デザインから見るデジタルプロダクツ--第9回:東芝「gigabeat Uシリーズ」 - (page 3)

インタビュー・文:木村早苗2007年08月09日 19時48分

パッケージにまでこだわった「ジャパニーズビューティ」


--開発期間はどれくらいだったのですか。

広木 1カ月はなかったですね。

秋山 ですから進行も特殊でしたよ。通常は最後にまとめて色の確認をするんだけど、それでは間に合わないので、とにかくできたら持ってきてとお願いしてました。

--では、色が出しにくい製品などは確認が後回しになったりとか?

広木 そうですね。一般的に色が薄い製品、微妙な色合いの製品は色が出しにくいんです。塗装色は塗料を混合して作るので、濃い色の場合は比較的すんなりといくんですが、微妙な色の場合、割合がちょっとずれても違う色のニュアンスになってしまう。ですからどうしても調色回数が増えます。

秋山 実は今回、プラスチック基材も1色ではなくて、白、薄ピンク、グレー、黒の4色を用意しました。色味が少し違った時の調整には塗料だけでなく筐体部品の材料色を変えて対応しています。

広木 通常、筐体部品の材料色は1色でグレーか黒をベースに塗装していくことが多いのですが、さすがに24色のバリエーションは1色で対応することが無理でした。

--「U102」はつやつやとしたメタリックな質感でしたが、今回はマットな質感ですね。この辺りのこだわりはどんなところから?

秋山 「日本の伝統」というイメージの強い、千代紙や障子からインスパイアを受けました。そのイメージを統一するため、パッケージの紙にも和紙風の質感が出るようにすこし凸凹した細工を施しています。パッケージってユーザーが最初に手にする部分なのでこだわりたくて……。

パッケージデザイン gigabeat U103のパッケージ。白地に梅の花を配したカラフルなデザイン

広木 24色のカラーバリエーションと言っても、24個別のパッケージにすることは、量産性の制約上できません。1色のパッケージで24色という多彩なバリエーションのニュアンスを伝え、さらに商品のコンセプトである「日本の伝統色」も感じさせるデザインにしたい。そんな思いから最終的にはカラフルな「梅」のモチーフを選びました。

 梱包される製品色の識別はカラーステッカーで対応しますが、一部でも本体の色が見えるように丸い小窓を開けています。この小窓が梅のつぼみにみえるよう、全体のデザインもこだわったものにしています。

秋山 梅は着物の柄や家紋にもよく使われる、季節に捕らわれずに「日本らしさ」を表現できるモチーフなんです。そのイラストもパーツごとに全部色を変えて、カラバリの多さをアピールしました。だから今回のコンセプトに梅はぴったりなんですよ。

--ちょうどくり抜いた窓部分から本体カラーが見えるようになっているんですね。

秋山 これはこの位置に本体カラーが見えるように、中の製品トレーの位置を調整しているんですよ。パッケージにカラーシールを貼ることで、本体色を認識してもらえるのですが、やはりシールの色味と本体の色味では見え方が異なる。そこで、本体色を見てもらおうと開けたのです。大きさや位置はトレーを出し入れしつつ決めました。前の機種はトレーが正反対の場所にあったので、今回は180度ひっくり返して梱包しています。

--商品はもちろんパッケージや販売方法までコンセプトで統一されている感じがします。

秋山 ある意味チャレンジ製品だけに、パッケージにも新しい試みが実現できて良かったですね。

パッケージデザインアップ くり抜き窓を作り本体の色味とカラーステッカーが見えるようにした(左)。ペーパーには、和紙のような手触り感のあるタイプを採用し和風なイメージをさらに強調した(右)

常に新鮮なデザインを提供していきたい


--デザインをされる時に参考にされる物ってありますか。

秋山 今回は若い女性がメインターゲットでしたから、渋谷や百貨店の化粧品売場にリサーチに行きましたよ(笑)。あとはコンビニの化粧品売場かな。段ボール素材の面白い展示台があったりと工夫があるので面白いんです。

広木 僕の場合は家具やインテリア小物です。「イルムス」とか「マリメッコ」のような北欧のインテリア小物が好きなので、そういったものからインスピレーションを得ることが多いです。もちろんデザインテーマにもよりますが。

プロトタイプデザイン gigabeat Uのデザインプロトタイプ。サイズ感はほぼ同等だが、ラウンドボディやボタンの配置など、あらゆる趣向が凝らされている

--なるほど。では、今後の展開についてお伺いしたいのですが、さらなるカラバリが期待できそうですね。

秋山 そうですね。このシリーズもここで終わりだとは思っていませんし。デザインチームと相談してテーマを定めた上で、企画やアイデアを詰めていきたいですね。

広木 今回は24色に「季節と伝統色」という意味を持たせましたが、今後も多色、多パターン展開する場合は、何らかの意味を持たせることを大切にしたいと思います。

秋山 そう。あと最近はライフサイクルの変化が早いので、デザインもそれについていかなければと思っています。デザイナーさんと設計者さんには苦労をかけるかもしれませんが……(笑)。

広木 流行性の強い製品ですから、常に新鮮なデザインを出していけたらと思います。フラッシュメモリタイプだと容量も少ないですし、いろいろなモデルを楽しんでもらえたらいいですね。

--TPOに合わせて使うことも出来ますしね。

広木 はい。僕らはいつも次に何が起こるかを考えてデザインするようにしています。ユーザーさんも「こんな物があったら」という要望を持たれているはずですから、そういう面も取り入れつつデザインをしていきたいですね。

プロトタイプデザイン こちらもデザインプロトタイプの一部。右端のデザインなどはほぼ現行デザインに近い完成度だ

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