「RSSは携帯電話にこそ向いている」--エル・カミノ・リアルの挑戦 - (page 3)

永井美智子(編集部)2006年02月09日 08時00分

--現在はNTTドコモのFOMA 900iシリーズ以上でしか利用できませんが、対応端末を拡大していく計画は。

 当社の戦略としては、FOMA 900iシリーズ以上でパケット定額制を利用している人をターゲットとしています。この層は数は少ないですが、尖っていて影響力がある人たちです。一度気に入るとずっと使ってくれますし、周りの人に「このアプリはいいよ」と勧めてくれる。クチコミを促進させるために、自分の登録したRSSフィードを赤外線を使って送信できる機能も搭載しています。

 パケット定額制を利用しないと通信費がかかりすぎるのでmovaには対応させていませんが、FOMAの700i系に対応するバージョンや、PCからも利用できるウェブ版は考えています。auやボーダフォンについては、公式コンテンツとして認めてもらう必要がありますので、交渉をしているところです。また、ウィルコムに対応して欲しいという要望も多く寄せられています。

 番号ポータビリティの導入までに全キャリアに対応することを目指しています。そうなれば、ユーザーが通信事業者を代えても同じ環境が使えますから。

--海外展開も考えていますか。

 フォントさえ対応できれば海外でもすぐに展開できます。当社が海外に進出する可能性もありますし、海外企業に技術をライセンスすることも考えられます。 ただ、海外の携帯電話ではデータ通信の定額制を導入している事業者が少ないので、そこが課題ですね。

--音声や動画のポッドキャストへの対応はいかがでしょう。

 技術的には可能で、もうデモンストレーションできるところまで来ています。楽曲だけでなく、映像も再生可能です。特にドコモのiモーションであればすぐにでも対応できます。ただ、音声や映像データをすべて自社のサーバに保存して、自社の形式に変換して配信するとなると、膨大なサーバやネットワークのインフラが必要になるので、これでは無料でサービスを提供するのが厳しくなります。

--これまでエル・カミノ・リアルはBtoBの事業モデルでしたが、今後はBtoCモデルに転換するのでしょうか。

 これまでは携帯電話用アプリやバックヤードシステムの設計・開発をしてきました。しかし、自分たちには技術があり、もっと日本のソフトウェア業界を盛り上げるためにもコンシューマー向けを手がけることに意味があると考えました。

 私は海外に通用するものでなければと作りたくないと思っています。これまでのソフトウェア産業は、海外のビジネスモデルを日本に持ち込むケースが多かった。でも、私は逆に、シリコンバレーの人間をうならせたいと思ったんです。

 世界のソフトウェア業界のトップ企業は、ほとんどが米国の企業です。それ以外の国で上位に入れるのはカナダのCorelとドイツのSAPくらいでしょう。でも、トップ企業群に日本企業がいない業界なんてソフトウェア業界くらいだと思いますよ。自動車にしろ家電にしろ食品にしろ、日本企業はトップ集団にいるのに、ソフトウェアだけがいないんです。

 私はソフトウェア業界でも「やっぱり日本製はバグが少なくていいよね」と言わせたいんです。そして、日本からそれだけの企業を出すにはやはり携帯電話業界にチャンスがあると思っています。

--2005年8月にはエイベックスへの第三者割当増資をしています。

 今回エイベックスから出資を受けた理由も、ビジネスモデルをBtoBからBtoCに転換するからです。やはりシリコンバレーの企業をうならすためには、BtoBでは難しい。むしろわれわれの技術をユーザーに使ってもらって、どんどん盛り上げていく必要がある。

--エイベックスとは共同で事業を展開する計画もあるのでしょうか。

 もちろんあります。私はポッドキャスト自体がはやるという考えには懐疑的なんですが、権利のある音楽については魅力があると思っています。ポッドキャストでただ誰かが喋っているだけのものではなく、音楽が試聴できたりすれば魅力的ですよね。

--ECR RSSリーダーを有料化していく計画は。

 有料化はしたくないですね。それよりもより多くの人に使ってもらいたいと思っています。広告収入が基本で、ほかには企業向けのRSSリーダーを提供することも考えています。認証が必要なその企業専用の変換サーバを当社が設置、管理するというものです。セキュリティを高めて、企業でも安心して使ってもらうようにする。証券会社の株価情報の配信などに可能性があると思っています。

 私はGoogleのように、時間をかけてでもユーザーが本当に良いと思うものをつくっていきたいんです。増資をした狙いもそこにあります。Googleも当初は非常にユーザー数が少なくて、資金にも苦労をしていた。けれどもそこで妥協しなかったからこそ、いまのGoogleがあるんです。シリコンバレーでも同じですが、最初の助走期間が長いほどうまくいくと思っています。

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