ゲームの高性能化が開発の負担にはならない--バンダイナムコゲームス

 ゲーム会社の合併がここ数年進んでいる。いち早く合併を果たしたスクウェア・エニックスは、さらに業務用ゲーム機の老舗タイトーを飲み込み、業界の帝王ともいわれたセガはパチンコ、パチスロなどに強いサミーと合併。コナミもパソコンゲームの黎明期を支えたハドソンを買収して成長している。

 そうしたなかでも特に目を引くのが大手玩具メーカーであるバンダイと、業務用ゲーム機時代から高い技術力を誇ったナムコの合併である。2006年3月に新しいゲーム会社として「バンダイナムコゲームス(NBGI)」が発足。互いにかなり異なる分野を得意とする2社は、これからますます厳しくなるゲーム市場でどう戦っていくのだろうか。バンダイの映像制作部門であるバンダイビジュアル出身で、NBGIの副社長に就任した鵜之澤伸氏に話を聞いた。

--まず、現在のゲーム業界をどう見ますか。

 国内家庭用ゲーム機の市場は、1997年前後をピークとして縮退傾向にある。それを埋める形で、携帯電話用ゲームやオンラインゲームの市場が伸びてきています。ゲームの遊ばれ方というのが変わってきているという実感はありますね。

 特に、ニンテンドーDSは今までの家庭用ゲーム機市場の閉塞感を打ち破った感はあります。今DSを引っ張っているソフトというと、「New スーパーマリオブラザーズ」のようなこれまでのヒットシリーズはなくて、「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング」をはじめとしたもの。任天堂はゲームを離れた人を呼び戻すということを宣言して、その通りに市場を誘導できている。

 これらのソフトをゲームといえるのかというと異論があるかもしれないが、ゲーム機を使ったエンターテイメントである以上、我々ゲーム市場のものだと思います。そういった意味では、この業界はまだ明るいといえるでしょう。

 ただ、DSのヒットタイトルのほとんどが任天堂のものです。これに他のソフトメーカーがどうやってついていくのか。当社では「たまごっちのプチプチおみせっち」や「右脳の達人 爽解!まちがいミュージアム」のような製品で、今までになかった層のユーザーを獲得しています。

 一方、据え置き型ゲーム機は今冬「PLAYSTATION 3(PS3)」と「Wii」が発売され、2005年に発売された「Xbox 360」を加えた3つのプラットフォームが今後最低5年間の市場を形成していくと思います。据え置き型市場がどのように推移していくのかはユーザーが決めることなのですが、やはりこの市場は当面メインストリームであると考えます。

--バンダイとナムコ、2つのブランドが1つの会社になって半年がたちました。それぞれのブランドの立ち位置をお聞かせください。

鵜之澤伸氏

 ちょうどゲーム市場の変革期でもあり、バンダイとナムコの良いところ、悪いところを見据え、今まで分かってはいるけど手をつけられなかった部分の改革などができるチャンスだと考えています。そういうことを考えて経営統合したわけではないんですが(笑)

 バンダイとナムコ、それぞれのブランドについては、レコード会社のレーベルのように併存していくでしょう。それぞれのレーベルにいるプロデューサーが持つカラーやポリシーみたいなものがないと面白くない。

 バンダイというレーベルは自社に開発機能を持っていない。いるのはプロデューサーだけなんです。一方ナムコは内部にクリエーターがたくさんいて、その中にディレクターやプロデューサーもいる。結果として、できあがる作品のスタイルが違ってきます。

 バンダイはキャラクターが優先。納期優先で荒っぽいものを作る、というのはなるべく避けていますが(笑)、たとえばテレビアニメを放送しているときに商品が投入できなければ意味がない。それに対してナムコは、オリジナル作品をクオリティを十分に高めて発売する。この両方のアプローチは、どちらがいい悪いということではないと思います。

--ナムコのクリエーターの力を使ってバンダイのキャラクターの作品を作ることは。

 当然あります。具体的な話も進んでいますし、バンダイレーベルのプロデューサーの中に昔ナムコにいた人間が何名か入るなど、人事的な交流も進んでいます。

--レーベルごとにどんな点を強化していきますか。

 ゲームの企画書を見ると明らかなんですが、ナムコの場合はゲームのイメージがしっかりとあるものの、プロモーションプランはほとんどない。一方バンダイでは市場調査や売り方については詳細な企画書が出てくるが、ゲーム自体の企画は薄い。この2つのいいところを取った企画書が出てきてくれれば一番いいんですが。現在では、プレゼンテーションの時に両レーベルの企画者たちが集まって互いの企画書を見ていますから、それぞれ切磋琢磨していくでしょう。

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