元麻布春男氏が選ぶ「感心した」ガジェット--お気に入りガジェットバトン第17回

“ガジェット”に期待したいもの

本家版(奥)とHP版 本家版(奥)とHP版

 筆者にとってガジェットとは、アイデアを愛でるものである。本来の言葉としては、便利な小道具、といった意味であり、アイデアうんぬんとは関係ないようにも思う。が、あまりに実用的なものより、製品に秘められたアイデアが優れていたり、気の利いた使い方が思い浮かぶ製品をガジェットとして評価したい、という気がしている。筆者がiPAQを3つも4つも5つも持っているのはここだけの秘密だが、これらはすべて実用の道具であって、ガジェットという感じではない。ガジェットには「おぉ」というアイデア、ちょっとしたギミックを期待したいのだ。

 そういう意味でガジェットして感心したのは、Newton PeripheralsのMoGo Mouse BTだ。マウスでありながら大きさはType IIサイズのPCカードで、使わない時はノートPCのPCカードスロットに格納しておくことができる。平べったいPCカードのままではマウスとして使いにくかろうが、底面のスタンドを立てることによりマウスとして違和感のない操作性が得られる。しかも、このスタンドが電源スイッチを兼ねていて、スタンドを立てることで初めて利用可能になる。

HP版のMoGo Mouse。スタンドを立てたところ HP版のMoGo Mouse。スタンドを立てたところ

 MoGo Mouse BTの電源は内蔵充電式で、よくこの大きさに収めたと思うが、痺れるのは、その充電をPCカードスロットから行えることだ。PCカードスロットを、収納場所として使うと同時に、充電場所としても利用する。電源スイッチ兼用のスタンドといい、この一石二鳥ぶりこそがアイデアだ。

 その名前からもわかるようにPCとのインターフェースはBluetooth。したがってBluetoothを内蔵したノートPCなら、USBポートにレシーバーを挿したりする必要もない。使わない時はPCカードスロットにスッポリと収まるし、使う時もレシーバーのような出っ張りは不要だ。このスマートさがまたいい。マウスは使いたいが、余計なものは持ちたくない、というのなら、これしかないではないか。PCカードスロットに入れておけば、家に忘れる心配もない。

使わない時はPCカードスロットに収めておける 使わない時はPCカードスロットに収めておける

 このMoGo Mouse BTを初めて見たのは2006年1月のCESだった。この時点ではまだ販売されておらず、2006年秋に米国を訪れた際に何とか入手したのだが、残念ながら米国で販売されているMogo Mouse BTには、わが国で無線機器を利用する際に必要な技適マークがなかった。そういうわけで、せっかくのMoGo Mouse BTも海外出張専用オプションとなり果てたのだが、2007年に入ってHPが自社ロゴ製品として取り扱いを開始、日本でも「Bluetooth PC Cardマウス(RJ316AA)」として購入することが可能になった。もちろん、HP版は日本を含むさまざまな国での認定を取得済みだ。

この世にこれしかないマウス

 ハッキリ言って、純粋にマウスとしてみた場合、ボタンの数、トラッキング精度(解像度)など、MoGo Mouse BTより優れた製品はいくらでもある。しかし、PCカードスロットにおさまり、PCカードスロットから充電できるマウスは、この世にMogo Mouse BTしかない。日本HPの直販価格である7140円は、間違いなくマウスとしては高額な部類に入るが、アイデア料と考えれば決して高くないと思っている。

 とても残念なのは、MoGo Mouse BTを利用するために不可欠なPCカードスロットが、ExpressCardスロットに置き換えられ、徐々に姿を消そうとしていることだ。これに呼応するかのように、Newton PeripheralsはExpressCard/54スロットに対応したMoGo Mouse X54も発表している。こちらは光学センサーの解像度が500dpiから800dpiに向上したほか、左ボタンと右ボタンの間に、タッチ式のスクロールパネルが用意されており、実用性は向上しているのだが、ExpressCard/54スロット自身が、あまり普及していないのがネックだ(どう考えても主流となるのはExpressCard/34スロットだろう)。スクロールパネルをロジクールのV500マウスが先に採用していなければ、これも心躍るアイデアと感じたに違いないが、二番目ではもうひとつ。このあたりがガジェッター心の難しいところなのである。

元麻布春男氏プロフィール

フリーランスライター。日本語が使えるようになる前からPC/AT互換機のユーザーだったが、国産機用のソフトが当時高くて買えなかったから、というのはここだけの秘密だ。


【使用製品】

・日本HP Bluetooth PC Cardマウス(RJ316AA)

・Newton Peripherals MoGo Mouse BT


【お気に入り度合い】

使う、使わないの問題ではないのです。このアイデアこそが命なのです。


【次回執筆者】

鈴木淳也さん


【次回の執筆者にひとこと】

米国、サンフランシスコ在住の鈴木さんと合うのは、年に数回、米国で開催されるカンファレンスの時。きっと米国には、日本では利用できない電波モノがあるに違いないと。

【バトンRoundUp】

START: 第1回:澤村 信氏(カナ入力派の必須アイテムとは?) → 第2回:朽木 海氏(ウォークマンとケータイをまとめてくれる救世主とは?) → 第3回:大和 哲氏(ケータイマニアのためのフルキーボードとは) 第4回:西川善司(トライゼット)氏(飛行機の友、安眠の友、ノイズキャンセリングヘッドフォン) → 第5回:平澤 寿康氏(出張に欠かせない超小型無線LANルータ) → 第6回:石井英男氏(いつでもどこでもインターネット接続が可能なPHS通信アダプタ) → 第7回:大島 篤氏(電卓とデジタル時計の秘密) → 第8回:荻窪 圭氏(自転車とGPSがあればどこにでもいけます) → 第9回:田中裕子(Yuko Tanaka)氏(これでクラシックもOK!究極のカナル型イヤフォン) → 第10回:佐橋慶信氏(ビジュアル・ブックマークの実践方法とは?) → 第11回:清水隆夫氏(プロ御用達の業務用GPSデジタルカメラ) → 第12回:高橋隆雄氏(傭兵たるものガジェットなど持たぬ!) → 第13回:野本響子氏(「壊れても買い続けたい」理想のロボット) → 第14回:本田雅一氏(本田雅一氏の求める条件にピッタリはまる「あのデジカメ」) → 第15回:塩田紳二氏(紙に書いて「デジタルデータ」になるアイテム) → 第16回:山田祥平氏(山田祥平氏が愛用する移動時間の必須アイテム)

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