台風メッセンジャー - プライベートな情報網で何ができるか

 まず季節の話題、といっても平年よりも時期的に遅い気がするが、ここ最近毎週のように台風に見舞われている。SFC周辺でも大雨の影響が出ている。SFCは丘の上に建っているが、キャンパスの入り口やバスターミナルはその丘の下にある。地形的に水が集まってきてしまう場所に当たるのか、ちょっと強く降った雨でも短時間で道路に水が溜まり始めてしまう。

 昨日も台風23号が日本列島を進路にして通過していった。台風のようにだんだん迫ってくる自然現象については、多くの人がその情報をウェブサイトなどでウォッチしている。授業中にノートパソコンを開いている学生は、メモを取ったり、授業資料を見たり(多くの授業でPowerPoint形式で配布されている)、あるいは授業に耳を貸しつつメールを書いたりチャットをしたりしているが、その片隅にウェブブラウザで気象情報のサイトをチェックしている。時にはサークルのメーリングリストに台風の進路情報のURLを流してお互いに注意を呼びかけたり、メッセンジャーでレーダー画像のURLを送って「やばいね」などと言いながら情報を共有したり。そんなシチュエーションが今年は既に何回も見られた。

 SFCのオフィシャルサイトでも、台風に関する授業の扱いについてニュースとして更新されており、10月20日は「台風の接近で6時限(18時15分始まり)以降の授業が全て休講になった」という旨が知らされていた。担当の教員に対してはその旨がメールで周知されたそうだ。また学校内の構内放送でも、休講の情報や退去勧告が流されることもある。学校の事務室のオフィシャル情報が直接、学生1人1人に正確に伝わることが望ましいが、より早い情報の伝達にはメッセンジャーによる口コミを上手く味方につけるべきだ。口コミでも正確な情報が流れるようにするために、情報源はURLを用意してそのURLが参照されるように工夫すれば良い。

 とはいえオンライン上の口コミとなると、伝わるか伝わらないかは人間関係によるところが大きいし、友人たちのその日のスケジュールやオンライン状況にも左右されてしまう。学校が情報源となるURLを用意して伝わる情報の確実性を確保しても、情報経路の確実性までは確保しきれない。情報経路の確保について可能性があるのはRSSだ。2004年5月からSFCのトップページはRSSで更新情報を配信しているため、この台風による休講情報もRSSリーダーでキャッチすることができるようになっている。SFCの学生に対するRSSリーダーの普及率については調べてみる必要があるが、不確実性の高い口コミや、全学生へのメールを送るという負荷をかけずに、緊急の情報をキチンと伝える手段としては有効だろう。

 ところで例えば今自分が自宅にいるとする。自宅から学校周辺の雨の様子を調べようと思ったとき、気象情報サイトの雨雲レーダーを見れば、地図の上での雨の強さの分布は何となく分かるが、「1時間に何ミリの雨」と言われてもなかなか実感を持つことができないし、レーダーだと最も早くて10分前の画像になり、リアルタイム性にも欠ける。そんなときにメッセンジャーを起動してステイタス表示を眺めてみると、もう少し違った実感を得ることができる。

 レーダーが空から眺めた雨の様子だとすれば、メッセンジャーのステイタス表示は地面から見た雨の強さになる。人によって感想が違うかもしれないが、SFCにいる人のステイタスが「音が激しい」「窓にワイパーが必要」「傘が役立たない」「前の道路が冠水」などとなっていると、現地でどういう雨の降り方をしているかがわかりやすい。正確な気象観測とは違うが、話しかければより詳しい状況を質問することができるわけで、パブリックに出される気象情報と併せて使う、何気ない会話を通じたリアルタイム性の高い「プライベートな情報網」として、日常的に活用していると見ることができる。

 メッセンジャーと自然現象でもう1つ不思議な体験をしたことがあるので紹介しておく。台風はだんだん迫ってくる現象なので情報サイトなどで確認をすることができるが、地震は急にやってくる。地震が起きると同じ地方に住んでいてメッセンジャーにログインしている人たちは「地震だ」とステイタス表示を一斉に変える。次々に変わるステイタス表示を目の当たりにして、自分だけがクラクラしているわけではないと気付かされるのだが、地震が発生するときにメッセンジャーで会話をしていることもある。

 もしその相手が少し離れていて震源に僕の方が近い場合、僕のところで揺れ始めて「地震だ」と書き込むと、相手はすぐに「揺れてないよ」と返してきて、それから10数秒たってから相手も「地震だ」と言い始めるのだ。震源の場所、相手、僕の位置関係にもよるが、地震で揺れ始めるまでのタイムラグが意外とあることを体感することができる。そのときにチャットをしている必要があるが、チャットしている相手には地震発生を揺れる前に知らせることができる可能性もある。

 メッセンジャーでは「プライベートな情報網」として、お互いに場所をある程度明示した分散環境でのコミュニケーションの中から、距離感と相手の場所での状況の伝達を日常的に活用している。日頃活用している情報手段やケータイのようなモバイル環境でも、この「プライベートな情報網」が各自で構築・適用ができると、また1つネットメディアの新たなカテゴリが生まれるかもしれない。

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