林信行
2007/07/17 11:00
伊藤:先日、ニューヨークタイムズ紙におもしろい記事がありました。オープンソースのプロジェクトが成功する理由として「プロジェクト立ち上げのリスクが低い」ことを挙げていました。
企業で何か1つプロジェクトを立ち上げようとした場合、それに併せて事業部を構成したり、意思決定の1つでも慎重に取り組む必要があったり、それなりのコストが発生します。
一方、オープンソースの世界では、いきなり大きなプロジェクトを立ち上げる例は少なく、最初は小さな規模から始まる場合がほとんどです。そのためプロジェクトを立ち上げる際のリスクが低く、投資するコストも非常に小さいという敷居の低さが注目されています。
たしかにSourceForgeを例に挙げてみても、オープンソースのプロジェクトは失敗の方が多いでしょう。
しかし、そうしたたくさんの失敗してきた小プロジェクトの中から、Linuxのような大プロジェクトにまで成長するすごいものが登場するのがオープンソースの凄さだと思います。
一方、企業においては、先行投資やプロジェクトが走り始めてからの費用対効果がシビアに求められる都合上、リスクが極力少なく、手堅いプロジェクトのみを遂行せざるを得ないでしょう。
このような明確な違いがオープンソースの強みとも言えますね。
伊藤:アメリカを中心とした海外でブログが誕生した頃、私もブログという新しいトレンドを広めようとしましたが、主にインターネット日記や掲示板を使っていた日本のインターネットユーザーにはなかなか浸透しなかった経緯があります。
確かに当時、ブログのシステムは日本のインターネット日記や掲示板よりもレベルではまだまだ低い点も多くありましたが、特にアメリカではブログの可能性にいち早く注目していた人がたくさんいた事もあり、各企業やウェブ標準化団体と話し合い、ウェブにおける標準化を進めていきました。
アメリカのTCP/IPは規格としてはシンプルで、当時は決して優れたものではなかったかもしれませんが、大勢のエンジニアがどんどん使って広めていくという勢いがありました。
一方、日本ではそうした動きがなかなか生まれませんでした。
その当時、日本ではオープンスタンダードのエバンジェリスムがまだまだ足りなかったのかも知れませんね。
とはいうものの、最近では新しい技術やビジネストレンドを読む先見性においては日本と海外の差は縮まりつつあるとは思います。
伊藤:冒頭でも触れましたが、一般ユーザー向けの製品を持っているMozillaでは多彩な顔ぶれがコミュニティーに参加しています。
通常、オープンソースイニシアチブなイベントを開催する場合、参加者の大部分がITエンジニアであったり、ある程度顔ぶれが決まっていますが、Mozillaの場合は純粋にインターネットが好きな一般ユーザーにも参加してもらえると期待しています。
もちろん、Mozilla 24ではエンジニアの方にも積極的に参加を促しています。
Rubyのまつもとゆきひろ氏のように、オープンテクノロジの世界では、日本人も大勢活躍している実績があります。日本のエンジニアと海外のエンジニアが交流を深め、互いに刺激し合う場になれば良いですね。
次回は引き続き伊藤穰一氏にご登場頂き、Mozilla 24での目玉イベント紹介、イベントへの参加形態、参加するメリットなどについて語って頂きます。掲載は7月第5週の掲載を予定しております