資本関係のないゲーム開発4社が仕切りなしのワンフロアで業務--相乗効果の狙いを聞く

 ゲーム開発を主とする4社が、2015年に入ってから秋葉原にあるビルのワンフロアに次々と入居し業務を開始している。いわゆる「オフィスシェアリング」にあたるのだが、この4社は資本関係がなく、総勢100人程度の人数規模にもかかわらず各社を区切る仕切りなどは設置されていない。

 入居しているのはイルカアップス、ガルチ、グレフ、トイディアの4社。ゲーム開発という共通項はあるもののそれぞれで従業員規模、社歴、得意としている分野やスタンスも異なっている。

見渡す限り仕切りらしい仕切りもなく、整然と机とPCが並んだワンフロアに4社が入居している
見渡す限り仕切りらしい仕切りもなく、整然と机とPCが並んだワンフロアに4社が入居している

 イルカアップスはスマートフォン向けアプリを中心に企画開発からプロデュース、運営を行っている。大手ゲームメーカータイトルの開発プロデュースを多く手がけ、エッジの効いたカジュアルアプリの開発も進めている。

 ガルチはコンシューマからアーケード、モバイル向けまで幅広く手がける開発会社で、4社のなかでは一番人数が多い。自社タイトルとしてはグレフと共同開発によるシューティングゲームの「まもるクンは呪われてしまった!」が知られ、、NTTドコモとの共同開発によるスマートフォン向け「リリーと魔神の物語」を近日配信予定。

 4社のなかでは一番社歴が長いグレフは、家庭用とアーケード用の開発が中心。熱心なファンも多い弾幕対戦アクションシューティング「旋光の輪舞」シリーズのほか、「ゲームセンターCX3丁目の有野」(バンダイナムコゲームス)の開発でも知られている。

 トイディアは元セガのクリエイターが中心となって立ち上げられた新興の会社。少数精鋭のインディーズメーカーというスタンスでスマートフォン向けアプリ開発を手がけ、ローグライクなダンジョン探索RPG「ドラゴンファング」の運営を行っている。

 資本関係のあるグループ会社で同じフロアにある、あるいは数人程度の少人数規模でシェアするといった事例はあるが、資本関係がない状態で100人規模でのシェアというのはあまり例がない。ことゲーム開発であれば機密事項とされる部分も多いが、各社が仕切りらしい仕切りもなく、ワンフロアに一堂に集まり業務を行っている。

 なぜこのようなオフィスシェアリングを行ったのか、その経緯や実際に運用をはじめてどのように感じているのかなどを、イルカアップス代表取締役社長兼CEOの梅田慎介氏、ガルチ代表取締役社長兼CTOの茶谷修氏、グレフ代表取締役の丸山弘幸氏、トイディア代表取締役兼CEOの松田崇志氏の4社代表に聞いた。

左から、トイディア代表取締役兼CEOの松田崇志氏、イルカアップス代表取締役社長兼CEOの梅田慎介氏、グレフ代表取締役の丸山弘幸氏、ガルチ代表取締役社長兼CTOの茶谷修氏
左から、トイディア代表取締役兼CEOの松田崇志氏、イルカアップス代表取締役社長兼CEOの梅田慎介氏、グレフ代表取締役の丸山弘幸氏、ガルチ代表取締役社長兼CTOの茶谷修氏

それぞれが「手狭になったから……」。偶然も重なった4社によるシェア

--まずどのような経緯で4社が集まることになったのでしょうか。

梅田氏:最初に言い出したのは私になります。当時ガルチさんとある案件で一緒にプロジェクトを動かす関係で、ガルチさんのスペースの一部ををお借りしていたのです。そんななかでイルカアップスも50人ぐらいの規模になってオフィスが手狭に感じていたのと、ガルチさんも移転を考えられていたと。それで茶谷さんに「一緒に借りましょうか」とお話したのが、そもそものきっかけですね。

茶谷氏:ガルチはだいたい60人ぐらい従業員がいますけど、引っ越し前は3部屋ぐらいに分かれて、さらにイルカアップスさんと一緒の案件では別の建物に4部屋目を借りていた状態だったので。

梅田氏:イルカアップスはどちらかというとプロデューサーやディレクターが多く、ガルチさんはエンジニアが多くて開発が得意。茶谷さんとは仲がいいというのもありますし、お互いの得意分野が違いますので、切磋琢磨(せっさたくま)しつつ相乗効果を出していけたらということです。契約上はイルカアップスがフロアの借り主となって、3社に転貸しているという形になってます。

 ちょうどそのタイミングでたまたま松田さんとお知り合いになってて、松田さんもオフィスを探しているとFacebookに投稿されたんですね。それでイルカアップスとガルチさんの移転のお話をしたらのってきたというところです。

茶谷氏:あとから聞いた話なんですけど、松田さんはガルチが移転することを知って、そのあとに入られることも検討されていたようなんです。なのですごい縁だなとも思います。

松田氏:トイディアも少人数でやっているとはいえ手狭になってきたので、アクセスがよく未来的な展望か感じられる場所に移転できたらと考えていたのです。ただウチぐらいの売上規模ですと、広さを取るならアクセスがあまりよくない場所しかなくて、秋葉原のような場所は無理だと。それで「引っ越し先がなくて苦労している」と投稿したら、梅田さんからお声がけをいただいて、もう速攻で決めました。

丸山氏:グレフとしては、茶谷さんが移転の話をされてお誘いを受けたのがきっかけなんですけど、私も新しいオフィスを探していました。茶谷さんは私が探していたことを知らずに話されたので、本当に偶然なんです。ただ、もともと(東京の)町田市に会社があったので、町田近辺で探してました。

 秋葉原への移転に少し戸惑いもありましたけど、やはり秋葉原はゲームの街で、いまだ衰えないパワーのある街でワクワク感があります。また茶谷さんとは兄弟とまではいかずともそれに近い感覚で長くお仕事をしていましたから、この先もガルチさんと一緒に仕事をすることが続くとなると、近くにいたほうが効率がいいかなと。イルカアップスさんやトイディアさんはそれまで知らなかったんですけど、行ったことによって仲良くなっていけばいいかなという軽い考えです。

茶谷氏:グレフさんはガルチの先輩方にあたる会社で、お互いにアーケードやコンシューマ開発を中心にしていたこともあってお世話になっていたのです。その後ガルチはいち早くスマホゲーム開発にも乗り出したのですけど、グレフさんはいまだアーケードとコンシューマを中心にしています。今後業界も変わっていくでしょうし、そのなかで一緒に場所で仕事をすることによって、より面白いことがたくさんできると思ってお誘いしたんです。

丸山氏:今のゲーム業界では少し浮いているのかもしれませんけど、違う色を持っているということは、一緒に仕事することで相乗効果が生まれるのではと。それがお誘いをいただいた理由だと受け止めています。あとは開発力といいますか人材面ですね。自分たちは胸を張って優れていると言えますが、マンパワーが少ないです。海外も含めて外注をしていたところもあるのですが、新たに仲良くなる会社さんと、そして顔の見える身近な会社と組めることの安心感もありますし、チャンスも広がると思います。

茶谷氏:ゲーム作りにおけるコンシューマとスマホでの差はなくなってきているのですが、技術的な要素においてかなり差があります。ガルチではある程度研究が済んでいるので、グレフさんが改めて研究されるよりも、クリエイティブから取り組んでもらった方が絶対的に効率がいいです。

丸山氏:わからないことも、本当に気軽に顔を合わせて聞けます。ミーティングとしてスタッフを連れてガルチに行くという手間自体が省けるだけでも大きいです。

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