復刻するには“ワケ”がある--名品クリプシュ「X10」で聴くハイレゾ

名品「Image X10」が「X10」として再登場

 クリプシュは70年近くもの歴史を誇るスピーカブランドとして知られている。1946年に物理学者ポール W.クリプシュ博士によって、米国アーカンソー州に誕生。以来、米国では劇場用のスピーカとして圧倒的なシェアを誇っている。また、そこで培ったテクノロジやセンスを応用して、民生用スピーカのジャンルにも進出し、多くのユーザーを獲得した。さらに最近ではBluetoothに準拠したワイヤレススピーカも手がけており、コンパクトながら品位ある音質を獲得しているとして評価も高い。

 さて、そんな連綿と続くクリプシュの歴史にあって、ひときわ強い印象を残した製品があった。それがイヤフォンの「Image X10」だ。登場は2008年のこと。流線形で有機的なフォルムの内部にバランスドアーマチュア(BA)型ドライバを1基搭載したモデルだ。今ほどBA型ドライバがメジャーではなかった頃に、ドライバ自体のメリットをたっぷりと感じさせてくれた。それはつまり、ドライバ自体が小型のために、耳に収まりやすいサイズにできること、そして、ダイナミック型には難しいとされる繊細な音の表現ができることである。

 しかし、やがてImage X10は、iPhone対応のコントローラーが付いた「Image X10i」の登場と引き換えに販売終了に。販売期間は約3年だった。そんなImage X10がこのたび「X10」として復刻された。名品の再登場と言えよう。変更点はプラグ部のみ。Image X10がL字型だったのに対してX10でストレートタイプとなった。

  • 「X10」

  • 「Image X10」

  • プラグ部の形状が異なる。左から「X10」「Image X10」

X10でハイレゾを聴く

 このように構造や品番はシンプルになったが、無論、製品自体は「簡素」になったわけではない。数年前に体感した、あのサウンドが見事によみがえってくる。だが、一方で、音楽を取り巻く環境は大きく変容した。そう、ハイレゾファイルがImage X10が活躍した時代よりもぐっと身近になったからだ。では、復活したX10は、最新のハイレゾファイルをどのように聴かせてくれるだろうか。

 まず、ペンギン・カフェの最新アルバム「The Red Book」を聴く。ピアノ、バイオリン、チェロ、パーカッションなど、アコースティックな楽器たちが織りなす穏やかな音楽世界。それをX10はバランス良く聴かせてくれた。低域から高域まで破綻なく描き切る。また、各プレーヤーの演奏の強弱や抑揚も滑らかに表現している。バイオリンの高域は音の粒が細かいが、決して刺激的にはならないのも印象的だった。

 続いては日本のジャズバンド、SOIL &“PIMP”SESSIONSの「Brothers & Sisters」。自らの音楽ジャンルを「デス・ジャズ」と名付けるほどの、ハードでソリッドなサウンドが持ち味の6人組である。本アルバムではメンバー自身が音色にもこだわったというだけに、実にカラフルな音が詰め込まれている。たとえば、ディストーションのかかったサックスやエッジを強調したベースなど、である。

  • イヤパッドを外したところ

  • 「Oval Ear Tips」はシングルフランジとダブルフランジを付属する

立ち上がりの速さと力強さの両立

 X10ではそうしたサウンド自体の面白さは顕著に味わえるのだが、それよりも特徴的だったのは立ち上がりの速さと力強さが両立していることだ。BA型1基だが、どこかダイナミック型の良さを追加したような印象さえ受けてしまう。それは冒頭の「Love Immediately」から早々に感じることができた。

 ピアノとソプラノサックスが絡み合い、さらにドラムス、ベースが音楽に躍動感を与える。湿度の低さと粘り気が程よくブレンドされたような味わいだ。そんなサウンドが耳の奥に次々と飛び込んでくる。この勢いこそ彼らの音楽の真骨頂である。しかも、ほとんどの楽曲がほぼ一発録りという。そんなギミックなしの生々しさと、テンションの高さもしっかりと伝わってきた。これはケーブルの途中にコントローラーがないため、よりピュアな伝送が可能になったことに要因のひとつがあるのかもしれない。いずれにせよ、X10はハイレゾ時代でもその存在をしっかりとアピールしていくことだろう。

  • 「Oval Ear Tips」は全5種類を用意する

  • ケーブルの長さは1.3m

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