ところで、リアルCEOの言い分も聞いてみよう

John Borland(CNET News.com)2004年08月26日 10時00分

 RealNetworksのRob Glaserは、ネット企業のCEOとしては息の長い部類に入る。それは思わぬときに帽子からうさぎを取り出して、ライバルをあっといわせる特技を持っているからかもしれない。

 Glaserは数週間前、最新の「隠し球」を披露した。Apple Computer独自のDRM(デジタル著作権管理)技術を再現する方法を--しかも、Appleの許可を得ることなく--解明したと発表したのだ。「Harmony」というこのソフトウェアによって、RealNetworksはAppleのデジタル音楽ストア「iTunes」以外でははじめて、大ヒット中の音楽プレイヤー「iPod」で再生できる音楽ファイルを販売できるようになった。

 当然、Appleはおもしろくない。同社はRealNetworksに対して、法的手段に訴えることも辞さない構えを見せ、また同社が手に入れたiPodとの互換性を無効にすると脅しをかけたが、しかしGlaserにはひるむ様子も見られない。

 Glaserは、デジタル音楽業界が進むべき道は1つしかないという。それはCDと同じように、ユーザーが曲を購入し、それをどのプレイヤーでも再生できるようにすることだ。しかし、現実には市場は分断され、あるサイトで購入した曲は特定ブランドのプレイヤーでしか再生できない。そして、こうした状況はおかしいとGlaserは主張する。

 RealNetworksは先ごろ、「選択の自由」をスローガンに掲げたマーケティングキャンペーンを開始した。この呼びかけは今のところ、同社の売上を拡大するまでには至っていない。しかし、同社のオンラインストアでHarmonyの普及を狙った半額セールが始まったことを考えると、いまの状況が変わる可能性もある。

 News.comは16日(米国時間)の晩にGlaserにインタビューを行い、デジタル音楽業界を揺るがせた今回の発表について、またApple最高経営責任者(CEO)Steve Jobsとの関係について話を聞いた。

--Harmonyプロジェクトの状況は期待通りですか。

 期待通りどころか、期待を吹き飛ばすほどです。Harmonyを実装しようと決めたのは今年の初めでした。この技術は当社が過去に取り組んだ開発の成果が基盤となっています。われわれにはテクノロジーの互換性に関するノウハウが豊富にあるのです。

--Microsoftのテクノロジーに対応したストリーミングメディアサーバを開発したおかげですね。

 その通りです。われわれはWindows Mediaをはじめ、主要なフォーマットのすべてに対応するユニバーサルサーバを開発しました。市場の反応は上々でしたし、技術開発の面でも、互換性を実現する方法を学ぶことができました。同様のことはCompaqも過去にしていますし、Microsoftですら、それに近いことをしています。

 問題の芽を察知したわれわれは、フォーマット戦争に飛び込むのではなく、この争いを超越しようと考えました。動作の安定性や使い勝手の面で、いくつかの技術的課題はありましたが、技術部門がすばらしい仕事をしてくれたおかげで、思っていた以上にスムーズで、高速で、使い勝手のよいソフトウェアを開発することができました。

 Harmonyを発表するにあたっては、ユーザーに受け入れられるという確信はありました。しかし、このソフトウェアの意義を説明するのは容易ではありません。ご存じの通り、iPodでも、Rioでも、Palmでも音楽を聞くことはできます。しかし、自分が購入した曲をすべてのプレイヤーで再生することはできない。これがなぜ問題なのかを説明すると、多くのユーザーが理解してくれました。

 Harmony発表の2日後にAppleが見せた反応は、私にはややヒステリックなものに思えましたが、そのおかげでこの問題にさらなる注目が集まり、ユーザーの意識を喚起することができました。

 私の友人に、ユーモア作家のAl Frankenがいます。彼の著作「A Fair and Balanced Look at the Right(右派に関する公正でバランスの取れた考察)」を読むと、Bill O'Reilly(強硬発言で知られる保守派のトーク番組司会者)の姿が、Apple Computerに重なってしまいます。

--今年の4月、FairPlayとiPodのライセンス交渉をJobsに打診しましたね。このときにはすでに、Harmonyの開発を進めていたのですか。

 その通りです。必要な技術はそろっていたので、いいものができると確信していました。しかし、開発はまだ途中の段階で、ユーザーインターフェースも完全ではなく、最終的な微調整などもまだでした。しかし、計画そのものは順調に進んでいました--SteveがBill O'Reillyのような態度でわれわれに応じることを決めたのは、まさにこのときです。

 あの時点では、われわれもかなり慎重でした。「なぜ、Jobsにそんな申し入れをしたのか?」と聞かれると、「互換性や相互接続性が重要だからだ」と答えました。また、「Jobsはノーといっているが、次の手は?」と聞かれれば、「当社はソフトウェア企業だから、ソフトウェアの強化を続ける」と答えました。

 難局に当たるときは、必ず2つの計画を用意しておくべきです。今回は特にそれを痛感しました。

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