デザインから見るデジタルプロダクツ--第9回:東芝「gigabeat Uシリーズ」 - (page 2)

インタビュー・文:木村早苗2007年08月09日 19時48分

カラバリを驚きに変える24色もの多色展開


--この2つのデザインに絞るまでにも紆余曲折があったのでは?

秋山 ええ、若い女性を集めたユーザー調査もしましたしね。

広木 化粧品のコンパクトぽい物や香水瓶のような物、竹を割った曲線の物、モックアップもずいぶんたくさん作りました。

--最新シリーズでは24色展開ですが、どんな経緯を経て決まったんですか?

秋山 U101シリーズが3月、U102シリーズは5月と、あえて発売時期を2カ月ずらしたんですよ。そうしたら、リリースまでの2カ月間に、女性向けに作った色の容量違いが欲しいという男性ユーザーの意見とか、意外な反応をブログなどで見つけたんです。そこで、彼らが意見交換したり話題にしている時期に次のモデルをリリースしたら面白いんじゃないかという話が出まして。

 発売サイクルを通常より短く設定して、ニューデザインをどんどん打ち出していく。そうすれば「次は何をしてくれるんだろう」とユーザーが予想できたりして楽しいんじゃないかと。そんな背景があって、カラバリを作ることにしたんです。さらに面白さや驚きをより強く与えるなら多色展開しかないだろうと。

デザインの変遷 写真左からgigabeat U101(3月発売)、gigabeat U102(5月発売)、gigabeat U103(7月発売)。ベースのデザインは踏襲しながら、リデザインを繰り返すことで独自の個性が出ているのがわかる

--その色に「日本の伝統色」を選んだ理由は?


秋山 元々日本文化に関わるテーマにしたいという話があって、「春夏秋冬」とか「日本古来の物語」などを考えていました。その時、日本では季節を24分割する「24節気」という暦があると本で読みまして、「24色ってダース感もあっていいな」と思ったんです。

 しかもその季節を表す日本の色名を調べたら、名前にも季節感があってわかりやすい。それでこの色で行くと決めました。ただ在庫管理が大変になるので、理解してもらうために工場には説明に行きましたね。

広木 実際にこれだけのカラーバリエーションを揃えるのは初めてでしたから、作業工程や在庫管理の面からも、gigabeatにとって非常に意義があったと思います。

24色フルラインアップ 24色のフルラインアップ。※クリックすると拡大画像が見られます

筐体の材料色も4色展開、微妙な色合いまで再現する

--塗装でのこだわりを教えてください。

広木 まず「U101」と「U102」という2タイプのデザインから、色が乗る部分が広くてプレーンな「U102」を選びました。その後で24色の色合いを決めていくんですが、色の名前のイメージを壊さないような色味になることを気をつけました。

秋山 それから、カラバリモデル用に図面を微調整してもらいました。全体のイメージは「U102」なんですが、色が最も美しく見えるように、角面や厚みなどの形も改めて考えてもらって……。

広木 そう。色がきれいに見えるような工夫は全部やりました。前モデルで使った金属風のデザインは極力廃して逆に角に丸みをつけるなど、柔らかな色味にあった筐体を採用しました。gigabeatらしさでもあるプラスボタンも、今回はマットシルバーで塗装するなどして、伝統色のカラバリに似合うようにリデザインしています。

--一見すると「U102」のカラバリと捉えがちですが、新デザインでもあるんですね。

広木 ええ。ですがgigabeatに関しては、簡単に印象を変えたり強いインパクトを与えたりできるよう、色変えをつねに意識してデザインしています。今はアルミ基材を前後から挟み込むデザインなんですが、挟むパーツを変えるだけで違う物ができるような仕組みです。だからこそカラバリが作りやすいんです。

U102とU103の比較 U102では角のエッジを見せることにより、シャープなイメージに仕上げている(右)。一方U103ではアールを付けることで、柔らかい色味に似合うデザインにしている(左)

--なるほど。今回のモデルで一番苦労をされた部分というのは?

広木 やっぱり色出しです。今回はカラーイメージのコンセンサスが取れていたことや納期短縮の必要があったので、モックの行程を省略して最初から量産塗料メーカーで色出しをしてもらいました。

 製造ラインで思い通りの色が出ることを念頭に置いたので、通常とはプロセスが異なるのですが、意外とこちらの方が効率的でしたね。

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