サーチエンジン市場激変、専門家はこう見る - (page 2)

構成/文:野田幾子
編集:山岸広太郎(CNET Japan編集部)
2004年06月21日 10時00分

Googleの新広告商品戦略・アドバナーの注目度

--インターネットが普及する前、またはインターネット広告の単価が高かった時代の広告代理店という立場から見ると、アドワーズやアドセンスは単価が安すぎて、媒体的には苦しいとよく言いますよね。

高山: Googleの、1クリック最低価格7円は衝撃的な金額でした。当社はYahooのサーチワードバナー広告を中心に販売していたのですが、これは1ページビューが12円。その時代に、Googleが最初は最低クリック単価50円できて、その後7円へと下げたのが、かなり衝撃でした。

 サーチワードバナーを使うときは、ブランディングの位置づけやリスティングとの相乗効果などを考えないと。単純にROIだけで比較すると差が歴然としすぎるほど、それは破壊的なプライスなんです。アドセンスも、スマートプライス機能が開始すれば、ネットワーク型の広告の価格を完璧に破壊するものになっていくでしょうから、そういう意味ではGoogleのアドセンスネットワーク拡大、あるいはGoogleとオーバーチュアの競争自体が、ネット広告に多大なるインパクトを与えているのは事実だと思います。

--しかし大手の媒体にとって、どのサイトに広告を表示するかがわからないアドセンスを積極的に選択したいかというと、そうでもないのでは。

高山: 確かにブランド価値を意識するクライアントにとっては、なかなか出しにくいでしょう。今後大手クライアント向けに、表示されるサイトを限定して事前に明示するなどのオプションがでてくれば話は別ですが。

大内: インターネット広告も、ブランディングを追求するものと購買率を追求するものと二極化が進んでいくと考えています。

--検索エンジンサイトは何かを探しに来ている人が集う場所なので、そこに出ている広告は製品の購買へとつながることが多いのでしょうが、アドセンスを目にする人はコンテンツを読んでいることが多いので、購買へはつながりにくいのではないですか。

大内: 最近は、店舗に訪れる人の指名買いが多くなっているんだそうです。店で選ぶのではなく、誰かに勧められたから目的のものを買いに来る。それをネットワークで考えると、あるメディア、あるブログが勧めるから買うという行為は、実際に起こっている話だと思います。

--Googleはグローバルに見て、去年の売り上げの90パーセントが広告によるものだったと言います。現在、ネットワーク型バナー広告出稿機能を試験的に提供していますが、以前からのものとどう違うんでしょう。単価が安い?

ルート: Googleのアドバナー(イメージ広告)は市場にそう強いインパクトを与えることはないと思っています。理由のひとつとしては、ウェブマスターがそれを望んでいるわけではないということが挙げられます。これば別の、例えば広告代理店などの要求から作られていて、広告を魅力的にすればお金がもっと出るんじゃないかとか、ある程度画像があったほうがいいプロダクトもあるといった要素が多いです。ですから、さほど大きい市場にはならないのではないかと。

滝日: 英語圏の媒体では、コンテンツに入り込んでいる広告があるでしょう。ページの半分くらいがバナー広告になってているものです。アドセンスも掲載そのものはいろいろな大きさでできるし、なぜやらないんだという話もあったのかもしれない。個人的には情報系のサイトであれをやられると、うっとおしくて仕方ないんですが。

ルート: それはインタラプティブ・アドバタイジング(Interruptive Advertising)、邪魔する広告と言われます。広告代理店が、リッチメディアなどを提案するんです。利用者や効果の立場からは見ていない。どうやってインパクトがあるように見せるか、どうやって押し込むかが優先されているのでしょうね。

高山: 以前Overture Koreaで検索結果のリスティングの位置、横のボタン、バナーの中で、どれを一番クリックしたか/認知したかというアンケートをとったんですが、いわゆる認知・ブランド効果という意味でも検索結果の1番目と2番目が、高かったんですよね。

 だから、バナー的にやるよりもリスティングの上を狙うとか、Googleだったらアドワーズ広告で検索結果の最上部枠に出す(ロールアップ)方が、むしろブランディングという意味でも効果的なのではないでしょうか。

大内: SEOで集客がうまくいくと、その後ノーリファーラーと言って、そのサイトを指名する人も増えてきます。そこには相当、効果があることがわかってきています。ですから検索エンジンマーケティングとブランディングは連携していると考えられます。

滝日: 私たちSEOにしても、検索結果の上の方にあれば集客力がありますよということでサービスする場合が多いのですが、本当はもっと価値の高いものでは、と感じています。

SEOとは、顧客の発想を転換させること

--非常に基本的な質問なのですが、SEOについて教えてください。アクセスを稼ぐために、顧客のサイトを検索結果の上位に持って行くことと認識が一般的ですが、具体的にはどういうことをするのですか? また、SEOのコンサルティングとはどういうことなのでしょう。

ルート: まずは、SEOに対する考え方を説明します。従来の企業サイトは、トップページに来訪してもらってからそれぞれ目当てのところへジャンプするという、雑誌のようなデザイン、構造になっていました。しかし、SEO的なデザインは、トップページはあまり関係なく、強いて言えば「検索エンジンサイトの検索結果」がトップページというイメージ。だからコンテンツ半ばのページでも、目当てのものがすぐに見つかるようなところがサーチエンジンサイトの検索結果に載った方が効果的なのだ、という考え方を説明します。つまり、サイトのどこから入ってきてもいい。

大内: SEOのノウハウを教える、またはノウハウを駆使して人を呼び込むという要素は、コンサルティングのステージの中ではとても低くなっています。お客様に発想を転換してもらったり、サーチエンジンやマーケティングのコンセプトを知ってもらうことが重要です。そうするとあとは自然に、どういうサイトにしたらいいかを考えられるようになりますから。

滝日: SEOは特殊なものではありません。インターネットユーザーの検索エンジンの重要性を考えたら、ウェブサイトのデザイン・ユーザビリティと一緒に、サーチエンジンに対するオプティマイゼーションは考えるべき要素です。それにみんなが気づきだしたのが、最近なんですよね。だから、ほとんどのサイトは検索エンジンを意識した作りになっていない。

 そこに関するスペシャリティとして、僕らがクライアントや制作会社にアドバイスします。一から全部作り直すのは難しいので、既に存在するものの中で、いくばくかのテクニックを駆使して可能な範囲でのオプティマイゼーションを行う。本格的にSEOを導入するかどうかを検証できるレベルのオプティマイゼーションを、現在あるものの中でどれくらいできるか。そのへんを見極めバランスを見ながら、実際提案して導入していく、それが大きな仕事のひとつです。

 もちろん、検索結果が上部に表示されるようなテクニックを駆使するのも仕事ですが。あまり、これだけって限定できないんですよね。検索エンジンを使っている潜在的なユーザーをより多く、費用対効果よくサイトに取り込むための手法がSEOなのであって、そのためのアプローチは複数存在する、というところでしょうか。

大内: ルートは、「とにかくアクセスログを見なさい」と繰り返し言いますね。我々のSEOコンサルティングの特徴は、効果をきちんと検証すること。ビフォーとアフターをデータとして見られるところが、これまでのコンサルティングビジネスと大きく違うところかな。ログはつぶさにチェックし、その段階でお客様にログの重要度をわかってもらうようにします。

 結局は、インターネットというメディアが「キーワード」や「リンク」という、ニッチなトラフィックの集まりであるということを理解してもらうことが、発想の転換として非常に重要になってくるのです。インターネットは、非常に細分化されたモノの集合体。このメディアの中でどう価値を上げて行くかということが、ログからは非常によくわかるんです。

--では、SEMについてはいかがですか。一般に浸透しているのは、SEOにリスティング広告が入ってくるということでしょうか。

高山: そうですね。先ほども言いましたが、一般的にはやはりSEO+リスティング=SEMです。SEM=リスティングという区分けで呈示されることもありますが。検索エンジンからの集客を最大化する手法としてはいろいろあり、それを総称してSEMとして語られるケースが多いですね。会社や人によって言葉の定義が違うのが現状なので、認知を広げるためにも定義を統一する必要を感じています。

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