電気自動車の新しい形:バッテリー交換ステーションに取り組むS・アガシ氏

文:Michael Kanellos
翻訳校正:吉井美有
2007年11月14日 08時00分

 スワップ・アンド・ゴー。

 これが、元SAP役員であるShai Agassi氏が率いる電気自動車インフラ運動「Project Better Place」の背景にあるビジネスプランだ。このプロジェクトが作ろうとしているステーションは、電気自動車のドライバーがそこに立ち寄り、バッテリーを交換したら、再充電なしで150マイル運転できるという形を目指している。

 この計画は、電気自動車の2つの大きな問題を解決する。充電に要する時間の長さと走行距離の短さだ。Agassi氏によれば、ドライバーはバッテリーを買う必要はない。サービスステーションがバッテリーをリースしてくれて、リース料金は通常のガソリン代とほぼ同水準になるという。これによって、バッテリーの価格という3つめの問題が解決される。

 しかし、このサービスステーションのモデルがうまくいくかどうかは、自動車メーカーとバッテリーメーカーの協力、部品の標準化、政府や公益事業者の協力、そして消費者の電気自動車をほしいと思う気持ちなどに依存する。これらのゴールの一部は、他のものよりも達成が易しい。2008年に最初のステーションがオープンしたら、どうなるかが見えてくるだろう。

 他方、Agassi氏は10月末に、Edgar Bronfman Jr.氏を含む複数の資金提供者からなる2億ドルのプライベートベンチャーキャピタルを発表した。Agassi氏はCNET News.comのインタビューに答えて、同氏の新たなキャリアや温室効果ガスの削減、ボンネットの中身に対する取り組みについて語った。

―何を行おうとしているのか、改めて説明してもらえますか。

 われわれは、石油燃料に依存せず、都市を汚染せず、この惑星の気候を変えない世界を作ろうとしています。今日石油は使い果たされつつあります。居住できるとわかっている唯一の惑星をまったく制御不可能な実験の下に置いてしまっているとわれわれは考えています。

 もしこの事業が正しく遂行されれば、おそらく今世紀最大の経済的なチャンスとなります。燃料には年間6兆ドルから10兆ドルが費やされており、このプロジェクトの出資者たちは、おそらく次世代の個人輸送の始まりとなるこのチャンスに参加することに色めき立っています。

―電気自動車の試みはこれまでにありましたが、結果は芳しくありませんでした。これまでの電気自動車の試みを振り返ると、あるいはこれから出てくるものもありますが、何が主な問題だったのでしょうか。

 わたしの考えでは、車の中身を何とかするだけで問題全体を解決しようとしていたことが根本的な問題でした。それは彼らのビジネスを壊してしまう根本的な要素でした。200回しか充電できなくて1回の充電で70マイルしか走らないバッテリーを使っていたら、経済的に持続可能だとはみなされないでしょう。これがEV1の失敗でした。もしバッテリーの価格が1万ドルで1万4000マイル分の寿命があれば、バッテリーのコストは1マイルあたり70セントになります。

 ガソリン燃料なら1マイルあたり5セントの市場に参入しようとしているのです。1マイル当たり75セントかかるバッテリーなど欲しいと思うわけがありません。運のいいことに、ここ10年で2つのことが起こりました。まず第1に原油価格の高騰です。1バレル当たり10ドルから、今では93ドルになりました。第2に、バッテリーの技術革新です。バッテリー1台で2万マイルではなく20万マイル走れるようになりました。ですから、同じ1万ドルで、以前は1マイル当たり75セントかかっていたものが1マイル当たり5セントになりました。われわれは突然面白い状況に達したのです。以前は高価だった技術が、今ではより健全で安価で、クリーンなソリューションになりました。

―充電の問題にも取り組んでいますね。現在の電気自動車は充電に数時間かかります。あなたは、サービスステーションを作り、そこに立ち寄って使用済みのバッテリーを外し、新しいバッテリーを入れることを提案しています。充電済みの新しいバッテリーをすぐに入手できるわけです。これは、一部の自治体のバスサービスが行っている方式にも共通するものです。

 その通りです。このやり方はミニバスでも見られるものですが、われわれは二重のモデルを提案しています。通常の場合は、停車中や駐車中に充電しておき、その間に人間はしたいことをするのです。夜、家に帰ってきて車を止めたら、夜の間に車がどうなっていようと問題ないですから。

―インフラに関する計画は。

 最初のテストを行うための、世界中の交通の「島」を調べています。われわれはそこに入り込んでインフラを作りますが、このインフラは駐車場や建物の充電スポットと、バッテリーを降ろして充電されたバッテリーと交換できるバッテリー交換所の組み合わせです。われわれのモデルでは、ユーザーはバッテリーを所有している必要はなく、バッテリーを買うこともなく、またバッテリーにお金を払うこともありません。バッテリーはインフラの一部に過ぎず、基本的にガソリンと同じような形で支払いをすることになります。

 われわれが提供するのは、他の人たちには提供できないものです。われわれは、向こう数年間の運転にかかるエネルギーについて、固定料金契約プランを提供することができます。もしサンフランシスコの路上で10人の人に「今後5年間でガソリンの値段は上がると思うか、下がると思うか」と聞いたら、答えは決まっています。

―どこでも、返ってくる答えは「上がる」でしょうね。

 それがポイントです。毎月支払わなくてはならないんですよ。

―最初にテストをする島の候補はあるのですか。

 これまでに15ほどの国と話してきましたが、非常に歓迎されています。まだ国の名前は公表していません。その一部は仮想的な島であり、一部は物理的な島です。例えばハワイは完璧なケースと考えられるでしょう。デンマーク、イスラエル、香港というような場所もあります。世界にはさまざまな場所があります。それらの場所はみな、仮想的な交通の島です。それらの多くは、ある意味では準備はできていて、入っていって網につなげばいいだけです。われわれはテキサスから始める必要はありません。マンハッタンから始めればいいんです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]