「1年で損益分岐点に達する」---エキサイトの音楽配信のねらい - (page 3)

永井美智子(CNET Japan編集部)2004年05月25日 10時00分

---音楽業界では、Winnyなどを利用した音楽ファイルの不正流通が問題になっていますね。

 Music StoreではPtoPでのファイル交換ができない仕組みを採っています。我々はディストリビュータですから、レーベルや著作権者などコンテンツホルダーの権利を保護し、彼らにメリットがあるものしか提供するつもりはありません。

 「不正コピーによって(音楽配信)市場が拡大するんだ」という人もいますが、それで音楽市場が縮小しては話にならない。あくまでも現状のマーケットをさらに拡大するというのが目的です。今後PtoP技術がどのようになっていくのかはわかりませんが、少なくともMusic Storeにそういった機能を付けるつもりはありません。

---Winnyの開発者が逮捕された件についてはどう見ていますか。

 いろいろな議論があると思います。まだインターネット上の法律が整理されていないので、一概には言えません。ただ、(昨年9月に施行された)出会い系サイト規制法のように、犯罪を助長するようなことは極力防いでいこうという動きがあるのは事実で、その中の一環だとは思っています。

 便利なものは使い方によって凶器に変わります。モラルを持って利用してもらうというのはなかなか難しいことです。そう考えると、法律がちょっと厳しすぎるというくらいでちょうど良いのかもしれません。

---音楽配信についても何か法律が必要だと。

 法律ができていくべきだと思います。外郭団体のようなものができて、自らルールを決めていくことも必要でしょうね。

---今後の課題は。

 音楽配信サービスのメリットをレーベルに対して打ち出すためには、音楽市場全体を伸ばす必要があります。市場規模が変わらずに、全体の数%が音楽配信に置き換わったのは意味がない。音楽配信によって一部のCDの売上が落ちたとしても、それ以上に市場が広がり、全体としてレーベルの収入が増えていくという形にならないと、二の足を踏むレーベルや著作権者が出てくる。その辺りが鍵だと思います。

 レーベル各社はまだ、(音楽配信に関して)対応を検討している段階です。企業によって温度差はあります。インターネットが登場したときに「雑誌が売れなくなる」と言われたように、音楽配信によってCDが売れなくなるという極端な議論もあります。そうではなく、新しいメディアによってマーケットが広がるということを実証していけば、もっといい形で進んでいくと思います。

---エキサイトは昨年、上場に関する報道がありました。その後どうなりましたか。

 2004年3月期の決算をもって、今年度中に上場する予定です。

---具体的にはいつ頃、どの証券市場に上場するのですか。

 今はまだ決定していません。我々が決めることではないのでコメントできません。

---わかりました。では、上場によって調達した資金の使い道を教えて下さい。

 貯金します(笑)。実際、やりたいことはたくさんありますから。ウェブコンテンツの拡充や携帯コンテンツの強化もしたいですし、マーケティングも積極的に行いたい。海外展開もしたい。使い道はいくらでもあります。

---海外展開というと、米国への逆上陸ですか。(編集部注:エキサイトの親会社であった米Excite@Homeは2001年に破産。これによりエキサイトの筆頭株主は伊藤忠商事に移った)

 それもしたいですね。真剣にExcite.comを買い戻したいと思います。ただ、最初は中国を中心としたアジアに広げていきたいと思っています。

 特に中国の携帯電話市場はかなり大きな市場だと思っています。我々はアジア全域でのブランド使用権を持っていますから、これを活用しない手はない。今からインターネット上でエキサイトのブランドを使っていくのか、M&Aによって中国市場に参入するのか。それはキャッシュの状況などを見て判断します。

 エキサイトは国内で10種類弱の携帯コンテンツを提供しています。こういったものを海外に持って行くのが一番早いやり方だと思います。

---中国の事業者と組むとしたら、どういった企業が候補となりますか。

 中国のICP(インターネットコンテンツプロバイダ)免許を持つ、公式コンテンツの認定を受けた企業でしょうね。日本のコンテンツで中国で受け入れられるもの、漫画(のキャラクタ)や音楽といったものを提供したいと思います。

 韓国ではすでに日本の音楽を使ったリングバックトーン(呼び出し中の音を好みの音楽に変えられるサービス)を提供しています。韓国で日本の楽曲が解禁されたのをきっかけに、今年から提供を始めました。中国も年内に2つほどサービスを提供できると思います。

---将来的に、海外の売上比率はどの程度まで伸ばしていくつもりですか。

 10%くらいにはしたいと思っています。ただし、中国はまだ(携帯電話の)インフラが整備されていない部分がありますので、本格展開は来年以降になるでしょう。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]