電子書籍の先駆け「ビューン」の次なる一手--蓮実社長に聞く

 月額315~450円の定額料金で、新聞や雑誌(一部)、TVニュースなどが読み放題の電子書籍アプリ「ビューン」。2010年6月のサービス開始から約3年が経ち、雑誌の数は50誌以上に拡大。3月末には100冊以上のコミックの読み放題サービスも開始した。2012年のiPad向けアプリの総合売上ランキングでは第3位にランクインするなど、ユーザーも増加傾向にあるという。

 一方で、2012年は楽天の「kobo」やアマゾンの「Kindle」など、各社が電子書籍端末を次々と発売。また、3月にはアップルが電子書籍アプリ「iBooks」を本格展開するなど、日本における電子書籍市場は3年前と比べて様変わりしている。国内では電子書籍サービスの先駆けともいえるビューンは、この現状をどう見ているのか。今後の戦略も含めて、ビューン代表取締役社長の蓮実一隆氏に聞いた。


ビューン代表取締役社長の蓮実一隆氏

――各社が次々と電子書籍市場に参入しています。市場全体が盛り上がってきたという実感はありますか。

 率直に言って、まだそこまで盛り上がっているとは感じていません。現在はまだ、アーリーアダプターや本当にこういったサービスが好きな方だけが電子書籍を読んでいる状態なので、市場としてはやっとスタート地点に立ったかなというところです。ただ、参入するプレーヤーが増えていくこと自体はすばらしいことだと思います。

 電子書籍がどのような役割を担うべきかと言われれば、誰もが紙の本を読むような感覚で読めるようになることです。たとえば音楽でいえば、いまはCDを買うよりはダウンロードが主流になりつつあります。そのレベルまで浸透して、ようやく電子書籍時代と言えるのではないでしょうか。

――電子書籍の普及に足りないものは何でしょうか。

 電子書籍は物理的な壁を取り払うには大変便利で、自宅にいながら話題の本を数秒で買えてしまうことが大きな価値と言えます。現状はそれ以外で紙の本より優れているところはあまりないのかなと思います。また、いまだ書籍の数も10~20万というレベルですから、まずはコンテンツを充実させることが最優先かと思います。

 若干矛盾するようですが、コンテンツがそろったからといって本当にわざわざ電子書籍で読みたいかということも重要です。若者を中心に本を読まない人が増えています。その層に対して電子になったからこそ本が読みたくなる状況にしなければなりません。あくまでも例えですがソーシャルリーディングとか、誰かが読んだ本のすばらしいところをお勧めしてくれるとか。そういったこれまでにない価値が求められているのだと思います。

――ビューンは2010年6月のサービス開始から3年が経とうとしています。

  • iPadとiPhoneのいずれでも利用可能

 2010年から約3年サービスを提供してきた中での大きな反省点としては、iPadもiPhoneもひとくくりにしてサービスを提供していたことです。やはりタブレットとスマートフォンは、自動車と自転車のように驚くほど違うということです。今後は、これまでのようにただマルチデバイスに対応するのではなく、より明確にそれぞれの使い方にそったコンテンツを提供する必要があると考えています。

――スマートフォン向けの独自コンテンツも提供していくということでしょうか。

 ビューンでは圧倒的にiPadユーザーが多いんですよ。それは、やはり雑誌がこのサイズに特化して作られているからです。そこで、スマートフォンでも雑誌で読める有益な情報を、もっと片手でサクサク見られるようにすることで、本当の意味で(iPad版と)価値を合わせられるように、雑誌や新聞の有料記事とRSSの無料ニュースが読める「マイビューン」というアプリを4月上旬に提供する予定です。

 既存のRSSリーダーはあくまでも無料のニュースだけなので、それだとビューンの世界観とは少し違います。ですので、世の中でいくら探しても有料でなければ読めない記事を、マイビューンで低価格かつまとめて読めるようにしたいですね。これは簡単なことでありませんが、誰かがやらないといけないと思っています。

――主にiPad向けにはコミック(月額450円)の提供が始まりました。今後もコンテンツの幅を広げていくのでしょうか。

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