アップル対サムスンの訴訟動向、新デバイスの可能性--松村太郎のApple一気読み

 4月14日~4月20日のAppleに関連するCNET Japanのニュースをまとめた「今週のApple一気読み」。

 アップル、WWDCチケット落選者に再度チャンスを提供か
アップル、WWDCチケット落選者に再度チャンスを提供か

 年次開発者会議WWDC14への参加を巡ってチケットの抽選が行われた。2014年はAppleだけでなくGoogleもこうした抽選方式を採っており、限られた枠の中で開発者に対して平等に機会を与えることを目指している。Appleが今回もライブ配信を行うかは明らかにされていないが、FacebookやGoogleの開発者イベントは、ライブ配信が行われる。既に世界中に開発者が存在し、サンフランシスコで行われるイベントの内容を彼らにも届ける必要があるからだ。

 それでは、先週のニュースを振り返っていこう。

Apple対Samsung、裁判の動向

 3月末より、米国ではAppleとSamsungの知的財産権を巡る裁判が再び始まっている。今回の裁判では、Appleが「Slide-to-Unlock」や「ユニバーサル検索」などiPhoneのソフトウェアにまつわる5件の特許を侵害されたとして21億9000万ドルの賠償を求めている。

 裁判が進む中で、これまで明かされてこなかったさまざまな情報や文書が公開されている。その中で興味深い文書が2つ、CNETの記事として配信されている。

 1つ目は、Samsungの内部のメールで、Steve Jobsが死去した2011年秋に「SamsungがiPhoneを攻撃する最高の機会」という内容がやりとりされていたことが明らかになった。このメールを書いたのは、当時Samsung Telecommunications America(STA)の全米販売部門を統括するMichael Pennington氏で、同氏は既にSamsungを退社している。

 このメールは、Jobs氏の死去が米国のニュースで大々的に取り上げられ、結果的にSamsungのGALAXY SシリーズのライバルであるiPhoneの優位性が大きく報じられていることに対し、Samsungとして何らかの対抗措置を講じる必要があると内部を説得するために発せられたと読み取れる。

 裁判の過程で、このメールが陪審員や米国民のSamsungに対する心証を悪くすることは間違いない。ただ冷静に考えてみると、特許を5件侵害しているという訴えの証拠としてはさほど大きな関連性を見出すことが難しいのも確かだ。法廷戦略として証拠を取り上げているように感じる。

 もう1つの事実は、GoogleがAndroidソフトウェアに対して、当初はタッチスクリーンをサポートしていたわけではなかったという点だ。2007年1月にAppleがiPhoneを発表してから、タッチスクリーンへの対応を行ったが、Androidスマートフォンの第1号としてリリースされたHTC Dream(T-Mobile G1)はマルチタッチにも対応していなかった。

 こちらの証拠もSamsungに直接関わるものではないが、GALAXY Sシリーズを含むAndroidがiPhoneの模倣によって発展してきたとの主張を補強するための証拠として活用しているとみている。

「Android」、タッチ対応は「iPhone」登場後に計画--グーグルの要件資料(4/15)
ジョブズ氏死去の報道に「iPhone攻撃の好機」--サムスン幹部の当時のメールが明らかに(4/17)

Appleがモバイルプロセッサの64ビットに寄与

 Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)の共同最高経営責任者(CEO)であるMark Liu氏は、Appleが2013年9月に発表したiPhoneに搭載した64ビットプロセッサA7によって、業界全体のプロセッサの64ビット化に貢献した、と決算発表の場で述べた。

 同社は2014年に入り、28nmプロセスより更に精密な20nmプロセスのシステムオンチップの生産を開始しており、需要も非常に高いという。Appleが2014年にリリースするスマートフォンやタブレットに搭載されるとみられる次世代プロセッサ(「A8」と呼ばれることもある)を生産するサプライヤーの1社になることが噂されており、積極的な投資とこれを背景とした世界最大手であるAppleからの受注を確実なものにしたい考えだ。

 モバイルプロセッサの高速化は、処理性能の向上のみが重要ではない。デバイスの特性であるバッテリ駆動について、いかに長い時間充電なしで使い続けられるかがポイントだ。AppleはSamsungとの法廷闘争もあり、サプライヤーのリストからSamsungを消す方向でここ数年取り組んできた。一方でSamsungの生産能力の高さから、プロセッサなどで脱Samsungを実行に移せない分野もあった。

 そうした意味で、TSMCにとっては非常に追い風となっているのは確かだが、PC市場の崩壊からモバイルデバイス関連の発注を取りたいマイクロプロセッサの巨人、Intelの存在もあるため安泰とは言えない。いずれにしても、誰がAppleから受注するのかという点は、プロセッサ分野のビジネスにとって重要事項だ。また、Appleがどんなプロセッサを求めるかがプロセッサの発展速度を決めるというのが現状のようだ。

モバイルプロセッサの64ビット化、アップルがけん引--TSMCのCEOが発言(4/18)

Nikeがウェアラブルデバイス撤退か

 ウェアラブル市場は2014年に最も注目されるテクノロジ分野の1つだ。その中で、Nikeは、「Fuelband」と呼ばれるBluetoothでスマートフォンと同期するタイプの運動や活動計測を行えるデバイスをリリースしている。しかし同社が2014年に、この分野から撤退するというニュースが流れている。

 Nikeはスポーツ器具やアパレル分野で最も重要なメーカーの1つだ。同社がテクノロジとの融合をスタートさせたきっかけは、2006年にニューヨークで発表したNike+iPodだった。iPodに装着するセンサと靴の中に埋め込むセンサが通信し、ランニングやウォーキングを計測できるというものだ。

 以来、NikeはAppleとともに、テクノロジとスポーツの分野で連携してきた。そのNikeがFuelbandを撤退するとなれば、2014年にも登場が予測されているAppleのウェアラブルデバイスへハードウェアの機能をバトンタッチするのではないか、つまりAppleがこうしたデバイスをリリースする可能性が高まったとの見方もできる。

 Nikeはすでに、インターネットやアプリを活用したスポーツを楽しむ人々のコミュニティを作ることに成功している。ウェアラブルデバイス以上に、同社のブランドへのロイヤリティを高めるのは、ソフトウェアとコミュニティであるという判断もあったのではないだろうか。

ナイキ「FuelBand」開発終了の可能性--今後のウェアラブル戦略とアップルとの関係(4/16)

その他

 その他のニュースを、短いまとめでお届けする。

「Amazon Fire TV」レビュー--「Apple TV」に対抗する99ドルのストリーミングデバイス(4/15)

 Apple TVとの対抗馬となるAmazonのセットトップボックス、Fire TVのレビュー。大きな違いはより広いコンテンツプロバイダへの対応、Amazon自身のストリーミングサービス、そしてゲーム対応だ。

オンラインのApple Storeが「母の日」仕様に(4/17)

 5月の母の日に向けて、Apple Storeが母の日の特集を行っている。iPad AirとiPad mini Retinaディスプレイモデルを一押しの商品とし、メッセージ刻印やアクセサリといったギフトに適していることをアピールしている。

アップル、次期「iOS」で楽曲認識を可能に--Bloomberg報道(4/18)

 Bloombergは、次期iOSで、Appleは楽曲認識機能を提供するため、同様のアプリを提供しているShazamと提携すると報じた。Siriから機能を呼び出せるようになるのではないかと推測できる。

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