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テクノロジーは中東に平和をもたらすか

2003/08/07 10:00
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 元イスラエル首相Shimon Peresは筋金入りの楽観主義者だ。解決の糸口の見えないイスラエル・パレスチナ紛争を収束させようとする人物にとって、多分それは正しい心構えなのだろう。3年間続く紛争の先にも出口はある、とPeresは語る。

 「経済と政治は共生関係にある」と1994年のノーベル平和賞の共同受賞者でもあるPeresは言う。そして、テクノロジーの再生が、この地域の行き詰まりを打破するのに大いに役立つと主張する。

 Peresは、イスラエルにおけるハイテク分野の発展に中心的役割を果たしてきた。イスラエルのハイテク関連輸出額は1991年の30億ドルから大きく伸びて昨年には約120億ドルとなり、イスラエルはインド、中国、台湾に並ぶテクノロジー育成の場としての地位を確立した。

 例えば、インスタントメッセージの草分けであるICQ、セキュリティソフトウェアメーカーのCheckPointなど、多くのイスラエル企業が富と名声を手にしている。Microsoftはイスラエルに同社最初の国外研究開発施設を設立しているし、Ciscoの唯一の国外研究開発施設もイスラエルにある。

 パレスチナ人による第二次インティファーダ(対イスラエル抵抗運動)の勃発以来、イスラエルの産業は急激に落ち込んだ。一時はにわか景気に沸いたテクノロジー産業も例外ではない。イスラエルの国内総生産(GDP)は昨年2.4%下落し、失業率も11%前後で浮き沈みを繰り返している。しかしPeresは、強い経済統合と協調が進めば共通の利害に基づく同盟関係が生まれ、最終的には政治的な違いにも打ち勝つ切り札になるという信念を曲げていない。

 技術的な協力関係が他の分野での協調を刺激することになるのか、それは依然として分からない。しかし、83歳にしていまだ活力のみなぎる老練政治家のPeresは、世の中の常識に挑戦をつきつけることでその経歴を築いてきた。PeresはCNET.News.comのインタビューに答え、イスラエルとパレスチナの和平締結のチャンスが再び生まれる中、テクノロジーが新たな重要性を持つようになると語る。

---経済が政治的変化の原動力になり得るか、それとも政治が経済的変化をもたらすのかという点については、昔から議論されています。テクノロジーの発展が、中東地域で長年続いた政治問題に解決の糸口を与えると考えるのは楽観的過ぎでしょうか。

 経済と政治は共生関係にあります。ハイテクのインフラ基盤と共同プロジェクトの推進を人々が支持したことは、間違いではありません。第二次インティファーダ勃発以前はきちんとした成果が出ており、それがこの議論の答えです。

---オスロ和平合意プロセスの最中、パレスチナ・イスラエル間でハイテクベンチャーが多く現れるだろうという将来像について語られましたね。過去3年間の暴動により、その将来像の実現はどのくらい遅れましたか。

 オスロ和平合意のプロセスが中断されたことで、和平の実現と域内経済の発展が遅れ、さらにはこの地域の経済と世界経済との統合が遅れたのは事実です。それでも私は、オスロ合意で決められたプロセスが予想より早く軌道に戻ると信じています。

 二面的な方法が必要です。交渉は存在しないかのようにテロと戦うこと、そして、テロは存在しないかのように政治的交渉を進めることです。農業、ハイテク、雇用、経済、情報通信、交通、そして観光の分野における協調を推し進め、拡大する必要があります。それができて初めて、政治の世界でも本当の変化が起こるからです。

---ハイテク産業はイスラエル経済における最大のサクセスストーリーのひとつでした。平和が失われたことで、ハイテク業界の未来にどの程度のリスクが生まれたのでしょうか。

 平和が失われたことによる影響は、イスラエルのハイテク分野だけに留まりません。イスラエル以外の地域も影響を受けています。しかし、ハイテク分野への影響の大半は、世界的なハイテク分野の危機によるものです。

---紛争による和平プロセスの崩壊以前、イスラエルが近隣諸国との政治的・経済的格差を乗り越える上で、ハイテク産業はどのような役割を果たすと見ていましたか。

 ハイテクというのは単なる技術ではありません。ハイテクは、例えば透明性や公正さ、正直さ、そして真理の探求といった価値観を象徴するものです。財政状態が非公開で調査ができないような国に投資する人はいないでしょう。政府が国民に対し残忍な扱いをし、また偽りの上に成り立っているような国で働きたい科学者はいないでしょう。科学に嘘はありません。

---数年前の講演で、「パレスチナもイスラエルと同じ位、ハイテク分野で進歩しなければならない。そしてイスラエルは、パレスチナのIT産業が発展すればするほど、より良い隣人を得ることになるという見解を持たねばならない」と話されましたね。しかし、いまだに、両者の間にはハイテク分野のノウハウに大きな差があります。政治的状況を考慮したうえで、この不均衡を解消するのにどの位の時間がかかると思われますか。

 私の考えは変わっていません。パレスチナ人の経済状態が改善することは、イスラエルにとっても良いことです。経済成長は平和をもたらします。地域内に海外投資が直接行われるのではなく、近代経済のインフラ基盤構築や、この地域に民間企業が支店を設立する際の援助金として使われるべきでしょう。それにより、適切な雇用機会と賃金がもたらされますから。

---Amr Moussa(現アラブ連盟代表)がエジプト外相だった時、彼はイスラエルが地域内の経済的超大国になろうとしていると、常にいらだっていました。こういった疑念が持たれる中、現実はどうなのでしょう。仮に和平が実現した場合、ハイテク業界においてイスラエルが果たすべき地域的役割とは何だと思われますか。

 2001年末に紛争が勃発するまでは、ハイテクのインフラ基盤に対し、広範囲に渡る多額の投資が行われていました。資金提供、工業団地の設立、技術供与、プロジェクトや教育プログラムに対する助成金などを、国内外の非政府系機関や民間企業が行っていたのです。ですから、既存のインフラ基盤を利用して、ハイテク産業の育成を早いスピードで進めることができます。

 イスラエルには、域内の超経済大国になろうという野望はありません。イスラエルが望んでいるのは、中東地域の繁栄と平和、そして中東地域の全ての住人が平和による具体的な利益を享受することです。イスラエルは、ハイテク分野でのノウハウを喜んで近隣諸国に提供し、また、ほかの分野においても協調関係を構築したいと考えています。

 今日、世界の様々な国が貿易ブロックを形成しています。中東でもこの手法を用いて、全ての人により良い未来を築くことができるはずです。イスラエルは中東で近代経済国家の四重奏を奏でたいと望んでいます。イラク、ヨルダン、パレスチナ、イスラエルによる四重奏です。このコンセプトには経済的合理性と地域的連続性があります。そのような地域ができれば、EUの準メンバーとして、また米国自由貿易圏の地位を与えられるべきでしょう。

---貴方は今とは違う時代に育たれたわけですが、コンピュータや電子手帳は普段使われますか。

 私自身コンピュータは使いませんが、事務所はコンピュータ化されています。孫たちやほかの人たちがコンピュータ技術を駆使するのを興味深く見ています。

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