YouTube政治討論、子どもの成長、世代内格差―インターネットの関わり方を考える - (page 2)

文:Stefanie Olsen 翻訳校正:吉井美有2007年09月05日 08時00分

―それに対処するためにどのような方法をお考えですか。

 一番うまくいったのは、若い人とおとなが、学校や公的な組織内とは違う形で互いに関係を持つことのできる共有空間を作ったときです。そこでは彼らは互いに気兼ねなく学べます。この種の形式ばらない学びの文化は、わたしがゲームやブログ、Wikipediaなどのオンラインの世界に関して最も興味深いと考えていることです。これらは若い人と大人が、年齢や世代などによる固定された階層ではなく、どんな貢献をし、何を知っているかに基づいて、互いに対等に向き合える空間です。

―そのような環境の例としてどんなものがありますか。

 ハリーポッターの二次創作の世界が、そのよい例でしょう。J.K. Rowlingの著書は若い人にも年老いた人にも刺激を与えており、彼らは単に本を深く読むだけでなく、そのストーリーを豊かな形で書き換え、語り直しています。ホグワーツの世界に基づいた何十万ものオリジナルストーリーがウェブで発表されているのを見ることが出来ますし、コミュニティそのものも互いに書き手として成長するのを助ける責任を引き受けています。

―CNET読者に向けて、「参加ギャップ」の概念と、なぜそれが重要なのかを説明してもらえますか。

 長い間、デジタルデバイドつまりネットワークコンピューティングの技術へのアクセスについて議論されてきました。この問題については劇的に進歩しましたが、その過程で、毎日24時間ブロードバンドのモバイルアクセスがあって新しいメディアへの道が開かれている子どもと、運が良ければ学校や公共図書館で1日10分間アクセスできる子どもでは、依然として基本的な差異が生じていることが明らかになりました。

 研究によれば、オンラインで生活している子どもたちは、オンライン環境で知識が生産され共有されるプロセスを理解している一方、一日10分間しか使っていない子どもたちは、答えを見つければ終わりという態度を取ります。例えば、彼らは企業のウェブサイトを批判したりしません。これは、情報環境を持つものと持たざるものの間にある、社会的なスキルや文化的能力へのアクセスに関する根本的な不平等の一例に過ぎません。

 これが、新しい隠れたカリキュラムの基礎になります。オンライン世界に日常的にアクセスできる環境で育った子どもたちは、取り残された子どもたちと比べて、学校でも人生でもうまくいく別の学び方を持っていると言わざるを得ません。

―では、どうすればよいのですか。

 これには、あらゆるレベルでの介入が必要になります。学校は、オンラインの世界から切り離されてしまっている子どもたちへの対処を密に行わなくてはなりませんし、これには、教室にコンピュータを設置する以上のことが必要です。そのためには、必要なスキルや能力を育てるカリキュラムについて考える必要があります。この問題は非常に大きく、社会のあらゆる部門が何らかの貢献をしなければならないと思います。これが、われわれが産業、教育、政策の分野を横断して活動し、それぞれ何を貢献できるかを創造的に考えてもらおうとしている理由です。

―あなたは、以前自由な子育て方針について書いたことがありますね。インターネットは、ポルノやスパイウェア、広告などの点で危険があると思うのですが、学びの機会はそれらの落とし穴に優るものなのでしょうか。

 現実的な見方をしなければなりません。われわれは恐怖に支配されるのではなく、知識によって行動する必要があります。もちろん、インターネットには悪いことがいくつもありますが、よいことも非常に多いのです。マイナスを恐れてインターネットをロックし、ソーシャルネットワークを禁止したりゲーム技術へのアクセスを禁止したりするのは恥ずかしいことです。電話が悪いことにも使える道具であるのと同じです。

 家を無菌室にし、子どもたちを信用しないのは、子どもとのコミュニケーションを難しくする危険な選択です。わたしの主張したいことのひとつは、子どもたちは自分を肩越しにではなく後ろから見てくれる人を必要としているのだということです。

 MySpaceで子どもを食い物にする人の話も聞くと思いますが、多くの場合、MySpaceは子どもにとって教会のピクニックやボーイスカウトのキャンプよりも危険であるという根拠は、そういった例からは得られません。MySpaceはずっとリスクが小さいかもしれないのです。

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