「アイデア工場」の実現に挑戦するマイクロソフト元CTO - (page 2)

Michael Kanellos(CNET News.com)2005年05月24日 09時00分

 製品に関する新しいアイデアを思いついた人は、チームを集め、ベンチャーキャピタルが集まるSand Hill Roadに行き、そこで調達した資金をもとに、会社を立ち上げるのが一般的です。そこで私はこう考えました。「まだ誰もやっていないことをしよう。優れたアイデアを発見したら、それを具体化できる人々を探し、ライセンス事業を展開するか、新規事業を興すか、新しい会社を設立しよう」。もちろん、具体的な選択肢は個々のアイデアや状況によって異なります。

 われわれが目指しているのは、まだ次のアイデアを思いついていない発明家に接触し、こう持ちかけることです。「あなたは過去に、数々の興味深い発明を行ってきました。われわれは次のアイデアが生まれる前から、あなたをサポートします。意見を交換しながら、共に新しいアイデアを生み出していきましょう」

--Intellectual Venturesにはどんな人々が参加しているのですか。

 常勤の発明家も何人かいますが、主要な発明家の大半は非常勤です。彼らの多くは教授、コンサルタントなど、別の仕事を持っています。すでに引退している人もいます。企業に属している発明家の場合は、その企業に頭脳を売っていることになりますから、われわれのところで発明に参加してもらうことはできません。

--メンバーを紹介してください。

 まずはEdward Jungと私。どちらもMicrosoftのOBです。ほかにも多くの仲間がいます。DNAシークエンサーなど、バイオテクノロジー分野で数々の発明を成し遂げたLeroy Hoodはそのひとりです。彼は自分でもInstitute for Systems Biologyという研究所を立ち上げていますが、われわれと共に発明に取り組んでいます。

--Hoodほどの人物なら、Sand Hill Roadに行けば、資金を調達できるのではありませんか。

 そうです。実際のところ、当社に参加している発明家の多くは、自分でも企業を立ち上げ、成功させた経験を持っています。しかし皮肉なことに、そうした人ほど、われわれと契約する可能性が高い。その苦労を身をもって知っているからです。5年間は拘束されることになりますからね。

 発明の才に恵まれた人々には、こう言うことにしています。「われわれと組めば、あなたにある程度の利権を提供しましょう。その上で、あなたのアイデアを企業にライセンスします。最終的にあなたの懐に入る利益は、第2のCiscoの創業者となった場合よりは少ないでしょうが、5年の年月を費やす必要もありません。つまり、個々の事業から得られる利益は大幅に減っても、生涯に生み出すことのできるアイデアは大幅に増え、人生を有意義に使うことができるのです」。つまり、何を犠牲にするかの違いなのです。

--発明が生まれないために、成長が滞っている分野、または発明の機が熟していると思われる分野にはどのようなものがありますか。あなたが注目している分野を教えてください。

 当社の活動分野は多岐にわたっていますが、特に重点を置いているのは通信、IT、そしてバイオテクノロジーです。バイオテクノロジーといっても、新分子の領域には踏み込んでいません。ほとんどはツールや生物医学用機器に関するもの、つまりコンピューティングとバイオテクノロジー、またはコンピューティングと医学の領域をつなぐものです。

--バイオテクノロジーのIT的な側面ということでしょうか。

 その通りです。ITに直接関連したものもあります。エレクトロニクスと固体物理学の分野でも、さまざまな活動を行ってきました。ナノエレクトロニクス、フォトニックバンドギャップ(PBG)材料などは、そのよい例です。われわれはまだ十分に開発されていないと思われる分野に着目しました。これは2つのカテゴリに分類することができます。ひとつは2つの異なる専門領域を結びつけるもの。バイオテクノロジーの世界にも、コンピュータサイエンスの世界にも優れた専門家はいます。しかし、世間はわれわれが思っているよりもずっと、両者を協働させることが苦手なようです。

 もうひとつは、5年スパンで事業に取り組むことです。どの企業も、技術プロジェクトには数カ月から3年しかかけていません。企業が3年を超えることを前提とした仕事を社員に与えることは稀です。ここで「前提」という言葉を使ったのは、製品開発計画は意図せずして伸びることがあるからです。計画通りにことが運ばないために、3年を超える可能性はあります。

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