「音楽配信発のビッグアーティストを生み出したい」--丸山茂雄氏の挑戦 - (page 2)

永井美智子(編集部)2005年09月02日 09時00分

--登録できる楽曲は1度に3曲までとなっていますね。

 ミュージシャンは「まず自分たちの楽曲を聴いて欲しい」といっても、できればプロとして音楽を仕事にしたいと思っている。だからこそ、余計なお世話ですが「メシの種まで全部出すことはないでしょ」と思っているんですよ。

 もちろん本人が希望すれば、何度でも楽曲を登録できます。でも、mF247でまず聴いてもらう仕組みができたんだから、その後の商売は自分たちで考えてやってほしい。人気が出ればどんどんCDを売ってもらえばいいし、1度曲がヒットすればその後はmF247に来なくてもいい。mF247はただ売れるためのきっかけになってくれればいいんです。

--どこで収益をあげていきますか。

 当面は楽曲の登録料とコンピレーションCDの販売が中心です。アクセス数が伸びればサイトへの広告掲載料も見込めます。

 mF247の運営資金は247MUSICの増資で賄います。このモデルでは銀行は資金を貸してくれないでしょうが、「丸さん(丸山氏の愛称)が楽しそうにやるんだったら、資金を出してもいいよ」という心の温かい人がいるから、応援してもらおうと。

 mF247自体で大きく儲かるとは思っていないんですよ。ただ、ここから出てきたミュージシャンを247MUSICでマネジメントしていけば、出資してくれた人にも返していける。私が現役の間にあと1人か2人、みんなが「素晴らしい」というようなミュージシャンをここから出したいですね。

--アップルコンピュータがiTunes Music Storeを日本でも開始したことで(関連記事)、音楽配信サービス市場が大きな注目を集めています。現在の音楽配信市場をどう見ますか。

 私は音楽配信を語る資格がないんですよ。音楽というと、アルバムをビニールの袋から出して、居間にあるプレイヤーで針を落として、みんなで聴いた世代ですから。今の若い人たちのように「iPodに入れる音だけあればいい」とは思えないんです。それこそ、ジャケットの良しあしをみんなで言い合うことまでも含めて音楽の楽しみだと思っているんです。

 確かに楽曲が手軽に買えた方がいいと言われればその通りなんですけどね。ショッピングが楽しいのは自分の目で実物を見て、手で触って買うからでしょう。同じように、私は楽曲のデータだけ持っていても楽しいとは思えないので、実は音楽配信というのはあまり好きじゃないんです。聴きたい曲があったら絶対にCDを買う。それはもう、世代的な差なんだと思います。

 ただ、今はもう手に入らないような古い曲が見つかるなら、音楽配信も悪くないと思いますよ。

 mF247は楽曲のサンプルを手に入れるという感じなんです。本当はここで良いと思う楽曲に出会った人には、実際にCDを買ったり、ライブに行ったりしてもらいたいですね。

 だって、コピーコントロールCD(CCCD)だと音質が落ちるから嫌だといって会社を辞めたミュージシャンだっているんですよ。それなのに、デジタルデータの圧縮した音でいいと思うわけがない。ミュージシャンは絶対に、いい音で聴いて欲しいんですよ。そのために大きいスタジオを借りて、一生懸命いい音を作ろうとしているんですから。

--しかし、mF247では既存の音楽配信サービスにはない新しい試みを盛り込んでいます。

 大手のレコード会社は、インターネットというと音楽を配信することにしか目がいっていない。でも、それだけではインターネットの特性を使い切れていないと思うんですよ。

 (MUSE Associates代表の)梅田望夫さんが産経新聞で「インターネットの真の意味は、不特定多数無限大の人々とのつながりを持つためのコストがほぼゼロになったということである」と書いていました(当該記事を転載した梅田氏のサイト)が、まさにこの通りだと思います。いろいろな人の意見を集積して新しいものを作りだそうというのが、今のインターネットの最大のテーマでしょう。

 また、梅田さんは「不特定多数の意見をどのようなメカニズムで集積すると一部の専門家の意見よりも正しくなるか」とも書いています。私は、「mF247を使って音楽好きの不特定多数の意見を集積すると、一部の専門家の意見よりも正しくなる」と言いたい。

 これまでの音楽業界はまず誰かキーパーソンがいて、その人が音頭を取りながら既存のメディアを使って宣伝することで、世の中を動かそうとしていた。けれど、インターネットは真逆なんです。

 まずある状況があって、そこに対していろいろな人が「賛成」「反対」という、その意見がインターネット上で集積されていくんです。誰かが仕切る世界とは全く違います。

--楽曲の配信だけがすべてではないと。

 音楽業界の人は、新人を見つけてスターにするというのが面白くて音楽ビジネスをやっているんですよね。だから、過去の楽曲を配信してうまくビジネスにして利益を出しても、「おまえ大したもんだ」とは誰も言わないんですよ。

 それよりもとんでもないミュージシャンを発掘して、その人のCDが5万枚売れたほうがずっと尊敬される。そういう意味ではAppleのSteve Jobsとは興味の持ち方が全然違うんです。

 私自身、「インターネットで、なんでこんな新人を掘り出すことができたのか」と言ってもらいたいからmF247をやるんですから。

--最近、ブログ(「丸山茂雄の音楽予報」)を始められましたね。

 知り合いから勧められたのがきっかけです。最近はいろいろな企業の社長が広報活動の一環でブログをつけているし、自分も始めないといけないかな、と思って始めました。

 まず、反応がすぐ返ってくるのが面白いですね。辛口のコメントが届くのもいいし、説明会で話した内容がきちんと伝わっていないことが分かるのもいい勉強になります。

--ほとんど毎日更新されています。

 周りの人の協力を得て続いています。実は、タイプが遅いので、口述筆記をしてもらっているんですよ(笑)。自分が喋った内容を妻や息子に書き起こしてもらって、その文章を見ながら修正を加えた上でブログに公開しています。

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