プレミアムインタビュー

サイバーエージェントは「発展途上国」--藤田社長の“組織論”


 1998年の創業から18年経った今もなお、競争の激しいインターネット業界で第一線を走り続けるサイバーエージェント。その創業者である藤田晋氏とは、どのような人物なのか。動画に舵を切った「事業」、成長しつづける「組織」、そして余暇を全力で楽しむ「ライフスタイル」を深掘りすることで、同氏の素顔に迫る(全3回)。

 第2回は「組織」について。同社ではこれまで、優秀な社員を昇格推薦できる「CAバンヅケ制度」や、経営陣によるトーナメント形式の新規事業コンテスト「あした会議」など、数多くのユニークな制度を導入してきた。また、サイバーエージェントといえば”リア充”な社員が多く、容姿が美しい”キラキラ女子”を中心に採用しているというイメージも強い。藤田氏の考える「組織論」を聞いた。

「調子に乗る」と短期的に輝いて終わる

――インターネット業界で20年近く成長しつづける企業はごくわずかです。何が他社と命運をわけたのでしょう。

 そう聞かれて、すぐ頭に出るのは「調子に乗らないようにしている」こと。それが真実なんじゃないかなと思います。短期的に伸びている時に調子に乗って敵を作ったり、過剰に自分たちを評価したり、最悪の事態に備えなかったりしている人が、短期的に輝いて終わっているような気がします。

 我々は「あした会議」などの役員合宿を定期的に開催していて、新規事業を仕掛けるタイミングで、足元を忘れて中長期的な問題を潰すようにしています。ただ、最近は問題の種を潰しすぎて、みんな必死になって「何か問題はないか」と探しています(笑)。やはり、あれをやり続けてきたのが大きいですね。合宿に行くと、みんなテンションが上がって、いろいろと決められるんですよ。

――2年ごとに2人の取締役を入れ替える「CA8(シーエーエイト)」や、評価の低い社員を異動させる「ミスマッチ制度」など、他社にはないユニークな社内制度はどのようにして生まれるのでしょうか。これらは藤田さんが考えるのですか。

数多くの社内制度が生まれている
数多くの社内制度が生まれている

 社内制度は、先ほどお話しした「あした会議」などの役員合宿で決まるんです。たとえば、ミスマッチ制度でいえば、同時に退職金制度を導入したんですよ。まだ定年を迎える人なんて20年以上もいませんが、有能な社員が長期に渡って働けるように入れました。ただ、そうすると会社にしがみつく人が出てきてしまう。なので、1つ良いものを入れたら、1つ変わったものを入れておくという発想です。

 そういうアイデアは、基本的には社内から出たものを僕が決裁しています。(制度を)僕が考えることもあるのですが、みんなが会社のために知恵を絞る仕組みみたいなものとして、「あした会議」などがありますね。

――サイバーエージェントは3500人(連結)を超える大企業ですが、そうした制度は一度に全社員に導入するのでしょうか。

 そうですね、基本的には思いついたらすぐにやっています。ただ、スベッてる制度も結構あるんですよ(笑)。だから、やって駄目だったら止めればいいと思います。

 (制度を設ける理由は)いろいろなことが既得権益にならないように気をつけているんです。食堂を導入していないのも、1度作るとそれが当たり前になってしまい味がマズいと言うようになったり、食堂がないオフィスにいる人が文句を言ったりするためです。

「既得権益をなくすために制度を導入している」と藤田氏
「既得権益をなくすために制度を導入している」と藤田氏

――なぜ、サイバーエージェントではオフィスを主に渋谷に分散させているのでしょう。

 大企業感を出さないということですね。僕もここで働いているとそんな感じがまったくしていないんですが。昔はもっと立派なオフィスですごい受付けにして、自分たちを大きく見せようとしていましたが、もうそれは意味がないかなと。マークシティに入ったときにはもうUターンというか、むしろ雑居ビルに入った方がカッコいいんじゃないかなと思うようになりました(笑)。

「キラキラ女子」は脈々と受け継がれている

――「キラキラ女子」ばかりを採用しているのではないかと噂されることもあります。

 意識はしていないですけど、会社の文化に合う人を採用しているので、やはり最初にそういう人が入ったことで、脈々と受け継がれている面はあるかもしれませんね。ただ、キラキラ女子みたいな人ばかり集めて、業績が悪かったらただのアホですけどそんなことはないし、実際にそういう人たちは仕事もできますから。

――以前、日経電子版の経営者ブログに投稿された、藤田さんの「私が退職希望者に『激怒』した理由」というエントリーが話題になりました。(編集部注:仕事を投げ出して、引き抜き先の競合企業へ転職する社員に激怒したようにみせたという記事。もちろんそれには理由がある)

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