追う立場のモバイル市場でどう戦うか:MicrosoftバルマーCEOの戦略 - (page 2)

文:Ina Fried 翻訳校正:吉井美有2007年11月07日 08時00分

―今週発表された管理性や配備の話は、デバイスを買おうとしている人たちだけではなく、どんなデバイスがネットワークに繋がるかという話をしている人たちも含めて、IT関係の人たちに訴えかけたでしょうね。

 携帯電話の大半はIT部門以外が買っています。現在の多くの携帯電話は、消費者の視点で購入されています。事業活動で使いたいという人が増えれば、ITが関係してくるようになるでしょう。

―Windowsの開発チームの著名なエンジニアの1人が、MinWinプロジェクトの概要を紹介しています。これは、Windowsのコアはもっとずっと小さくできるというアイデアです。小さなデバイスでもフルセット版のWindowsは必要でしょうか。あるいは、MinWinのアイデアが役に立つでしょうか。

 現在われわれは、携帯電話用にWindows CEとWindows Mobileという素晴らしいプラットフォームを持っています。われわれは今後もこれを強く推進します。

―モバイル市場を見たとき、最大の競合相手はどこでしょうか。数年前ならば、Nokiaと言ったことだろうと思います。今ならどこでしょう。Googleですか、Appleですか。

 今ならおそらくNokiaではなくSymbianでしょうね。Symbianは確かに重要な競合企業です。それからRIMや潜在的にはGoogleが競合になると誰もがいう企業でしょうが、どうなるかはまだわかりません。というのは、GoogleやApple、RIMは、おそらく何らかの形でソフトウェアが主役になるからこそ際立つ企業だと思うのです。

―Windows Mobile戦略にとってのWindows Live、そしてLive戦略にとってのMobileはどのくらい重要な存在ですか。

 Mobile戦略はLiveとは独立してうまくいくべきですし、Live戦略はMobileとは独立してうまくいくべきです。また、LiveとMobileの組み合わせはもっとうまくいくべきです。難しい注文だと言う人もいるでしょうが、それがわれわれの仕事です。

―競合相手のウェブサービスをWindows Mobileに導入したり、Windows Liveを競合するデバイスに導入したりというふうに、MobileとLiveは互いにそれぞれのパートナーシップに悪影響を与えているようにも見えます。

 ある意味では、こういうことはWindowsでもあったことなのです。OfficeはWindowsにとって重要で、WindowsはOfficeにとって重要で、この2つは一緒になっていた方がよいものでした。しかし、特にOfficeについては、Windows以外のプラットフォーム用の製品があって、ご存じの通りMac用もあります。家族愛が強くても、それぞれは自立できなければなりません。

―モバイル機器についてはWindows Mobileが注目を集めることが多いのですが、Microsoftは音楽プレイヤー市場にZuneも投入しています。AppleのiPod Touchやその他のZune後の動きは、Zuneチームが過去12カ月にもたらしたものよりも多くのイノベーションを起こしているように思えます。Zuneが市場に出るのが少し遅すぎたのでは、というような懸念はありませんか。

 Appleの過去12カ月間の仕事がわれわれの過去12カ月間ぶんよりも大きかったとは思いません。われわれは今後シェアを伸ばし続けます。Zuneを出したのは1年前です。この1年間で、われわれが競争している価格帯では、10%から15%のシェアを獲得しました。他の価格帯でも新しいモデルを出しています。われわれはシェアを伸ばし続けると思います。これは、長期的な問題です。これを放っておいて、Appleに自由にシェアを取らせる状態にしておくということもあり得ました。われわれはある程度革新的なアイデアを導入していると思いますし、市場がわれわれに賛同するかどうかは今後わかってくるでしょう。

―音楽専用プレイヤー市場の競争に参加することが重要なのはなぜですか。

 実際には、音楽専用プレイヤーなどというものはありません。専用プレイヤーの上で動く音楽サービスがあるのです。音楽サービスとエンターテインメントサービスがあります。iPhoneがAppleの音楽サービスを載せているということが、明らかにiPhoneの鍵の1つになっています。わたしはそれが重要な方向性になると考えています。

―Vistaのサービスパックが準備されていますが、その内容が基本的にパッチロールアウトになると言われているために、あまり話題になっていません。これは機会損失ではないでしょうか。Vistaについてはもっと騒がれてもよかったのでは?

 われわれは多くの活動をしています。確かにVistaは、特に消費者市場で非常に人気があります。そして、サービスパックを実際に出荷する時期が、ビジネス市場でもエネルギーや刺激のレベルを上げていくのに適切なタイミングになるでしょう。

―現在のVistaの位置付けに満足していますか?過去数カ月間、Vistaは勢いを増すどころか、特に消費者についてはマインドシェアを失っているのではないかと多くの人が批判しています。

 少なくとも消費者については、そういうことは起こっていません。皮肉なことに、消費者市場では勢いを得てきています。PCの世界には、Vistaを動かせないようなものもあるのは確かです。しかし、現在売れているモデルのPCは、すべてWindows Vistaが動作します。Vistaに対する消費者の興味は高い水準にあります。そして、これは新しいOSを発売した際には普通のことですが、改善を続けてもっと魅力的にしていかなければならない部分があります。

―Microsoftは最近、EUとの最終的な和解について発表しました。この和解は何を意味しているのですか。なぜこんなに時間がかかったのですか。

 和解ではなく、遵守です。われわれは、欧州委員会の2004年決定を完全に遵守することになりました。これはいいことです。われわれはこれまでも遵守しようとしてきたのですが、2004年の決定に関して委員会が設定した問題に対応できたことをうれしく思っています。

 もう1つ決めたことは、欧州裁判所への上訴をやめたことです。上訴の可能性もありましたが、欧州第一審裁判所からかなりはっきりしたシグナルを受け取りました。われわれは自分たちの位置付けを理解し、欧州委員会との関係を建設的なものにしていく必要があります。

―これが業界にとって危険な前例になると思いますか。

 わたしはそういう地政学的な戦略家ではありません。これが他の企業に対してどういう影響を与えるかを憶測するのはやめておきます。これがMicrosoftにとって何を意味するかは理解していると思いますし、前向きに進めていきます。

―最後にもう1つ。Microsoftは現在進んでいるエンタープライズソフトウェアの整理統合には関心はないのですか。OracleはBEA Systemsを買収したいという意向を示しています。彼らはかなり多くの企業を飲み込む戦略をとってきています。エンタープライズソフトウェア製品分野は、Microsoftが買収によって成長する必要のある分野でしょうか。

 ある種の企業の買収は行わないでしょう。ただ、買収自体は続けていきます。大規模な買収を行うかどうかは、まだはっきりしません。Business ObjectやHyperion、Siebelなどの例が出ていますが、すべての場合においてわれわれは調査をし、それを行っていた場合よりも現状の方がいいと判断しています。われわれは現状にきわめて満足しています。

―Oracleの買収による成長戦略についてはどう思いますか。

 わたしは専門家ではありません。うまくいけば、彼らにとって力になるでしょう。これは難しいことですが、大きな決断が大きな意味を持ってくる場合があります。彼らがどういうふうに計画を実行していくか、注意していく必要があるでしょう。

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