野々下裕子
2007/08/07 13:00
Firefoxの大きな個性の一つになっているのが、アドオンと呼ばれる拡張機能などのツールをユーザーが自由に開発できることだ。Firefoxでウェブページの保存と整理を手助けする拡張機能「ScrapBook」を開発したGomitaさんも、この個性に魅せられた一人である。しかし、ScrapBookの開発に取り組んだきっかけは「大学院の修士論文のため」というちょっと意外なものだった。
「大学院では、ITを使った教育ツールや、ユーザビリティ、ユーザーインターフェイスなどについて研究していて、その流れでScrapBookのアイデアを修論の研究テーマにすることになったんです。最初はIE向けに開発を進めていたんですがうまくいかなくて、その時に先輩からFirefoxのほうが簡単だと教えてもらって、実際にやってみたら本当に簡単にできてしまった。それからはFirefox一筋ですね」
完成したScrapBookを検証のために公開したところ、世界中でダウンロードされ、瞬く間に反響が拡がった。さらに、世界各国からローカライズの希望が次から次へとやってきて、現在は中国やロシアなど約20カ国語のローカライズ版が公開されているそうだ。
「ScrapBookを公開していちばん驚いたのは、Mozillaが公式に採用しているわけではない、いわゆる“野良アドオン”と呼ばれるものなのに、かなりの数がダウンロードされていること。自分のような「どこの誰かもわからない人間」が作ったものを、いろんな人が使ってくれるだけでなく、さらにいいものにしようとコメントしたり、実際に手を加えてくれるのにも驚きました。さらにローカライズを申し出てくれたり、それに協力する過程でもいろいろな改善案が出てきたり、自分のツールが勝手に育っていくという、オープンソースをまさしく肌で実感する貴重な体験ができました」
実はGomitaさんはScrapBookを開発するまでは、特にプログラミングには興味がなく、どちらかといえば、既存のアプリケーションなどをどう有効に使うかのほうに興味があったという。それまで「趣味でホームページをつくるぐらい」だったGomitaさんにとって、初めて作ったツールの反響の大きさは、大きな手応えにつながった。院を卒業して企業に就職した後も、ScrapBookのメンテナンスや新しい拡張機能の開発を続け、その結果、06年3月にMozillaが主催する「Extend Firefox コンテスト」では、世界中から投稿された200以上の拡張機能の中からScrapBookが「最も便利な拡張機能」賞に選ばれるという、輝かしい評価を得ている。
Gomitaさんは1年ほど前から自身のサイトを立ち上げ、ScrapBookの開発経緯などをブログ形式で紹介している。大学時代とちがい、就職してからは帰宅後にしか時間がとれない開発作業について、メモとして記録を残すのが目的で始めたものだ。その後、ScrapBookの開発は昨年ぐらいで一旦終了したため、内容はその他の拡張機能の開発に関するもの全般に拡がり、プログラムや実装などに関する具体的なノウハウが丁寧にまとめられている。一日の平均アクセス数は1000件程度というが、コメントも含めて内容はかなり実用的で、Firefoxの拡張機能を勉強したい人達にとっては、かっこうのガイドになっている。
「ウェブ上には次々と新しい技術が登場していますが、それがどんなものであるかを知るには、実際に拡張機能を作ってみるのが一番の勉強になると思っています。たとえば、最近"Tab Scope"という新しい拡張機能を公開しましたが、そもそもの開発目的はXBL(eXtensible Binding Language)を勉強するためなんです。といっても、機能を最大限に活かして全く新しい何かを作るというよりも、機能を実感できるようなもの、結果的にはシンプルで誰もが使って役立つものを作るよう意識しています」
たとえば、Gomitaさんは、2ちゃんねるのスレッドを管理する「Foxage2ch」という拡張機能も開発している。世界共通で使えるScrapBookとは真逆で、日本独特のネット環境にフィットしたツールというのがおもしろい。だが、そこにいつも共通しているのは「使って役立つもの」であることだ。
実際にツールを作ることで、役立つものが見えてくると考えるGomitaさんは、Firefoxの拡張機能開発者向けの勉強会などにも積極的に参加したり、雑誌に拡張機能に関する記事などを執筆したりしている。 「ブログなどを通じてオンラインでやりとりするのも十分刺激になりますし、記事を執筆したのもいい経験になりましたが、やはり実際に仲間に会って意見交換ができるのはおもしろいですね。先日参加したFirefox Developers Conferenceでも、ブログのコメントでやりとりのあった他の開発者達と意見を交わすことができ、とても刺激になりました。拡張機能に興味を持っている人はけっこういると思うので、それぞれの目的に合わせた内容の勉強会を定期的に開くなどして、多くの人達が取り組めるようになればいいと思っています」
6月に開催されたFirefox Developers Conferenceで拡張機能の中上級者向けのセッションで発表するGomitaさん。「勉強会はオンラインで交流のある人達と直接話ができるのが刺激になる」と、もじら組が中心になって開催している拡張機能の定期勉強会にも積極的に参加しているそうだ。
Gomitaさんの関連サイト