野々下裕子
2007/06/26 11:00
Mozillaコミュニティには学生の参加者も少なくない。中でも活躍が注目されているのが、Takenこと黒澤剛志さんだ。
黒澤さんがMozillaコミュニティを知ったのは中学生のとき。「中学の授業でインターネットを使った時に、HTMLやCSSなどに興味を持つようになったんです。ちょうどNetscape 7が登場して、これからウェブでいろいろなことができるんじゃないかと思い、教科書がわりにNetscapeの仕様を読んで勉強したりしているうちに、Mozillaコミュニティのことを知りました」
さらに、中学生の終り頃にはSVG(Scalable Vector Graphics)にも興味を持つようになり、高校から「Taken SPC」という、MozillaとSVGをテーマにしたブログを開設。さらに、Mozillaコミュニティにはオンラインはもちろん、勉強会やイベントにも積極的に参加している。
現在大学2年生の黒澤さん。「10代でコミュニティに参加するのは珍しいと言われることもありますが、今はそうでもないし、IRCには学生のチャンネルもありますよ」
ブログでSVGをテーマにしているだけあって、開発者向けに情報を提供するMDC(Mozilla Developer Center)ではMozilla SVG Updateの翻訳を手伝ったりしている。昨年からはもじら組のスタッフに加わるなど、コミュニティの運営もバックアップしている。先日、都内で行なわれたイベント(Firefox Developers Conference Summer 2007)では、MDCの運営内容について紹介。仲間の参加を呼びかけるなど、コミュニティでの存在感をますます高めている。
「Mozillaコミュニティのいいところは、人によっていろいろな参加の仕方ができること。オンラインで特定のコミュニティに参加するというのもあれば、オフ会や勉強会に行ったり、Spread Firefoxのようなイベントに参加するだけでもいい。目的はそれぞれで、オン・オフはあまり意識されていないように感じます。同じ興味を持つ人達が集まっているので、年齢や背景は関係なく交流できるんだと思います」
黒澤さんのTaken SPCブログでは、MozillaやSVG、Canvas、ユーザーインターフェイス関連の情報がとりあげられている。
「インターネットのサイトはブラウザの仕様によって見た目が変わるのに、普通のユーザーは情報が見られればいいぐらいに思って、あまり気にされていないところがあります。けれども、見た目もサイトの大事な構成要素の一つで、ドロップシャドウが表示できるかどうかでウェブデザインの効果も変わってくる。僕自身がそうした点が気になるので、見る環境に応じて最適な表示ができるSVGなどに興味を持つようになりました。具体的にブラウザに仕様を実装する方法を考えたりするのはおもしろいですし、勉強しているうちに関連する技術にも興味が拡がっています」
SVGなどに関する情報が少ないため、自らブログで情報発信しはじめたという黒澤さん。「ブログは同じ興味を持つ人達との接点にもなるし、間違った意見を書いても修正してもらえるのがいい」そうだ。ほかにも、ウェブの標準仕様を策定しているW3CのMLなどに参加し、自ら意見を投稿することもある。
「やりとりはすべて英語ですけど、今は翻訳ツールなどもあるので、それほど英語アレルギーはありません。発言するのは日本語でもなかなか気後れするものですから、英語でもハードルの高さは同じようなもの。間違った英語を書いてもサポートしてくれる人がいますし、むしろ勢いで記事を書けるところもあります」
日頃からコミュニティに参加して、流れに慣れてくると投稿もしやすくなるそうだ。
「一度、MLに投稿した文章がW3Cに採用されたことがあります。採用が目的で投稿したわけではなかったんでびっくりしましたが、自分の意見が認められるのは、やはりうれしいものですね」
専門分野での活躍が目立つ黒澤さんだが、興味を持っている範囲は広く、Mozilla以外にもLinuxなどのオープンソース系やCSSなどの勉強会やイベントにも、フットワークよく参加している。
「オンラインも楽しいですが、オフラインでは興味深い発言をしている人に直接意見を質問したり、その場にいるからこそ得られる情報もけっこうあるので、興味のある勉強会は時間があればなるべく参加するようにしています」
黒澤さんは「友だちと外に出かけて遊ぶタイプではない」と言いながらも、オンでもオフでも自然に交流の輪を拡げている。勉強会に参加する場合も、知り合いに誘われて参加することも少なくないようだ。
黒澤さんの交流力は、ウェブに新しい何かを生み出しそうな、そんな期待を感じさせてくれる。
正直、Taken SPCブログの内容は初心者向けではない。黒澤さん自身も、デザインに関連する仕様に興味がある開発者にとっても、SVGは世界でもまだマイナーな分野なので、サイトにアクセスするのはよほどの物好きと言う。とはいえ、ブログのトップページアクセスは1日当たり平均200あり、記事によってはさらに増えることもあるそうで、この方面に興味のある人達にとっては重要なブログのひとつになっていると言っていいだろう。専門的なテーマだけに質問やコメントは少ないが、海外の研究者からコンタクトがあることもあるそうだ。