それから、ロボットは用途に応じて大きく以下の5つに分けられます。
(1)から(5)のうち、(1)に近いほど強いニーズがあり、一般的にイメージしやすいものになりますが、製品化は難しくなります。例えば(1)の作業ロボットは、掃除ロボットや芝刈りロボットなどが実用化されていますが、まだ人が求める性能には届きません。(2)のセキュリティ用途は、カメラとセンサーがネットワークにつながっていれば十分用が足りてしまうので、ロボットが入りこむ余地がありません。価格に見合うほどの価値をロボットがまだ提供できないのです。
(3)のコミュニケーションロボットの場合、人がロボットに対して、人間と同じレベルで会話できることを求めてしまいます。つまり、要求水準が高くなりすぎるのです。会話パターンの限られた状況で使う分には問題ありませんが、それでは飽きられてしまいます。
(4)の情報提供ロボットは使い道としてはわかりやすいのですが、ロボットでなくてもPCやPDAで事足ります。ロボットならではの移動機能がついたとしても、それでどういったメリットが生まれるかは不明です。
これらの4つの形態はいずれも、ユーザーのニーズが明確なほど、そのニーズが満たされない限り売れない。つまり、購入までのハードルが高いんです。これに対して、5番目のエンタテインメントロボットは、 人の感性に訴えることで「購入したい」と思わせるものです。 そこで、ZMPではまずこのエンタテインメントロボットからスタートしました。今後はメールの読み上げのような情報系の機能を提供し、最終的には作業やセキュリティの分野まで担えるロボットを開発したいと考えています。
--nuvoの場合、価格が58万円とやや高いですね。
ロボットを普及させるためには価格を抑える必要があると考え、ZMPを創業した2001年の後半に「ロボットをノートPC並みにする」という目標を立てました。数字で言うと、重さは2〜2.5kgで、価格は20〜30万円にするということです。結果的に重さは2.5kgとほぼ目標通りになりましたが、価格は目標には届きませんでした。
--どういった部分にコストがかかっていますか。
すべての部品やボード、金型などを自社で設計した点です。小型化にこだわったので、高集積化を進めるためにあらゆるパーツを自社で開発する必要がありました。例えばnuvoのマザーボードは10層基板で、nuvoのためだけに作っています。ただし、数万個の量産体制が整えば低価格化できますので、数年後には1台30万円程度で販売できると思います。
価格を少しでも下げるために、さまざまな工夫をしています。たとえば、nuvoには指や肘の関節がありません。また、頭は肩の真上にはついていません。ロボットを開発する人間には既成概念があって、「人型ロボットには肘の関節がないといけない」とか、「頭は体の上にきちんと載っていないといけない」と思い込みがちです。nuvoでこれらの要素をなくすのは勇気が要りましたが、そうでないとこの価格は実現できませんでした。
搭載する機能も、基礎的なものに絞りました。開発しているとありとあらゆる機能を搭載したくなりますが、パーツが増えて体が大きくなるし、価格も上がってしまいます。nuvoでは歩行などの移動機能、動作などの表現機能、音声認識やネットワークを通じた簡単操作機能に特化しました。
--人工知能についてはどうでしょう。
この大きさのロボットに人工知能を搭載するのはまだ難しいんです。知能はロボットに搭載するのではなく、インターネット上に持っていればいい。つまり、サーバで処理を行って、ネットワークを通じて結果をロボットに送信するということです。
--通信機能は、2004年3月に発表したプロトタイプではNTTドコモのFOMAを利用していましたが、今回は無線LANになりましたね。
どの通信事業者のどの端末でも操作できるようにしたかったんです。FOMAを利用するとユーザーはFOMAカードを買う必要がありますし、テレビ電話を使うと利用時間に応じた課金になってしまうので、ユーザーのコスト負担が大きいと考えました。今はnuvo自体にIPアドレスが割り振られているので、インターネットからそこに接続して操作してもらうようになります。
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