インテルCEOがIT業界にモノ申す

Michael Kanellos and John G. Spooner (CNET News.com)2004年06月10日 10時00分

 インテルCEO Craig Barrettが心底楽しめることが1つあるとすれば、それは自分への批判が間違っていたことを証明することだ。

 3年前、ウォールストリートは、Intelの過剰な設備投資に批判的だった。しかし、元スタンフォード大学工学部教授で1998年3月にIntelのCEOに就任したBarrettは、自分のプランを頑として変えなかった。そして、この投資のおかげで、Intelは景気が上向き始めた時には、ノートPCやサーバ向けの新しいチップを量産できる状態になっていたことから、結局は同氏のほうが正しかったと証明された。

 1970年年代からIntelで働いているBarrettは、同社の歴史上で最良と最悪の両方の時期を、同社を率いる立場で経験した。1990年代後半の急成長時代には、Intelは四半期ごとに売上記録を更新していた。

 しかしその後、ドットコムバブルがはじけて景気が後退すると、IT業界の他社と同じく、Intelも苦しい時代を迎えることになった。同社は、赤字を続ける新規事業から撤退せざるを得なくなったが、そのなかにはデジタルカメラなどIntelブランドを冠した消費者向け製品の製造もあった。

 Barrettはそれ以来、Intelを新しい分野へと導いてきた。デジタル家電向けのチップ開発もその1つだ。その他にも同社は、今後登場してくるデスクトップおよびノートPC向けに、従来のシングルコアチップよりはるかに高いパフォーマンスを実現するデュアルコアプロセッサの開発にも乗り出している。

 Barrettは、あと1年ほどで後継者の最有力候補である現社長のPaul OtelliniにCEOの座を譲る予定だが、まだまだ意気盛んでとてもそんな風には見えない。真のシリコンバレーエリートであるBarrettは、昨今問題になっている海外へのアウトソーシングや米国の競争力低下の危機に関して、極めてはっきりものを言うことでも注目を集めている。同氏は先ごろCNET News.comのインタビューに答え、業界内の企業連合の愚かさから、主張に一貫性のない政治家の無責任さに至るまで、胸の内を語った。

---世界中を旅していらっしゃいますが、技術の採用という点で、米国は他の国々に比べてどうでしょうか。

 米国はあらゆる点で自己満足に浸っています。自国の経済発展のプラットフォームに対する自己満足、社会基盤となるプラットフォームに対する自己満足、そして研究開発の促進という問題全体に対する自己満足。教育でも、社会基盤でも研究開発でも、どれをとっても米国は自己満足に浸っています。

 その証拠に、海外へのアウトソーシングに関してマスコミでは大きな論争が起こっていますが、マスコミは一般に、競争力を付ける必要があるという点を正面きって取り上げません。これは、政治家も同じです。しかし現実には、インフラや教育システムの悲惨な側面を見るにつけ、米国は大きく遅れを取っていることが分かります。ワシントンD.C.の政治家たちと、教育、インフラ、研究開発の3つの観点から競争力について議論しようとしても、まず無理です。

---政治家にそういう話をすると、どのような反応が返ってきますか。

 今すぐ片づけなければならないことが他にあると。

---ITビジネスの話に戻しましょう。今後、PCのアップグレードサイクルは短くなると思いますか。

 アップグレードサイクルは、おそらく分散する方向に向かうでしょう。つまり、一時期に何もかもまとめてアップグレードするということはなくなるとしても、米国のユーザーはPCをアップグレードし続けると思います。また、新興国での消費量の伸びは米国よりもはるかに大きくなっています。この傾向は今後も続くでしょう。

---マイクロソフトが次期オペレーティングシステム(OS)のリリースを延期したことについてはどうでしょう。

それはマイクロソフトに聞いてください。もちろん次期OSはリリースして欲しいですが、それが遅れたからといって、Intelの開発スピードが遅くなるようなことはありません。

---顧客が一番偉いという考え方をめぐっては、以前よりたくさんの会話や対話が交わされるようになっています。ここ半年か1年間と、それ以前の20年間では、具体的に何が違っているのでしょうか。

 自社の製品を使ってくれるのは顧客だという見方をすれば、顧客が一番偉いことになります。その場合、自社の製品を顧客が喜んでくれるかもしれませんし、そうならないかもしれません。そこで、まわりを見回して「この技術を応用できる、何か非常にすばらしい目的はないか」ということになります。ここで重要なのは、そのアプリケーションが、作る側にとってすばらしいのか、それとも使う側の顧客にとって素晴らしいのかを見落としてはならないということです。

 1990年代半ばには、IntelはProShareというビデオ会議システムが面白いと考え、ユーザー側でも同じように感じるだろうと思っていました。しかしわれわれは、ユーザーの意見に耳を傾けることを忘れていました。ところが今日では、ユーザーは自分が何に興味を持っているかをとても声高に教えてくれますし、しかも反応が非常に素早い。これは、決してここ半年か1年の間に起こったことではありません。そうではなく、技術中心からユーザー中心へとわれわれが方向転換していく中で徐々に気付いてきたことです。

---HPやIBMのような企業では、顧客が各製品に相互運用性を要求しているからという理由で、ユーティリティコンピューティングとかアダプティブコンピューティングとか、そういったものを売り込もうとしています。そのことがお聞きしたかったのですが。

 おそらく不況のせいで、いつにも増して顧客の意見に敏感に耳を傾けるようになった、ということでしょう。

---Intelは、これまでのクロックスピード重視から、処理性能全体の向上を重視する方向へと、方針を転換しているようですね。今後もこの方向でいくのでしょうか。

 われわれは以前から処理性能を重視していました。ただし、それを高める方法はいろいろあるということです。より高速なトランジスタや処理性能の向上に対する興味を失ったわけではありません。われわれは今後、いろいろな技術やテクニックを使って、処理性能を上げていくことになるでしょう。

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