野々下裕子
2007/06/20 14:00
Mozillaをテーマにした日本語ブログは、公式のものを含めて増えているが、中でも「えむもじら」は知る人ぞ知る老舗的存在だ。とりあげられている情報は、公式リリースを中心に、拡張機能や仕様に関するトピックが多いが、イベントのレポートや、一発ギャグ的なバグを集めたおちゃめなページもあったり、内容は幅広く、情報は技術系のサイトにありがちなハードルの高さを感じさせない。特に機能拡張などの解説はていねいで、一般ユーザーにも「ちょっとトライしてみようか」という気にさせてくれる。
江村秀之ことlevel氏が「えむもじら」をスタートしたのは、02年夏に登場したNetscape7.0を使い始めたのがきっかけだ。
「ブラウザというよりメーラーとして、Netscape7.0は使いものになりそうだと感じたんです。とはいえ、毎日使うツールとしてはまだ不満があった。NetscapeのベースとなるMozilaはオープンソースプロジェクトだというので、この機会に自分も関わって便利なものにしてみよう、という思いからMozillaコミュニティに参加したんです」
当初は開発もやってみたいと思っていたが、残念なことにMozillaの開発環境は慣れていたC言語はでなくC++だった。そこで開発はあっさりとあきらめ、『えむもじら』で情報発信を始めたのが02年11月だった。
デスクに向かう江村氏
レッサーパンダのペーパーモデルをはじめ、机の周りにもFirefoxグッズがちらほら。
情報収集は主に夜に2〜3時間かけて20以上のサイトをチェックする。最近注目しているのは「Mozilla Firefox Thunderbird の拡張あれこれ」やブラウザ全般に関する「Browser.js」など。
「当時はMozillaに関する日本語の情報はほとんどなくて、海外のニュースや掲示板からの翻訳情報が中心でした。特にえむもじらを始めた最初の2〜3年は義務感にかられて、半ばノルマ的に記事を書いていたこともありました。今では日本語の情報も増え、Mozilla Japanも立ち上がったので、自分の興味のある情報に絞り込んで、マイペースで投稿するようになってきました」
それでも、サイトの更新頻度はかなり高く、早い。それも5年近く続いているのだ。普段の情報収集とサイトの更新は、平日は就寝前の2〜3時間と、土日の空き時間、そしてたまに仕事の昼休みを使っている。通勤は片道約1時間だが、モバイルツールが苦手なので、ポッドキャストでのんびりラジオ番組を聞いているそうだ。
「最近は、Mozillaハックだけでなく、他社のブラウザやIT全般に関するニュースもチェックするようになってきました。それまでは、ツールとして便利にすることに興味があったけれど、今や誰もが当たり前にブラウザやメーラーを使うようになって、これからどう変化していくのか、このまま使われ続けるのか、といったことも含めて、興味の範囲が拡がってきているんです。えむもじらとしても、これからどんな情報を発信していくかはコントロールする必用があるとは思っています」
時々まちがえられるそうだが「えむもじら」は江村氏個人の情報サイトであって、コミュニティという位置付けではない。「あまり社交的なタイプではないので、コミュニティを運営するよりも、コミュニティを支えるタイプ」なのだそうだ。
代表ではないが、スタッフとして参加するコミュニティは多岐にわたる。日本のMozillaコミュニティを代表する「もじら組」や、バグ情報を扱う「Bugzilla」、翻訳系のプロジェクトを手伝ったり、FAQデータベース的な「MozillaZine 日本語版」のスタッフも続けている。オフ会もほとんど参加しないとは言いつつ、もじら組が主催するイベントの「Mozilla Party JP」に、転勤先の北海道から東京の会場へ駆けつけ、発表をしたこともある。
「オープンソース系のコミュニティは他にもたくさんありますが、なぜか関わり続けているのはMozillaだけ。生まれた時から成長を見てきましたが、今でもコミュニティよって新しい機能を与えられ、育てられていくことに魅力を感じ続けているからなんでしょうね」
一度はMozillaの開発に参加するのをあきらめた江村氏だが、実は今でも関わりたいという思いを持ち続けている。
「コミュニティへの関わり方は人それぞれで、自分のように情報発信で支援するのも一つだと思っています。けれども、仕事でシステムの設計に関わっているせいか、やはりどこかで開発までやってみたいという気持ちがある。特にMozillaの開発系コミュニティは海外を中心に、イケイケでおもしろいことをいっぱいやっていて、運営母体もマシンを提供するなどして活動を支援くれるなど体制もユニーク。時間があればきっと参加してました」
定年後になったら開発にチャレンジしたいという江村氏。それまでMozillaが興味のある活動を続けていいてほしいと願っている。
関連サイト
えむもじら
江村さん初共著・表紙/by Amazon
江村氏はFirefox関連著書の執筆や雑誌への寄稿などもしている。初めて執筆した共著「ブラウザ選択の時代を読み解く」(オライリージャパン)は「Don't Click On The Blue e!: Switching to Firefox」(右)を日本語訳したものだが、江村氏が担当した章は原著よりもていねいに各社のブラウザについて解説されている。