現在、唯一のPHSキャリアであるウィルコムが12月14日に発売した「9(nine)」は、ウィルコム SIM STYLEに対応した9番目の音声端末だ。通話・メール・Webブラウザという割り切った機能を体現するかのように、デザインもシンプルで潔い。とはいえ、W-SIMという挿抜可能なPHSモジュールにより、高度化PHS規格W-OAMの「RX420AL」にも対応した優れものなのである。WPCエキスポでもエディターズチョイス賞を受賞したという話題のモデル「9(nine)」について、担当デザイナーとマーケッターから話を聞いた。
堀田 「大人が持ちたい」と思えるデザインの携帯電話を作りたいということが発端でした。そのためには「成熟」「シンプル」などがキーワードになっていますが、これはウィルコムのブランディングにもいえることなんです。通話、メール、Webブラウザとあえて機能を限定したのも、ウィルコムのブランドイメージとユーザーニーズの両方を照らし合わせた結果です。
堀田 そうですね。ここまで突き詰めたシンプルデザインを実現できた背景には、機能別に幅広く端末を揃えるウィルコムならではというか、音声端末という視点でデザインできるSIM STYLEだからこそだと思います。SIM STYLEとは、通話やデータ通信、メールといった携帯電話としての機能を、ウィルコムコアモジュール「W-SIM」側に持たせるもの。これにより端末側の技術開発における負担を軽減させられるといったメリットがあります。さらに規格自体をオープンにしていますので、新規参入メーカーを受け入れやすい。そのため、短いスパンでバラエティに富んだ端末を作り出せます。
田尻 元々は“W-SIM端末として9番目に登場した”という個体番号です。端末のデザインコンセプトがシンプル・ミニマルなので、余計な印象をつけないためにも、個体番号をそのまま製品名にしています。
堀田 “一枚の板から切り取った形”です。角が“.5a(コンマ5アール)”というこだわりも含めて、もう「これがいい!」と言ってくださるユーザーのためだけに作りました。ただ、この“切り取った”感を出すのは金型の制約もあって大変でしたね。物を形のまま押し出した形というのはすごく作りにくい。そのためにどうするかというと、下から上にかけてなだらかな台形にするんです。プリンを容器から抜くことを思い浮かべていただけるとわかりやすいんですが、ある程度台形の形でないと抜けないんです。もちろんコストをかければ、完全な四角を保っても抜けるのだと思いますが、コンシューマープロダクトだけにコストと量産を両立させる必要があります。だから機構設計をご担当いただいたKESの方にはずいぶん無理をお願いしました。
堀田 薄く見えるように、側面のパーティングライン(型と型の合わせ面)を下部に配置して錯視効果を狙っています。それから、各パーツのラインをすべて延長線でつなげることで、精緻な印象を与えるようにしました。これは人間の認知力に負うところが大きいですね。
堀田 「こういうものが欲しい」という自分の思いの方が強かったかな。デザイナーズ携帯が発売された時、スクエアデザインの携帯電話ってたくさん発売されましたよね。そのどれとも違う「私ならここまでやる」というデザインをずっと考えていたんです。その気持ちがW-SIMという受け皿ができてようやく形にできたなと。
独自の多機能通信モジュール「W-SIM」カードを採用したW-SIM STYLEケータイの最新モデル。直線と直角から成る潔いデザインが特長で、多機能化が進む携帯電話製品群において、通話、データ通信、メールと機能自体も大変シンプルだ。本体薄さは11.5mmとスリムボディながら、2インチの液晶モニタ、リチウムイオン電池、W-SIMカードと内蔵する。フルブラウザ「NetFront」の採用、最大204kbpsの高速通信と機能面も充実だ。
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