マイクロソフトのオープンソース論 - (page 2)

Eileen Yu (ZDNet Asia)2005年07月28日 18時54分

--しかし、ソフトウェア特許はソフトウェア開発を妨害しているという批判もあります。Microsoftの開発者も、他社の特許を侵害する不安を感じているのではありませんか。

 ソフトウェアの観点からいえば、われわれは現在の特許制度が完璧だとは思っていません。ソフトウェア開発の可能性を広げるために、米国の特許法の見直しを求める提案を提出したこともあります。今の状態がベストだとは思いません。特許に関する問題や、特許制度を改善するための施策については、完璧ではないながらも、積極的に意見を述べてきました。

 しかし、現在のソフトウェア業界を見渡すと、革新的な技術の多くはMicrosoft、IBM、Oracle、Adobeといったソフトウェアメーカーから生まれていることが分かります。これらの企業は特許に守られながら、重要で、刺激的で、革新的な技術を開発してきました。特許は企業が自社の技術を守り、その技術から何らかの方法で利益を上げ、その技術を次の革新につなげることを可能にするものです。私はユニークなアイディアの製品化、流通、応用を可能にする特許の概念を、非常に面白いものだと考えています。

 特許と革新を哲学的な観点から論じることは重要ですし、有意義なことでもあります。あるときは革新を保護し、あるときは促進する--特許には明らかに、この2つの利点があります。過去を見ても、ソフトウェア業界に特許が導入され、多くの国で実施されるようになってから(の約10年で)、数多くの革新が生まれています。

--Microsoftでは、あなたはどのような革新に取り組んでいるのですか。

 画期的なものもあれば、ごく基本的なものもあります。Microsoftは研究開発に約68億ドルを投じており、対象となる分野も多岐にわたっています。

 そのひとつは、既存の機能を調整あるいは洗練することで、プロセスを簡略化/効率化する研究です。たとえば、「Configure Your Server Wizard」という機能があります。これはサーバの役割を簡単に変更できるようにするもので、ファイルサーバをメディアサーバに再構築するといったことが可能となります。ユーザー側の作業としては、GUI(graphic user interface)画面を4、5回クリックするだけ。サーバのサイズにもよりますが、所用時間は15〜20分程度です。UnixとLinuxのプログラム経験しかない社員によれば、同じことをLinuxでしようと思ったら、大変な時間と手間がかかるそうです。

 このように、当社の技術革新の多くは複雑なタスクを簡略化し、より簡単かつ迅速にタスクを遂行することを目指すものとなっています。

 一方、当社は従来のやり方をがらりと変えるような新技術の開発にも継続的に取り組んでいます。その一例が、VPN(virtual private network)プロセスやスマートカードを利用せず、Exchangeサーバに直接HTTPプロトコルでトンネリングを行うツールです。このツールは、少なくとも私にとっては、時間を大幅に節約するものとなります。この機能はWindowsの次期バージョンに搭載される予定です。

 今後もユーザーの行動に注目することで、時間のかかるプロセスを簡略化する方法を模索していくつもりです。

--LinuxがMicrosoft製品よりも安全だというつもりはありませんが、セキュリティの面で、Microsoftが厳しい立場に立たされてきたことは否めません。これはソフトウェアに求められる基準が、以前は甘かったためなのでしょうか。

 なぜ今日、セキュリティの問題が生じているのかを考える必要があります。ひとつの理由は、MicrosoftがWindowsの一部を設計したときと比べると、はるかに多くのものが相互に接続されるようになったことです。これはLinuxの方が安全だという主張を、私が一蹴するひとつの理由でもあります。10年前には、バッファーオーバーラン、ポート80、I/Oに関する問題は十分に理解されていませんでした。

 バッファーオーバーランを例にとりましょう。8年から10年前のソフトウェア開発では、あることをするためにどの程度のバッファースペースが必要かは分かっていませんでした。そのため、何が起きても大丈夫なように、あらかじめ大きなバッファーゾーンを用意しました。この空間を悪用して、悪さをする人間がいるとは誰も思っていなかったのです。

 セキュリティの仕事に終わりがないのはこのためです。われわれが今、10年前には知られていなかったことへの対処に追われているように、10年後の人々は、今日では知られていないことへの対処に追われることになるでしょう。現在、Microsoftはこの問題に効果的に対処し、問題を事前に察知するためのプロセス作りに取り組んでいます。

--あなたは以前、一部の人がMicrosoftに「反感」を持つようになったのは、Microsoftにも一因があると述べました。Microsoftがすべきではなかった「間違い」とは何ですか。

 顧客の声に耳を傾け、顧客に寄り添う努力を続けることは、企業としての当然の務めです。そのなかでも、特に顧客の経験を大幅に改善すること--顧客がより簡単に当社の技術を利用し、当社と連携できるようにすることが重要だと考えています。

 私はライセンスがそのためのひとつの手段になると考えています。2、3年前の当社のライセンス制度は、十分に効率的なものではなかったかもしれません。われわれは顧客と共に「Software Assurance」の改善に取り組み、大きな成果を上げました。しかし、この問題のために、当社は市場で多少の痛みを経験することになりました。

--顧客の声を無視することよりも、競合他社を過小評価することの方が問題だとは思いませんか。

 これからも、顧客の声には耳を傾けていくつもりです。そうと決めたら徹底的に実行し、具体的な成果を出すのがMicrosoftのよいところです。

では、競争に関してはどうでしょうか。たとえば、現在では、Microsoftにはできないが、Linuxにはできることのなかで、革新的と呼ぶべきものはありません。Microsoftにはないが、Linuxにはある新しい機能や設計もありません。ですから、私は技術革新の面で、当社がLinuxやその他のオープンソースプロジェクトに後れを取る心配はあまりないと考えています。

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