最終更新時刻:2010年12月18日(土) 8時00分

グリー田中社長が語る「優れたエンジニア」 最先端を走り続けるエンジニアの素質とは

“個人サービス”として始まったSNS「GREE」は、今では日本最大級のインターネットサービスのひとつだ。この大成功の裏にある“本質”とは何だろうか。本連載最終回である今回は、グリー株式会社代表取締役社長の田中良和氏に、サービスを成長させるWebエンジニアの素質とは何かを聞く。

代表取締役社長 田中良和氏

個人運営の「GREE」をやめなかったワケ

――田中社長は学生時代にインターネットの可能性に気づいた後、ソネットエンタテイメント(当時の社名はソニーコミュニケーションネットワーク)と楽天を経て、グリーの起業へといたるのですが、田中社長ご自身はどのようなエンジニアだったのでしょうか。

田中 大学は理系ではありませんでしたが、インターネットの普及によって世の中が変わるだろうとイメージしていました。技術を覚えたのは楽天で働いていた時のことです。手の空いているエンジニアがいなかったので、自分が作りたいと思っていたサービスを実現できなかったのですよ。それならば自分で技術を覚えて、自分で作ってしまおうと考えたのが、PHPなどを勉強し始めたきっかけでした。当時から「サービスを考え、そして作りたい」という想いが強かったのだと思います。

 楽天で働くかたわら、SNS「GREE」を趣味として始めました。しかしSNSを作るとなるとサーバのメンテナンスやネットワークの技術も必要になりますよね。そうした技術も独学で身につけていきました。SNSを運営するという目的が先行していて、そのために必要なスキルを学習していったわけです。

――その後、個人から会社での運営へと移行するのですが、設立した2004年の時点で、今ほどの規模になることを予想していましたか。

田中 一心に考えていたのはSNS「GREE」を続けていくためには会社組織にする必要があるということだけでした。当時はSNSがビジネスとして成功するかは分かりませんでした。もし儲からなかったら、別のサービスで利益を出しながら運営するしかないな、と考えていました。

 SNSにこだわったのは、ユーザーの存在があったからです。このサービスがユーザーの生活に変化と刺激を与えていることは把握していましたし、これが自分のやりたいことだとも自覚していました。そのため、資金がないとか、業務多忙といった理由でやめるのはもったいないですし、ユーザーに申し訳ないと感じたのです。

 ユーザーからメールで、「『GREE』のおかげで毎日が楽しくなりましたが、個人運営のサービスだと聞きました。もし運営者に万が一のことが起こった場合、『GREE』はどうなるのですか?」といった問い合わせもありました。この、“自分の作ったサービスを必要としている人がいる”というのは励みになりますね。ユーザーの期待に誠実に応えていく事が、個人サービスであっても、運営者に必要な責任感だと思います。

 つまり、エンジニアが、自分の仕事をどのように捉えるかが重要だと考えています。私は自分のやりたいことを実現しようとしてSNS「GREE」を立ち上げました。そしてサービスを維持するには会社組織にする方が良いだろうと判断して起業したというのが当社設立の背景ですね。

――収益化計画も重要ですが、それに先んじる想いが大切なのですね。

田中 やっぱり自分たちの仕事が、社会に対してどのような影響を及ぼすのかについて、自覚的でないといけません。「仕事があるからやっています」ではない。どのような仕事であっても、「誰かのために役立っている」ということを自ら意識することがエンジニアには求められると思います。

田中式、優秀エンジニアの集め方

――創業の際、現CTOである藤本氏に声をかけるなどして仲間を増やしていったわけですが、田中社長の“人材見極め術”は何でしょうか。

田中 根本的には、一緒に働きたい人と働くということですね。基本コンセプトでもある『インターネットで世の中をより良くする』に共感してくれることが必須条件です。サービスを持続可能なものにしていくことが大前提ですから。そのためにはラクなことはありません。厳しいことがあっても、困難を一緒に乗り越えていけることが仲間の条件だと想うのです。

 そうしたことは一言でいえば「人間性」かもしれません。この人間性をもっていると思える人に声をかけていったのが、グリーの仲間集めの第一歩でした。もちろん片思いではダメ。「この人と働きたい」と、私とエンジニアが互いに思えることが重要です。逆にいうと、私自身も優秀なエンジニアに求められる人間にならなくてはいけない、ということですね(笑)。

 当初からインターネット関連企業の財産はエンジニアだと考えていました。良いサービスを作っているからこそ、ユーザーが増える、価値が上がる、マーケティングに活かせるといったことが言えるのです。では良いサービスは誰が作っているのか。それはエンジニアです。すぐれたインターネットのサービスをユーザーに提供するには優れたエンジニアが必須なのです。

優れたエンジニアの3大条件

――「優れたエンジニア」かどうか、どのようにして見分けるのですか。  

田中 優れたエンジニアには、3つの素養があると思います。「技術力」「前向きな人間性」「コミュニケーション能力」です。

 まず「技術力」ですが、技術をきちんと身につけていなければ、そもそも良いものが作れません。そして「前向きな人間性」が乏しいと失敗で挫折したり、地道な作業を途中で投げ出したりしてしまいます。また、素晴らしいアイデアを持っていても、それを他人に伝えられなければ埋没します。そうならないためには「コミュニケーション能力」が必須です。この3つをバランスよく、そして高い次元で持っている人がインターネットサービスには必要です。

次ページでは田中氏が考えるグリーの将来像について聞く。»
グリーのエンジニア連載特集
【第2回】SNS「GREE」のリニューアルを成功させた3人のエンジニアに聞く!

グリー株式会社
メディア開発部 プロデューサー
荒木 英士氏
メディア開発部 エンジニア
山家 匠氏
メディア開発部 エンジニア
平山 宗介氏

【第3回】SNSの常識を変えたソーシャルアプリ『釣り★スタ』成功の真相

グリー株式会社
メディア開発部 プロデューサー
吉田 大成氏
メディア開発部
エンジニア/プロダクト責任者
岸田 崇志氏

【第4回】グリー田中社長が語る「優れたエンジニア」

グリー株式会社
代表取締役社長
田中 良和氏

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