愛知県から世界へ進出する家具メーカーの選択—ITでビジネスを自在に加減速

聞き手:江口ともみ、別井貴志 (編集部)2011年03月08日 10時00分

愛知株式会社は、その名の通り愛知県発祥の家具メーカーである。学校や公共施設などの椅子や机に強みを持ち、特に折りたたみ椅子やステンレスパイプ椅子などでその名を知られる。その愛知が長年にわたりリードしてきた学校市場だが、近年は景気の低迷の影響で大手オフィス家具メーカーが相次ぎ参入、環境は厳しさを増している。こうしたなか同社は、今後の柱として海外市場を重視し、家具の本場といわれる欧米のメーカーと互して戦おうとしている。その背景には、ITの力があった。

愛知県から日本全国へ、そしてこれからは世界へ

愛知 総務部経理課長
一江洋氏

江口 御社は70年以上の歴史と伝統を持つ企業と伺っています。その間にはさまざまなことがあったと思いますが、現在の国内の家具業界を取り巻く環境についてはどのように見ていらっしゃいますか。

一江 当社は創業以来、学校家具を中心に事業を展開しており、背と座にネットを使った椅子などいくつかのヒット商品を出してきました。しかしこのところの景気悪化の影響で、従来からオフィス家具を手掛けられてきた大手の家具メーカーが、我々の築いてきた学校家具市場に流れ込んできています。さらに学生の減少で学校市場自体も縮小傾向にあり、環境は厳しいですね。

江口 その厳しい環境を、どのように乗り切っていこうとしているのでしょうか?

一江 考えているのが海外市場への展開です。輸出をこれからの事業の柱にしようと、すでに動いているところです。しかし、もともと椅子や机は欧米から来たものですから、これを日本のメーカーが輸出するというのはとんでもない話なんですね。それは分かった上で輸出しようということで、今では少なからず実績を上げつつあります。

江口ともみ氏
タレント、東京都出身
装飾品協力:LANVIN COLLECTION(栄光時計)

江口 こうした家具は欧米文化が生み出したもので、確かにデザインなどは欧米が優れているかも知れません。しかし居住性や他の性能でも、日本の方が優れているといった部分はあるのではないですか?

一江 それが見た目は変わらなくても、海外の家具は強度基準が国内とはまったく違うのですね。国内の強度基準をクリアしていてもアメリカでは通らないのです。

江口 なるほど、体格の違いもあるのでしょうね。

一江 そうです。また材質でも、国内であればステンレスパイプでOKなところが、アメリカではステンレスはダメなんですね。そこでスチールパイプに代えて出荷しています。私どもの工場では海外の基準に合う試験機も用意して、試験を繰り返しています。

CNET Japan編集長の解説:愛知の海外進出
愛知は2010年10月、5年後に売上の20%を海外輸出とし、国内需要の浮き沈みにも対応できる経営体制を築く方針を固めた。そのため、同年10月にはケルン国際オフィス家具見本市「オルガテック2010」に出展、同時に海外向け新商品を発表するとともに、社内の営業本部内に海外営業課を新設している。

ERP導入の背景にあるのはデータの一元管理

江口 IT化の経緯は、どのような形でしたか?

一江 取り組みは早かったですね。先代の社長が非常に進んでいた方で、私が入社したころには紙テープのものですがすでにコンピュータが導入されていました。最初は、やはり経理部門ですね。請求書や出荷指示書の発行を迅速かつ正確に行おうというところから活用が始まりました。それともうひとつ、コンピュータを入れれば人も減るし紙も減るだろうという考えも当然あったと思います。

別井 経理部門から全社にIT化の範囲が広がっていくわけですね。

一江 そうです。実際に人も紙も減ってはいないのですが、ただ仕事の流れはどんどん速くなっていますので、生き残るためには何が必要なのかを考えるようになっていきました。そして営業支援でも使いたいというように活用の範囲が広がっていきました。現場から「在庫状況が見たい」とか「今日出荷できる商品を知りたい」といった要望が出てきまして、そのタイミングでミツイワさんと取引をさせていただくようになったのです。1990年のことです。

江口 その当時、ミツイワさんは愛知さんをどのようにご覧になっていました?

関  愛知さんは歴史もありながらITへの取り組みも早く、非常に先進的な会社だなというイメージがありました。ショールームを拝見しても、デザイン性に優れた次世代の家具を作られているということで、当初は正直いって、ご要望に十分応えられるかという不安もありました。

左から、ミツイワ ITサービス事業部 営業本部 名古屋営業部長 関雅彦氏
愛知 総務部経理課長 一江洋氏
江口ともみ氏、CNET Japan編集長 別井貴志

江口 そこで、統合パッケージ(ERP)を提案されたわけですか。

関  当時は現在のGlacio.NETの前身となった統合パッケージのGlacioでしたが、愛知さんの要望にきめ細かくお応えできるということでご提案させていただきました。

江口 そのGlacioの概要を教えていただけますか。

関 これは主に中堅・中小企業を対象とした国産ERPで、低価格であることやカスタマイズの要求にも柔軟に対応できるなどの特徴があります。従来、多くの企業では会計、給与、販売など個別にシステム化をされており、ハードウェアもバラバラで、孤立したマスターファイルが作られていたのが実状です。それを一元管理したい、さらにオープン化の流れに対応したいというご要望に応える製品としてGlacioを開発しました。さらに3年前からはそれをWeb上で展開したいということでマイクロソフトの.NETに対応したGlacio.NETを開発、提供を開始しています。

CNET Japan編集長の解説:Glacio.NETの特徴
Glacio.NETは中堅・中小企業を対象とした完全統合型の国産ERPパッケージ。各業務間で共通するマスタを完全に一元化し、シームレスな運営を実現する。ローコストで導入可能で、カスタマイズにもきめ細かく対応できる。

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