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IBM研究者が語る「身元分析技術」の現状と可能性

2005/12/22 11:58
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 高校を中退した青年が、後にIBM技術職の最高位である「Distinguished Engineer」になることはめったにない。しかし、同社のEntity Analytics部門チーフサイエンティストのJeff Jonasは、プライバシーを侵すことなく個人情報を分析する方法を開発することで、その数少ない例外となった。

 Jonasが「身元分析(Identity Resolution)」技術を開発したのは20年以上前のことだ。Jonasによれば、このソフトウェアは進化を続け、今では政府機関や企業が保有する情報も分析できるようになっているという。慎重な扱いを要する個人情報も例外ではない。

 Jonasは1983年にSystems Research and Development(SRD)を設立し、企業が不正行為を発見するための支援システムを開発した。その後、ラスベガスに拠点を移し、複数の偽名を使って警察の手を逃れようとする犯罪者の摘発に協力した。

 SRDは米中央情報局(CIA)が設立したベンチャーキャピタルIn-Q-Telの融資を受けて、このソフトウェアを拡張し、諜報機関がSRDの技術を使って情報の断片を結びつけ、テロリストや犯罪者を追跡できるようにした。

 今年1月、IBMはSRDを買収した。SRDのソフトウェアはもっと多くの業界で利用できるというIBMの言葉が、Jonasの心を動かしたのである。

 正しい方法を用いれば、政府や企業はプライバシーを侵害せずに個人情報を収集し、分析することができるとJonasはいう。CNET News.comは先頃、Jonasにインタビューを行い、その理由を聞いた。

--カジノはSRDの初期の顧客の1つでしたが、SRDの技術はどのように利用されていたのですか。

 カジノの仕事は、アイデンティティが時とともにどう変化していくのかを学び、理解する機会となりました。かなり高度な犯罪が起こるようになって久しいですが、ラスベガスはそうした攻撃の格好の標的なのです。人は4つか5つのアイデンティティを作り出すもので、わたしの知人などは30個も名前を持っています。カジノ業界は、取引相手が自分たちの作成したブラックリストに載っている人物かどうかを確かめたいと考えており、SRDは彼らに協力して、そうした相手の素性を調べる手伝いをしたのです。

--すべての偽名を互いに関連づけることができたのですか。

 どんなデータとも合致しない、完全にクリーンなアイデンティティも存在しています。しかし、犯罪者は自分のあらゆるアイデンティティを記憶していなければならず、どうしても矛盾が生じます。それがほかのアイデンティティとの関連性を見抜く糸口となるのです。

--その他の分野では、身元分析技術をどのように応用しましたか。

 ラスベガスでの仕事を終えてからは、「関係分析(Relationship Resolution)」技術と呼ばれている匿名化技術に取り組みました。この技術の対象となるのは、すでにデータを保有している組織です。こうした組織は、自分たちが保有しているデータの意味をより深くくみ取りたいと考えています。

--具体的には。

 例えば、仕入れ先と買掛金担当者のつながりを確認したり、16人の顧客が同一人物かどうかを調べたり、といったことが考えられます。匿名化技術は、データの共有/分析を行う一方で、機密性の高い個人情報の漏洩を懸念する企業に利用されています。

--匿名化技術を用いれば、個人識別が可能な情報を開示することなく、個人情報を分析できるということですか。

 そのとおりです。例を挙げてみましょう。ある金融サービス企業は、ある種の不正行為によって、年間1000万ドルの損失が生じていると考えていました。しかも、この企業が直面している不正行為はこれだけではなかったのです。彼らは顧客、従業員、および把握済みの不正行為の当事者の情報を1つのデータベースに統合し、相互の関係を分析すれば、そうした行為を防いで、損失の総額を1000万ドル程度削減できると考えていました。

 しかし、顧客と従業員の個人情報をまとめてしまうと、システムのハッキングや従業員の不正が発生した場合に、情報を盗まれたり持ち去られたりするおそれがあります。これによって会社のブランドにもたらされるリスクは1000万ドルを上回ると考えられ、データベースの統合は見送られました。

 (匿名化)技術を採用すれば、企業は、法的にもその権利が認められている自社のデータを分析できるようになります。しかもこうした分析は、システムのハッキングや情報の盗難といった、意図的ではない情報漏洩のリスクを回避しながら行えるのです。

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