生放送の活用でプロモ効果を増大--niconicoのアニメ戦略

 1月30日、デジタルハリウッド大学にて「アニメ・ビジネス・フォーラム+(プラス)2013」が開催された。そのなかで「niconicoのアニメ戦略」と題し、ドワンゴならびにニワンゴが運営する動画サービス「niconico」(ニコニコ)におけるアニメ展開をテーマにした講演が行われた。

ドワンゴコンテンツ 営業本部 コンテンツ営業部部長の小川文平氏
ドワンゴコンテンツ 営業本部 コンテンツ営業部部長の小川文平氏

 登壇したドワンゴコンテンツ 営業本部 コンテンツ営業部部長の小川文平氏は、ニコニコにおけるアニメ展開で心がけていることとして、テレビ放送から可能な限り早いタイミングで正式許諾を得た公式配信を実施できる環境を整え、アニメの製作委員会やその先で奮戦しているクリエイターなど、アニメビジネスに携わる関係者に直接収益を還元できるようにすることという。

 これは、ビデオグラムを中心としたアニメビジネスが停滞気味で厳しい状況にあり、そこにはさまざまな要因が考えられるものの、そのひとつに違法動画の存在があると指摘。「テレビ放送したものが30分後、字幕がついたものが1時間程度で上がってしまっているのが現状。見られない方にとっては便利かもしれないが、アニメビジネスに関わる方々に還元ができない」(小川氏)。そもそも違法動画はほかに見るものがない、あるいは見ることができないから見られているという実情から、可能な限り公式動画を早く配信することが違法動画の意味を無くし、アニメビジネスに還元していくことに繋がるとした。

水色の棒グラフが、新作アニメとされる推定数で、折れ線グラフがニコニコにおける新作アニメ配信数。2013年1月期は継続作品を除く18タイトルが配信
水色の棒グラフが、新作アニメとされる推定数で、折れ線グラフがニコニコにおける新作アニメ配信数。2013年1月期は継続作品を除く18タイトルが配信

 ここからはアニメ展開における生放送を活用した事例が語られた。まずはニコニコにおける新作アニメについて。ここ最近では20作品前後を配信し、それらの中には特番の製作などの施策により、放送開始前からテレビ連動の生放送まで一貫したプロモーション展開を行っているものもある。

 事例として挙げられた2013年1月期の新作アニメ「ビビッドレッド・オペレーション」では、2012年12月に放送開始前のプロモーション番組を実施し、認知度の向上とともに番組の視聴習慣を持ってもらうようにする。そしてアニメ本編の生放送(上映会)の終了直後にはキャストが出演する番組を配信。出演声優と番組を見た感想をコメントともに共有し、これにより翌週(次回)放送への意欲を高めていく。これらを通じて作品の番宣、ビデオグラムを中心とした関連商品の販促、作品の公式ページへの誘導、ニコニコチャンネルでのVOD(ビデオ・オン・デマンド)有料配信の促進を狙っている。

「ビビッドレッド・オペレーション」による事例
「ビビッドレッド・オペレーション」による事例

 ちなみに作品は、生放送だけではなくー定期間を無料で配信する場合もあるが、そもそも無料で配信しているものを購入するユーザーがいるのかという疑問が出てくる。それについては他の動画サイトとは違う特徴として、コメントが多くついているものほど売れるという。「ニコニコにおいて、コメント無しで見るという方はほとんどいないはず。作品とコメントが盛り上がっていて、コメントとともに見たいユーザーなので、作品のプロモーションとともに、無料配信段階でコメントを多くつけてもらいVOD販売につなげていく」(小川氏)。

キャプション
旧作アニメでの事例

 旧作アニメについても、おおよそ500作品以上をVODで配信している。これらも生放送をプロモーションと位置づけて販売促進を図っている。一例としてはアニメ製作会社のタツノコプロダクションの作品を、ニコニコ名作劇場という形で平日18時から毎日配信することにより、視聴者の意識付けを行い旧作アニメの販売促進をはかっている。

 また2012年の後半からは、タイトル導入のタイミングで前半の数話を生放送し、有料配信に誘導する施策も実施している。2012年8月に実施した「爆走兄弟 レッツ&ゴー!!」では全51話中第10話までを2回に分けて無料で生放送。「通常の動画サイトでいきなり売れることはないと思うが、ニコニコのユーザー層と作品が合致して、かなりの成果を上げることができた」(小川氏)とし、「レッツ&ゴー!!」シリーズの作品も同様に展開。懐かしい作品に触れて、続きを見たいという気持ちに訴求し有料配信に繋げていくとしている。

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