Skype英会話のレアジョブが上場--承認後にCA藤田氏から届いたメール

 「ある意味、自動車学校のような存在になれればいいと思っている」--オンライン英会話サービスを提供するレアジョブが、6月27日にマザーズに上場した。2007年11月のサービス開始から約6年半での達成となった。

 同社が運営する「レアジョブ英会話」(レアジョブ)は、Skypeを使ったマンツーマンの英会話サービス。月額5800円で毎日25分のレッスンが受けられる“低価格”さと、英語が公用語のフィリピンで厳選した“高学歴な講師”を約3000人抱えていることが強みだ。累計無料登録ユーザー数は23万人を超え、提供レッスン数は1日1万2000回以上に及ぶという。

 2007年の創業からレアジョブはいかにして成長を遂げてきたのか。また上場後はどのようにしてユーザーや株主にアプローチするのか。現在も2週間おきに東京とフィリピンの拠点を行き来しているという、同社代表取締役社長の加藤智久氏に聞いた。


レアジョブ代表取締役社長の加藤智久氏

――まずは上場おめでとうございます。率直な思いを聞かせて下さい。

 もちろん嬉しいです。これまでご支持いただいた会員や講師、スタッフ、取引先の皆様には本当に感謝しています。一方で、責任の重さも感じています。私たちは日本人1000万人が英語を話せるようにすることを目標に掲げていますが、本当にそれを実現できるかどうかがきっちり問われるようになるのではないかと思います。

――2007年の創業当時から英会話サービスはいくつもあったと思いますが、なぜこの領域に注目したのでしょう。

  • 「レアジョブ英会話」

 私の前職が外資系の戦略コンサルタントでして、どうしても英語を喋らないといけないので、自分自身が苦労していたというのが大きいですね。その際に2つの出会いがありました。1つ目がSkypeです。最初に触れたのは2005年くらいだったのですが、これこそがインターネットだと思いましたね。遠くにいる相手と目の前にいるように話せて、しかも無料です。なので、この周辺でビジネスが立ち上がるに違いないと思っていました。

 2つ目が、フィリピン最上位の国立大学であるフィリピン大学の学生と知り合った際に、彼らは優秀だけれど仕事がないという現実を知ったことです。そこでSkypeの力を使えばこの人たちに仕事を届けることができるのではないかと思い、英会話サービスを立ち上げることを決めました。

――それから約6年半が経ち上場となりました。成長を続けられた一番の要因は。

 やはり会員の皆様からご支持いただき、知人やご家族にもご紹介いただけたことですね。私どものサービスは月額制ですので、使い続けていただいて始めてサービスが成り立ちます。それは日本側だけではなくフィリピンの講師も同様です。やはり良い講師の知人や親族は良い講師であることが多いので、横のつながりでそうした講師が増え、彼らが頑張って質の高いレッスンを提供してくれたことにも感謝しています。

 私たちのサービスは、英語を“教える”というよりも、お客様の英語に対する“やる気を引き出す”ビジネスだと思っています。今では1人でも英語を勉強できる時代です。それでもなぜレアジョブを使うかというと、恐らく毎日英語に触れられるからだと思うのです。そういったお客様の気持ちを動かしていく時に、人という要素が非常に重要です。それは講師だけでなく、会員同士の刺激であったり、スタッフが頑張っていいプラットフォームや教材、ITシステムを作ってくれることなどもそうですね。

――どのようなユーザーが多いのでしょうか。また継続率は。

 性別では男性の方がやや多いです。年齢は20~30代が中心なのですが、下は10歳以下のお子様から上は70~80代の方までお使いいただいています。また特に多いのがビジネスパーソンの利用です。たとえば休憩時間に会議室でスマホ片手にレッスンを受けるとか、モーニングコール代わりに予約しておいて、朝に講師からのコールで目を覚ましていきなり英会話を始めるみたいな使い方ですね。具体的な継続率はお答えできませんが、1~2年続けてくれる方は沢山いらっしゃいます。


――これまで競合サービスとはどのように差別化してきたのでしょう。

 最初の数年間は値段で差別化できていたと思います。特に毎日25分レッスンを受けられる定額制のプランですね。これを5000~6000円で打ち出したのはレアジョブが初めてだと思います。最初の2~3年はここが強く効いていたのですが、そこから他社も同じような価格帯を出してきました。そこで1つ違いとしてあったのは、講師たちの優秀さと、それによってお客様のやる気がよりが引き出されるという状況です。レアジョブより安いサービスもあるのですが、1000~2000円安いよりも、毎日確実に続けたいと思えるサービスの方がお客様にとって価値があるのかなと思います。

 そのために、立ち上げ時に質の高い講師を一定数確保できたことも大きかったと思います。最初は、国立のフィリピン大学に限定して講師の採用を始めました。いまは他の大学の講師も入れているので、フィリピン大学の在校生や卒業生の比率は40%ですが、競合サービスですとここが2~3%なんですね。ある種、東大生が4割いるようなサービスですので、やはりそこを最初に押さえられたのは非常に大きかったなと思います。

――現地では優秀な講師の取り合いは起きていないのでしょうか。また、レアジョブではどのようにして質の高い講師陣を維持しているのでしょう。

 弊社は「ホーム形」を採用していまして、講師は自宅から教えています。割と田舎に住んでいる高学歴な方が増えてきている状況です。これが1カ所に集める「センター型」になりますと、他社との講師の取り合いは比較的多いかなと思います。また、フィリピンではコールセンタービジネスが伸びていますので、むしろそことの争いですね。米国人に対してクレジットカードを売るか、日本人に対して英語を教えるかみたいなイメージです。

 弊社では、このホーム型でやっていることが1つの品質担保になっていると思います。センターに集めたほうが質が高まりそうなイメージがあるかと思いますが、実はその逆です。センターを作るとそこに通勤できる範囲の人しか応募できません。それよりもフィリピン全土から集めた方が母集団の数が10~100倍違いますので、当然講師の基準を厳しくできます。

 またホーム型では、講師を正社員として雇う必要がありません。レアジョブではレッスンが入らないと報酬が得られない仕組みなので、良い講師はまた自分を予約してもらうために、良いレッスンを提供しようと頑張りますし、逆にそうでない講師はお金が稼げる場所ではないので自分から辞めていきます。

 講師たちがやることは、お客様のやる気を引き出すことで、そのためには情熱や愛のようなものがお客様に伝わって初めて心を動かせる。そういったものを持っているかは素質であって、育成することは難しいと思うのです。なので、いかにスクリーニングできるかがオンライン英会話では非常に大事で、そういう意味ではホーム型の方がいいのではないかと思いますね。

――フィリピンは人件費が抑えられると言われていますが、良い講師は報酬も高く収益性という面でのメリットは薄いように感じます。

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