラクターを動かしたり、合成音声をよく聞こえるようにするか。これはやればやるほどデータとして蓄積できるものなので、数をこなせばきれいに読める確率が上がっていき、それがコスト低減にもつながる。さらにサイネージで鍛えた技術を応用することで、ほかのサービスよりも質のいいものが商用向けにも個人向けにも提供できるようになる。プロの仕組みで作った土台を活用して、さまざまなコンテンツが生み出されるようになる」(倉田氏)

目指すは「1人ニュース番組制作」

 実証実験の目的でもある心証調査については、まだ速報レベルとしながらも拒否反応を示すような報告はなく「こちらが想定していたよりも良好なもの」(倉田氏)としている。人間の心理として、広告ではなくインフォメーション(情報)として、自分にとって価値があるものと判断できれば耳を傾けるということが大きいと推察しているという。

 まだまだプロトタイプ段階であるため、課題もさまざまな面から浮かびかがっているという。シンプルに読み上げの音質とイントネーションの向上ももちろんだが、ニュースとアニメーションの組み合わせ、特に「キャラクターがニュースを読む場合、ニュースの選択に制限がある」ということを挙げた。ニュースにはお祝い事のようなポジティブなものもあれば、事件や事故のようなネガティブな内容のものもある。テスト段階でアニメ調のキャラクターにネガティブな要素を持つニュースを読ませると、抵抗感を感じるという指摘があったため、実証実験では比較的ニュートラルやポジティブ寄りなスポーツニュースに絞って展開した。

 またしゃべるときの表情についても言及。番組では最初のあいさつで少しにこやかにしているものの、ニュース中はきりっとしてしゃべらせている。そこだけ切り取って見ると表情が固いと受け取られ、目つきが鋭いという指摘も多くあったと振り返るが、このあたりは実際のニュース番組のアナウンサーの表情を研究した結果だという。こういう表情の細かいところは、ニュースの振れ幅にも直結することだとして、ディティールも含めて突き詰めたいとしている。

番組の最後にはにこやかな笑顔で手を振るシーンも
番組の最後にはにこやかな笑顔で手を振るシーンも

 もっとも、表情のバリエーションを増やすことそのものは問題なくできることであっても、そうすることによって表情を付けていく作業が発生し、手間が増える要因になる。そのため、ニュース原稿の内容を人工知能(AI)が判断し、違和感のないものを自動的に付けられるようになれればと語る。

 「記事を入れる、あるいは伝えるべきニュースを選んだら、番組が自動生成されニュース番組が完成する。特別なスキルセットが必要なく、ディレクター1人だけで独自のニュース動画番組が作れるようになるのが、先にある到達点。と同時に、こういったニュース番組がごく自然に、普通と受け止められるようになる未来が理想」(倉田氏)

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