テレビが変わる、映画を変える--HDR技術「ドルビービジョン」て何?

 ここ数年テレビや動画コンテンツの新技術として注目を集める「High Dynamic Range(HDR)」。映像に記録できる輝度のレンジを拡大し、より明るい高画質を得られるという高画質技術だが、コンテンツや対応テレビがそろっていないこともあり、次世代の技術と捉えられていた。しかし2016年春に登場したLGエレクトロニクス・ジャパンの有機ELテレビ「E6P/C6P/B6P」シリーズにより、状況は一変。HDR対応テレビが家庭で見られる環境が整った。


LGエレクトロニクス・ジャパンのドルビービジョン対応有機ELテレビ「OLED 65B6P」

 LGエレクトロニクス・ジャパンが採用するHDRは、映画、テレビなどの音響技術を数多く手掛けるドルビーラボラトリーズが開発した「ドルビービジョン」だ。「明るいだけではない」というドルビービジョンについて、ドルビージャパンが技術説明会を実施した。


ドルビージャパン事業開発部ディレクターの真野克己氏

 「明るいだけじゃない。ビビッドな明るさを残し、ディテールまで表現する。それがドルビービジョン」と、ドルビージャパン事業開発部ディレクターの真野克己氏は説明する。今まで映すことのできなかった難しいシーンもきれいに映せるようになることがHDRのポイントだ。

 例えば、洞窟の中から明るい外の世界を映した時、従来であれば、洞窟の内部は暗く潰れ、外界は明るさから白く飛んでしまっていた。しかしHDRであれば、洞窟内部のディテールまで再現できるほか、外の明るさも青空、海といった色とともに表現ができる。「今までは映像にするとインパクトがなくなってしまっていたが、HDRで映像はビビッドな明るさを残しつつ高画質化できる」とその特徴を話す。

  • SDRの画質

  • ドルビービジョンの画質

 加えて画面サイズ、解像度、視聴距離にかかわらずインパクトがある高画質が得られることもドルビービジョンならではのポイントだという。

 今までのテレビの画質を向上するために、解像度やフレームレートを上げることに取り組んできたが、ドルビーでは、解像度、フレームレートに加え、ハイコントラスト、色数の増加にも注力してきたという。真野氏は「このすべてに取り組まないと高画質化はできない」と言い切る。

 ドルビービジョンと今までの「Standard Dynamic Range(SDR)」の大きな違いは、暗部の階調表現と明部の色味。この表現力を得るためにドルビーでは「まず現実の世界を知る必要がある」(真野氏)と考え、蛍光灯は6000nits、太陽光が反射しているガラス窓は33万nits、廊下の壁は77nitsなど現実世界の明るさを数値化したという。


現実の世界の明るさを数値化。一輪の花でも、これだけ輝度が異なることがわかる

 また映像コンテンツを見たとき、視聴者が感じる「適切とは何か」を探るため、実際に視聴者に画面を見せることで、必要な輝度を判断。ドルビービジョンでは0.005~1万nitsが必要という数値を導き出した。


ドルビービジョンでは0.005~1万nitsが必要という数値を導き出した

 LGエレクトロニクス・ジャパンからの対応テレビ登場により、一気に再生環境が整ったドルビービジョン。LGでは有機ELに加え、液晶テレビもドルビービジョン対応を実現している。

 一方、コンテンツは動画配信サービス「Netflix」が日本での配信コンテンツにドルビービジョンによるHDR対応を打ち出しているほか、NTTぷららが運営する「ひかりTV」でも、2016年夏をめどにドルビービジョン対応のサービスを始めることを表明。「Amazonプライムビデオ」でも近い将来ドルビービジョンの導入を検討しているという。

 ドルビービジョンの視聴には、対応のコンテンツ、プレーヤー、テレビの3つが必要になる。ドルビーラボラトリーズでは、家庭用だけでなく、ドルビービジョンを映画館などの劇場に導入することも進めているという。

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